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禁術で呼んだ“理想の相手”は、人型魔獣の執着愛でした  作者: ChaCha


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朝の光に触れられる手

薄いカーテン越しに、

やわらかな朝日が差し込んでいた。


まぶたの裏がゆっくりと明るくなる。

意識が、ふわりと浮き上がっていく。


(……あれ……? 私……?)


ぼんやりした頭で、手に触れる温度に気づいた。


あたたかい。

とても、安心するような温度。


ゆっくり目を開けると――


「……ルベル……?」


寝台のすぐ傍に、

床に座り込んだ姿勢のままで寄りかかるように

こちらを見上げるルベルがいた。


真紅の瞳が朝の光を吸って、やわらかく揺れている。


その顔を見た瞬間、

胸がじん、と熱くなった。


ルベルは、ほっとしたように

深い息を静かに吐いた。


「エレノア……よかった。

 熱は……もうないな?」


甘く低い声が、

眠り明けの鼓膜に心地よく落ちてくる。


そのまま手を包み込む力がわずかに強くなる。


「身体の痛みは?

 喉が乾いているだろう……水を持ってくるよ」


「……ぁ……」


言葉がうまく出ない。


優しすぎて。

昨夜のことを思い出してしまって。


――着替えをしてくれた温かい手。

――“一緒にいて”と言ってしまった自分。

――離さずに握っていてくれた手。


(~~~~~~~っ)


布団を持ち上げて顔を隠したくなる。


そんなエレノアを見て、

ルベルは困ったように、でも嬉しそうに微笑む。


「昨夜、苦しそうだった。

 ……手を離せなかった」


その声がまた、胸の奥に落ちる。


(ずるい……そんな言い方……)


床の上で眠らず一晩中寄り添っていたルベルは、

脚が少ししびれているのか、指先がかすかに震えていた。


それでも――


「エレノアが呼んだから。

 ……離れられるわけがないだろう」


真紅の瞳が、朝の光に溶けるように縁を濡らした。


エレノアは胸がきゅっとなり、

毛布をぎゅっと握るしかできない。


こんな朝がくるなんて――

思ってもみなかった。


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