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禁術で呼んだ“理想の相手”は、人型魔獣の執着愛でした  作者: ChaCha


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“終わり”の定義

コンコン、と扉を叩く音がした瞬間。

私は反射的にルベルを押し戻した。


「る、ルベルっ……ちょっと、離れて……!」


驚くほど素直に後退してくれたけれど、

その瞳はまだ熱を残し、

首筋に残る“印”の疼きまで呼び覚ます。


(ダメっ……このままじゃ絶対見られる……!)


慌てて髪を直し、胸元を押さえ、

呼吸も整えないまま扉を開く。


「は、はいっ」


扉の向こうに立つノワールが――

一瞬、何か鋭いものを宿した瞳で私を見た。


ほんの刹那だったのに、

背中がひやりとする冷気が走る。


しかし、次の瞬間には

いつもの穏やかな微笑に戻っていた。


「エレノア。出発は明日の朝食の後で間に合いそうかな?」


「あ、う、うん。だ、大丈夫。えっと……」


首元を抑えながらしどろもどろになる私を見て、

ノワールの視線が――

明らかに、静かに、不自然に私の喉元を確認しようとする。


(み、見られる……!!)


私は慌てて手で覆い、無理やり笑った。


ノワールの眉が、かすかに寄る。


「……ふむ。では、先に休ませてもらうことにするよ」


優しく言いながら、

明らかに納得していない目をしていた。


「は、はい。おやすみなさい」


「おやすみ、エレノア」


最後に――

一度だけ私をじっと見つめる。


そして、

ゆるりと視線を横へ流し、


ルベルを、わずかに一瞥した。


見下すようでも、警戒のようでも、

諦めたようでもない。


――ただの確認。


そのくせ、

ため息をひとつ、静かに吐き出した。


そのままノワールは階下へと姿を消す。


ぽたり、と心に水跡のような不安が残る。


「…………」


扉を閉めた瞬間。


背中から、

大きく温かい腕が回った。


「ひゃっ……!? ル、ルベル……?」


ふわりと抱きしめられる。

息が詰まるほど近くて、

耳元にかかる呼吸が甘くて熱い。


「……まだ終わりとは、言われてない」


低く、喉の奥で鳴るような声。


(ま、まだ……って……!?

 さっきの……続きのこと!?)


「お、終わりです!! 今ので終わりです!!」


必死に否定したが、

ルベルは腕を緩めない。


むしろ、

身体を預けるようにエレノアへ重ねてきた。


「エレノアが“終わり”って言ったら……終わり?」


「言いました!!」


少しの沈黙。


そのあと、

ルベルの腕がそっと緩んだ。


けれど離れはしない。


「……なら……“次”は、いつ?」


「な、ないです!!」


「嘘」


ぴたりと囁き落ちた声は、

甘くて、ひどく確信に満ちていた。


「エレノアの魔力……さっき、また揺れてた。

 ……俺が触れたとき……もっと、揺れた」


「っ~~~!!」


耳まで真っ赤になる私に、

ルベルはようやく腕を離した。


けれど――

その瞳は満足げで、

それでも飢えているように深かった。

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