布団の中で
「……エレノア……?」
ルベルがそっと触れた指先の体温が、
あまりにも近くて、あまりにも優しくて。
胸が、限界を迎えた。
「~~~~っ!!」
エレノアは反射的に、
ばふっ! と勢いよく布団を頭からかぶった。
視界が真っ暗になった瞬間、
自分の心臓の音だけがやけに大きく響く。
(む、むり……! 朝から優しすぎる……っ
こんなの……耐えられない……!)
外ではルベルが小さく息を呑む気配がした。
「……エレノア?」
布団越しでも分かる。
彼が、すぐ目の前にいる。
息が触れそうなほど近い距離で――
まるで布団ごと抱きしめてしまいそうなほど。
エレノアは布団の中でぎゅぅっと胸元を握りしめながら、
震える声で、それでも言いたかった一言をこぼした。
「……ルベル。
……ありがとう……」
暗闇の中でも、
彼がふっと微笑んだ気配が伝わった。
次の瞬間――
布団の端に、そっと触れる温かい指。
ルベルは、許された距離の中で
遠慮のない甘さをにじませた声で囁いた。
「……エレノア。
そんなふうに隠れられると……もっと触れたくなる」
(ひっ……!)
布団の中でエレノアはさらに丸くなる。
外から微かな笑い声が落ちてきた。
普段は控えめだったはずの、
どこか蕩けるような柔らかい声音。
「……昨夜、“そばにいて”って言ってくれたのに。
今朝は隠れてしまうのか?」
布団越しでも、
彼の指先が自分の位置を確かめるように
なぞるのが分かる。
言葉遣いが……
いつもより少しだけ甘く、柔らかく、距離が近い。
(ルベル……そんな……
そんな言い方……っ)
息が詰まるほどくすぐったい空気の中、
エレノアは布団の中で小さく震え続けた。




