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禁術で呼んだ“理想の相手”は、人型魔獣の執着愛でした  作者: ChaCha


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静かな日々の形

穏やかな湖でルベルとピクニックしてから、

数日が経った。


あれ以来、家の空気は少し柔らかい。

あの時のルベルの暴走しかけた甘さも、

今は落ち着き、代わりに――

“学ぼうとする姿勢”が目立つようになった。


今日の工房には、

くるくると混ざり合う薬液の香りが満ちている。


エレノア「ルベル……そう、そうです! すごいですよ!」


ルベルは真剣な表情で釜を覗き込み、

長い匙でぐーるぐーるとゆっくり均一に攪拌している。


ルベル「次は妖精草……」


エレノア「はい! その半量です! 多いと泡立ちますから!」


ぱらり、と妖精草を振り入れると

液体がふわりと淡く光を帯びる。


エレノア「では……次は仕上げの……」


ルベル「精霊の粉」


エレノア「そうです!」


顔を上げたルベルの真紅の瞳が、

少しだけ誇らしげに細められた。


(本当に……すごい吸収力……

 私より、ずっと要領がいい……)


数ヶ月前の、

何も知らなくて、不器用で、

言葉にできない感情ばかり抱えていたルベルが、

今では――


エレノアが口にする前に理解して動く。


決して派手ではないけれど、

こんな日々が一番心を穏やかにしてくれる。


薬が静かに完成の色へと落ち着き、

ふたりで慎重に小瓶へ移していく。


コト、と並べられる瓶たち。


納品用にしては、

どれも出来が良すぎるくらいだ。


エレノアはほっと息をつく。


エレノア「……終わりましたね。ふぅ……」


背伸びをひとつ。

肩の力がすとんと抜けて、思わず小さく笑う。


ルベルは、片付けが完璧に終わったのを確認してから

「ちょっと待ってて」と静かにキッチンへ。


すぐにカップの触れるかすかな音が聞こえはじめた。


湯を沸かす気配。

茶葉の柔らかな香り。


(……ハーブティーを入れてくれてるんだ)



エレノアは目を閉じて、

工房に満ちる温かい香りを吸い込む。


とても穏やかで、

とても優しい日々。


こんな時間が

ずっと続けばいいのに――

ふと、そんなことを思ってしまった。



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