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今さらだけど異世界満喫! 〜気づけばアラサー冒険者ですが、ゲーム知識で強くてニューゲーム〜  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)


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激突


 強制依頼が出ることになり、ギルドはにわかに騒然となっていた。

 戦うための準備をしっかりと整えてきた俺は、ずらっと並んでいる冒険者達の最後尾に並び、しっかりと依頼を受注する。


 強制依頼とはいっても、こいつはあくまで依頼の形を取っている。

 なので自発的に受けに来たということを示すために、きっちり受注をしなくちゃいけないのだ。まぁ多分、事務方の都合上の問題なんだろう。


 ギルドに集まった冒険者達は、一階にある大広間に集められた。

 厳つい顔をしているギルドマスターのブーラのおっさんが腕を組みながら皆の顔を見渡す。


「というわけで、ゴブリン狩りだ野郎共。このルテキの街を守るために、気合い入れやがれ!」


「「「おおおおおおおっっ!!」」」


 大仰な身振り手振りと大きな声で冒険者達は焚きつけられ、どんどんと興奮し始める。

 このあたりの人心掌握術は、流石ギルドマスターをやっているだけのことはある。


「そして――」


 ブーラのおっさんがすっと身体を引くと、そこにはいつの間にか彼の後ろに立っていたフェイトの姿があった。

 彼女が胸を張りながら、大きく息を吸う。


「今回のゴブリンキング討伐は、この僕――フェイトが指揮を執る! だから安心してほしい! 命を賭けて挑んでくれるのなら、それ以上の報酬と名誉を返すと約束しよう!」


 フェイトの、鼓膜が破れるんじゃないかというほどの大声に、冒険者達のテンションが上がっていく。


「うおおおおおおっっ!!」


「あれが『不倒』のフェイトか……」


「フェイトちゃんかわかっこいい!」


 どうやらフェイトの人気は高いらしい。

 顔はかなり整っているし、強さ=正義な冒険者界隈で女だてらにBランクまで上がったということもあり、アイドルのような扱いを受けているようだ。


 こうして俺達は北にあるゴブリンの集落目指して、進軍を開始するのだった――。






 もちろんギルドで決起集会のようなことをする前に、事前にこのルテキの街にいるランクの高い冒険者達は事前に作戦を整えている。

 フェイトを中心にして考えられたその作戦は非常にシンプル。


 俺達木っ端冒険者達がゴブリン達を殺す。

 そしてその間にフェイトがゴブリンキングを倒す。


 突き詰めればこんな感じの、三歳児でもわかる作戦内容だ。


 識字率が一般人より輪をかけて低い冒険者界隈は、腕っ節ばかり強くて、考える頭が足りてないやつがかなり多いからな。


 なのでこういった強制依頼では通常、命令は極限までシンプルにして馬鹿でもわかるようになっている。


 それに冒険者側からしても言われることが少ない方がありがたいのだ。


 彼らとしても下手に上から指示を出されるより、一体でも多くゴブリンを殺してこいと言われて自由にやらせてもらった方が本来の実力を発揮できるからな。


 パーティーごとに戦うことに慣れている冒険者というのは、軍隊のようにまとまって戦闘することにあまり慣れていないというのもあるし。


 俺を含めた複数人のCランク冒険者は、ゴブリンキングの側近達と思われるゴブリンソルジャーやゴブリンシャーマンなどの討伐を行う。


 そして可能な限りフェイトの体力を温存させた状態で、ゴブリンキングのところまで連れて行くのが仕事だ。


 あ、ちなみに今回の強制依頼にはまだ幼いスカイは連れていない。

 あいつはリーゼロッテ様たっての希望で、子爵家に預かってもらうことになっている。

 どうやらスカイが気に入られているようで何よりだ。

 彼にはパトロン様のご機嫌をしっかりと取っておいてほしいところだ。





 ゴブリンのいる集落は、ルテキを北に三日ほどいったところにある廃村にある。

 ルテキと関わりがあったというこの村は、先日ゴブリン達の襲撃を受け壊滅してしまった。


 現在はここが、ゴブリン達の根城になっているようだ。


 街から三日ほどの位置にゴブリン達が集まっているとなれば、ギルドが強制依頼を出すのも納得である。


「いやぁ、先生と依頼を受けるのは久しぶりだなぁ、心が躍るよ!」


「今はお前がリーダーなんだから、先生はやめろって」


「でも呼び方は今更変えられないもんっ!」


 もんっ、じゃない。

 かわいく言ったところで、俺は誤魔化されないぞ。


 北へ歩くこと一日半。

 そろそろ二日目の夜営に入る頃だ。


 ぼちぼち、ゴブリン達との遭遇が目立つようになってきた。

 とりあえず遭遇したゴブリン達は全て排除しているから、向こうもこちら側に何かがいることは理解しているはずだ。


 もし俺達が討伐に失敗した場合、ゴブリンの群れはルテキの街に流れ込むことになる。

 そんなことにならないよう、万全を尽くさなくちゃな。





 次の日、村の手前までやってきた俺達は、準備万端で村の外で布陣しているゴブリンの軍勢と向かい合うことになる。


「おいおい、これは……」


 視界いっぱいに広がる緑の波……これ、百や二百じゃ利かないくらいの数がいるぞ。


 ゴブリンソルジャーだけじゃなくて、ゴブリンリーダーやゴブリンファイターなんかもいる。集落の規模が想定していたよりはるかに大きい。

 俺達だけでなんとかできるのか……?


「――よし、行くよ皆! 総員……突撃ッ!」


 こうして俺達冒険者とゴブリン達は、激突するのだった――。

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