表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
禁術で呼んだ“理想の相手”は、人型魔獣の執着愛でした  作者: ChaCha


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

147/231

禁術の影と、崩れゆく確信

王都に戻って数週間。

ノワールは魔術研究室に籠もり、

机の上の“封印核”から目を離すことができずにいた。


淡い光を脈打つ核は、見れば見るほど異様だった。


「……これは、どう見ても……禁術。」


その言葉を口にした瞬間、胸の奥で何かが大きく揺れた。


魔術師協会に報告すれば、

禁術の魔術具を所持していた者──

エレノアが断罪される。


いや、断罪だけでは済まない。

研究に関与した疑いまでかけられれば、

投獄、研究資料の没収……

最悪の場合、その場で拘束される。


「……そんなはずが、ないだろう」


ノワールは額に手を当て、深く息を吐く。


レーヴェン師とシュヴァルツ師が禁術に手を出すなど、

ありえないと思っていた。

あの二人は、魔術師としての倫理を何よりも重んじていた。


けれど──


核を調べれば調べるほど、否が応でも理解させられる。


(これは……“造られた魂核”だ)


しかも未完成ではない。

精製度は高く、魔力の循環も完全。

魔術的な生命体を造るための核として

十分すぎるほどの完成度を持っていた。


「……何故だ、レーヴェン師……」


思考が渦を巻く。


そして──ある可能性に気づいてしまう。


(まさか……この核は、ルベルの……?)


そう考えると全てが繋がってしまう。


・人間離れした魔力

・生命体としての気配の異質さ

・エレノアへの過剰な執着反応

・そして、彼女のそばにいたときに感じた“危険な波形”


(……あれは、ただの使い魔の域ではない)


とっくにわかっていた。

ただ、目を逸らしていただけだ。


ノワールは机に手をつき、顔を伏せる。


(もし……ルベルが禁術で造られた召喚獣なら……

エレノアは……!)


だが、同時に別の疑問が浮かぶ。


「……なぜ“人型”なんだ?」


造られた核なら、姿を選べるはず。

レーヴェン師が召喚しようとしていたのは、

本来は巨大な魔獣──狼型の守護獣のはずだ。


人型になる必然性は、どこにもない。


「……陣が、自動補完を……? そんな……」


事故なのか、意図なのか──

そこはどうしても推測の域を出ない。


ノワールは椅子に深く座り直し、核をじっと見つめた。


そしてゆっくりと、ひとつの結論へ辿り着く。


(……エレノアに罪を被せるつもりはない。

だが、ルベルをこのまま放置するのは危険だ)


エレノアは純粋すぎる。

“何か”が起これば、真っ先に巻き込まれる。


ならば──


「……封印し直すしかない」


ルベルを。


そして、エレノアを守るために。


ノワールは机の奥から古い箱を引き出した。

そこには、封印用の魔陣具の素材が揃っている。


(協会に報告すればエレノアは潰される。

ならば……俺が、彼女を守らないと)


静かに、しかし確実に。

ノワールの中でひとつの決意が固まっていく。


エレノアを救うための封印。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ