表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
禁術で呼んだ“理想の相手”は、人型魔獣の執着愛でした  作者: ChaCha


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

152/231

触れられた“熱”

ルベルの指先が離れて、

ほんの少し時間が経った。


けれど──

頬に残る熱は、まるで消える気配がなかった。


(……どうしよう)


胸が、こんなに苦しいのは初めてだ。


触れたのは一瞬。

ほんの指先が頬をなぞっただけ。


それだけで、呼吸が乱れるなんて。


「ふぅ……」


胸に手を当て、鼓動を落ち着かせようとするけど

全然うまくいかない。


ルベルはすぐ近くにいる。

なのに、触れようとしない。


……いや、触れられないのだ。


ルールを守ってくれている。

私の意思を尊重してくれている。


そのはずなのに……

さっきのルベルは、いつもと違った。


(……熱かった)


怖くはなかった。

むしろ……


(私……嬉しかったんだ)


人じゃない。

召喚獣。

本能がある。

危険なときは暴れることもある。


そんな存在に好かれて、

触れた瞬間に胸が跳ねた私のほうがおかしい。


……でも。


(……嬉しかった)


頬を撫でた手は震えていた。

抑えていた。

必死だった。


“壊したくない”って言葉が、

触れられた指先の中にあった気がする。


顔を上げると、

ルベルが少し離れた位置で座っていた。


視線は落としている。

深紅の瞳は熱を宿しているのに、

私の方へは向けようとしない。


(……限界なのに、我慢してる)


そう思うと胸の奥がぎゅっと締め付けられた。


「ルベル」


ゆっくり呼んだ。


ルベルがわずかに肩を震わせ、

こちらを見る。


その瞳が……

まるで火が灯ったみたいだった。


(あ……また、熱い)


さっき近づいたときと同じ。

でも今の方がもっと、深くて……

吸い込まれそう。


なのに、ルベルは動かない。


理由はわかる。


“触れていいか”と聞いたのは、

私の意思を確認したからで。


私が何も言わなければ、

彼は近寄ってこない。


(……触れてほしい、なんて言えない)


胸がきゅうっと苦しくなる。


はっきりわかった。


私はルベルに惹かれている。

怖さよりも、

彼の温度を求めてしまっている。


「……ルベル。さっきの……その……」


何か言おうとすると、言葉が喉で詰まった。


思い出しただけで顔が熱くなる。

心臓が跳ねる。


「……ありがとう」


それだけでも、精一杯だった。


ルベルは驚いたように目を見開き、

それから……

微かに、でも確かに嬉しそうに笑った。


その笑顔に、胸がまた苦しくなる。


(ああ……どうしよう)


触れられたのは、ほんの一瞬だったのに。


もう、戻れない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ