表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
禁術で呼んだ“理想の相手”は、人型魔獣の執着愛でした  作者: ChaCha


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

114/231

夕暮れの気まずい三角形

「そ、そろそろ……夕飯、作ろうかな」


エレノアが声を上げると、

ぴりついていた空気が一瞬でゆるんだ。


すぐに二人の声が重なる。


「手伝うよ」

「俺が作る!」


その温度差があまりにも極端で、

エレノアが「えっ」と固まった。


ノワールは落ち着いた笑みを浮かべている。

「この家に泊まるんだ。遠慮する理由はないだろう?」


ルベルはやたら必死だ。

「エレノアは座ってて。俺がぜんぶやる!」


ただ、その“やる気”の正体は……

どう見てもノワールに対する対抗心のせい。


エレノアは苦笑しながら両手を振る。


「ちょ、ちょっと待って、二人とも……

 あ、あの、私が――」


「エレノアは疲れただろう?」


「エレノアは休んでて」


ふたりの声音は違うのに、

結論はまったく同じ。


結果。


エレノアはリビングへ押し出されるように案内され、

ノワールも自然な流れで隣に座ることになった。


ルベルはキッチンの向こうで、

包丁を握ったまま、

何度もちらちらとリビングを見やっている。


(……見てる)


エレノアは視線を逸らしながら、

少し落ち着かない気持ちでノワールを見た。


「ノ、ノワール……ごめんね。こんな……」


「いや。」

ノワールは穏やかに微笑む。

「エレノアと少し話せるのは、むしろ嬉しいよ」


その言い方が優しすぎて、

エレノアの心臓が変な跳ね方をする。


キッチンの包丁の音が、

カンッ!

と不自然に強く響いた。


(……ルベル)


ノワールは小声で囁く。

「あれは……わかりやすいな」


エレノアは顔を覆った。

「うぅ……お願いだから気にしないで……」


「気にしてないよ」

ノワールの低い笑い声は、変わらず穏やかだ。


キッチンのルベルは――

嫉妬と焦りと、好きの気配だけで料理をしている。


そんな、奇妙で優しい夕暮れが、

静かに流れていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ