新たな機動鎧
今後のことを考えると、アキツシマ内での工作は必須と言える。
タケルを絶対に王位につけようとまでは考えていないが、とりあえず今後も定期的にアキツシマに来るためにはこちらの力を見せつけることと、その力が有効であることを示す必要があるからだ。
現在アキツシマは、大名達によって実質的な分裂状態にある。
かなりの情報を持っているトッドではあるが、現在どこでどのようなフラグが立ち、どのように戦況が動いているかまではわからない。
とりあえず現在はこちらに取り入ろうとする文官や大名達をあしらいながら、情報収集をしている最中だ。
取り込めそうな勢力があれば取り込んでしまえばいいし、場合によっては機動鎧を一機二機貸し与えて場を乱してもらうのもいい。
といってもアキツシマはそこまで狭い国というわけでもない。
全国の情報を集めようとするのなら、ある程度の時間がかかる。
その間、トッドは基本的に暇になる。
なのでこの空いた時間を使って、トッドは以前からハルトと話をしていたとある機動鎧の開発を進めていくことにした――。
ヤマタノオロチの基本的な素材は、当然ながら本国に戻って万全の用意が調った状態で行うつもりだ。現在はトッドの魔法を使って保存している状態である。
そちらを使うわけにはいかないが、アキツシマに来てからトッド達が屠ってきた魔物達の素材は、ほとんど全て手つかずの状態で残っている。
アキツシマの陸棲の魔物はリィンスガヤのものと比べると大した差はないが、水棲の魔物に関しては明らかに強く、それ故に優良な素材が手に入る。
トッドとハルトはそれらを使って作ろうとしているのは――いざという時に水中でも活躍ができる、水陸両用の機動鎧である。
「ふむ、できたけど……見た目的には、少し今までの機動鎧とは毛色が違うね」
「防水性と水中稼働可能な重量を考えると、どうしても見た目が魔物寄りになっちゃうんですよねぇ……」
「ちょっと、キモカワイイ感じになりましたね」
「これ、かわいいかなぁ……?」
トッドとハルトとレンゲ、以前初めて機動鎧を作り上げた時の懐かしの初期メンで作り上げた機体を見つめる三人。
その先にあるのは、トッド達が乗り込む機動鎧より一回りほど小さい、ずんぐりむっくりとした機体だった。
「未曾有ナマコの強皮膜に、マーマンリーダーの革、その上からシーサーペントの鱗を使って強化を施しており、一番魔力伝導が重要なコックピット付近にはアクアパイソンの心筋を使っています」
その体表は青紫色をしている。その舌からは茶色がかった青が覗いており、それら全てを未曾有ナマコという魔物のスカイブルーの透明な皮膜が覆っている。
全体的なカラーリングはちょっと汚い青色という感じで、魔物素材を使っているせいで塗り直しができそうにないのが残念だ。
ナマコの皮膜が一番前に来ているので、全体的にぬめっとしている。
「とりあえず乗ってみよっか」
後ろ側にある搭乗口から中に入る。
ナマコの皮膜はぶよぶよとはしているが、触っても手が粘液まみれになったりすることはない。
水中での搭乗に耐えられるよう、コックピットは完全に密閉されている。
そのため、搭乗性がめちゃくちゃに悪かった。
強化重装の不知火よりも悪いかもしれない。
中に入り動かしながら、操作性を確認していく。
流石というべきか、ハルトの設計になんら問題はなかった。
激しい動きをしてもほとんどラグもなく機体が動き、戦闘も問題なくこなせそうだ。
「それじゃあ次は……」
トッドは恐る恐るといった感じで、機体のつま先を水につける。
そのまま足、胸、頭と海に入っていく。
「うん、浸水もなさそうだ」
水の中での動きを確認する。
水中抵抗が強いため、出せる強さは普段の五割程度と言ったところだろうか。
背中から取り出した武装は、銛である。
水中の魔物と戦うためには、剣では少し取り回しが悪い。
リーチが長めなこと、そして銛を突き出せばかなりの威力が出ることを考えると、ある程度水中戦闘もこなせそうだ。
(けどこれは……調整と練習が必要そうだね)
機動鎧での水中での活動が可能になれば、海からの奇襲が可能になる。
この機体の量産が成功すれば、船によって移動を行い、揚陸させることなく機動鎧による奇襲が可能になるわけだ。
アキツシマで戦闘行為を行うなら、この水陸両用機動鎧――アンコウの価値は計り知れない。
トッドはリィンスガヤに戻ってから急ぎアンコウの量産に取りかかろうと決めてから、こちらに手を振るハルトとレンゲに手を振り返すのだった――。




