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禁術で呼んだ“理想の相手”は、人型魔獣の執着愛でした  作者: ChaCha


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ただの片付けなだけなのに

食事を終え、

私は深呼吸をひとつして立ち上がった。


(……片付けしよう。

 片付けは平和なはず……うん、大丈夫……)


そう思ったのに――


「エレノア、皿は俺がやる」

「いや、俺も手伝おう」


……なぜ二人とも同時に?


私「え、えっと……じゃあ三人で……」


「「いいや、二人でいい」」


息ぴったり。


いや、息ぴったりなのに空気は最悪。


(なんで意見が一致したの……?)


私を中心に、

左にルベル、右にノワール。


二人が並ぶと……なんだろう、

料理番組ではなく決闘シーンにしか見えない。


皿洗いはルベル。

拭き上げはノワール。


役割が自然に決まったように見えるが、

実際は無言の攻防戦だった。


ルベルは静かに皿を洗いながら、

しれっとノワールに無言プレッシャー。


ノワールは涼しい顔で受け流しながら、

ルベルの動きを冷静に観察。


私はというと――

なぜかスポンジを持ったまま棒立ち。


(こわいこわいこわい……

 なんでこの人たち、片付けで戦ってるの……?)


水滴が落ちる音だけがやけに響く。


ノワールが皿を拭くたびに、

ルベルの指先の動きが微妙に早くなり。


ルベルが新しい皿を渡すたび、

ノワールの笑みが少しだけ深くなる。


喧嘩してないのに、喧嘩してるみたい。


私(どうしよう……

 誰か助けて……)


けれど助けは来ない。


なぜなら――

ここにいる三人のうち一人は、

誰より私を守ろうとして暴走ぎみの召喚獣(※ルベル)。

もう一人は、

私に優しいけど危険なほど勘の鋭い魔術師。


そして残る一人は、

対人スキルが低い私。

逃げられない。


「ああ、エレノア。そこの布巾もらえるかな」

「あ、は、はいっ……!」


布巾を渡したとき、

ノワールが優しく笑う。


「今日は手伝わせて。

 久しぶりに、こうやって君と一緒に過ごせて……嬉しい」


……ほわっと胸が熱くなる。


その瞬間。


ルベルが皿を落としそうになった。


ガチャン。


「る、ルベル!?」

「……平気」


顔が完全に不機嫌……いや泣きそう……?

いや怒ってる……?

いや全部……?


ノワールはその様子をちらっと見て、

なぜか目を細めて微笑んだ。


(なにその“余裕”みたいな笑顔……!!)


こわいってば。



片付けはなんとか終わったけれど、

空気は終わっていない。


ノワール「……エレノア」

ルベル「……エレノア」


また言った。


私は思わず背筋を伸ばす。


(え、なに?

 どっち向けばいいの??)


こうして、

食後とは思えない緊張と気まずさの中、

夜がゆっくり更けていくのだった。


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