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禁術で呼んだ“理想の相手”は、人型魔獣の執着愛でした  作者: ChaCha


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懐かしい面影と、黒い影の警告

ノワール視点

この家に足を踏み入れた瞬間――

胸の奥に懐かしい温度がひろがった。


(エレノア……

小さかった頃のままの雰囲気を残してるな)


昔、師匠に連れられて

数日だけ一緒に過ごしたことがあった。


あの頃と同じ――

くるくる表情が変わって、

すぐ挙動不審になって、

でも一生懸命なところ。


(……懐かしいな……

守ってやりたくなる性質は、昔から変わらない)


だが。


視線を横へ向けた瞬間、

背筋にひやりとした感覚が走った。


エレノアの隣に立つ――

あの青年。


無表情で、

背筋が伸びていて、

あまりにも“静か”すぎる気配。


(……底が見えない)


魔術師ではない。

その気配でもない。


だが、

普通の人間ではない。

そう思わせる“何か”がある。


そして――

彼の瞳を見た瞬間。


ゾクッ。


まるで深い森の奥から

自分だけを見据えてくるような

研ぎ澄まされた光が走った。


(いやだな……あの目……

攻撃的ではないが……

こちらを測っている)


エレノアのそばに置くには

あまりにも正体が掴めない。


「エレノアに……用件は?」


低い声が落ちたとき、

ノワールは直感した。


(……こいつ、俺の“距離”を測っている)


だが恋敵としての警戒でもなければ、

嫉妬でもない。


ただ――

“主を守るために無駄を排除する者”

そんな印象。


まさかエレノアの家に

こんな“危険の匂い”を放つ存在がいるとは思わなかった。


(……エレノアは気づいていないな)


そのことが、

わずかに胸をざわつかせる。


エレノアは純粋で、

騙されやすいところがある。


守ってやりたい。

レーヴェン師もそう言っていた。


(しばらく様子を見たほうがいいか……

場合によってはエレノアを連れ戻したほうが……)


そんな考えが浮かんだところで――


エレノアが手をばたばたさせながら言った。


「そ、そうだノワール……!

あの……うち、魔術具の整理をしてて……

古いの、けっこうあるかもしれなくて……!」


ノワールは少し笑った。


「そういう用事もあって来たんだ。

エレノアが使わない魔術具なら、買い取るよ。

レーヴェン師の遺したものも多いだろうしね」


途端にエレノアの顔が明るくなる。


(ああ……

この表情も昔と変わらない)


それを見て

胸がほんのり温かくなった。


だが――


すぐ隣のルベルの魔力が

低く、鋭く、わずかに震えた。


(……この男……

エレノアの笑顔に反応したな)


まるで獣が

自分の縄張りを静かに主張するような揺れ。


ノワールは微笑んだまま、

心の奥でひっそりとつぶやく。


(……この家、やはり気が抜けないな)



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