一段落
ヤマタノオロチを無事に倒すことができたことで、アキツシマの人間のトッド達への態度は露骨に変わった。
その技術をなんとかしてアキツシマに取り込もうとゴマを摺ってくる者、おいしい思いをしたいからと近寄ってこようとする者、そしてその力がほしいと引き抜きをかけてくる者。
そのあまりの攻勢は辟易としてしまうほどひどく、トッド達がアキツシマの人間と思わず距離を取ってしまうほどだった。
トッドはその中でしっかりと相手を吟味していくことになる。
ヤマタノオロチを倒したことで、アキツシマを襲うことになる災害は未然に防ぐことができた。そのためトッドは、次のことを考えなければならない。
次に考えるべきはやはり機動鎧の開発と他国の動向である。
今回、本来ゲームであれば手に入らないヤマタノオロチの素材を手に入れることができた。 かなり傷こそついているものの、あれだけの巨体だ、無事な部分を使えば一機作れる程度の素材にはなるだろう。
ヤマタノオロチの防御力は脅威だった。あの素材を機動鎧に用いることができれば、高い防御力を持つ機体を作ることができるだろう。
また、ヤマタノオロチはかなり強力な魔法を連発することができていた。
もしかするとその体内のなんらかの器官や機構を分析することができれば、新たに魔法が使える機動鎧を開発することができるかもしれない。
それどころか、完璧に分析をすることができれば、全ての機動鎧に魔法を使う機能をつけることすら可能かもしれない。
夢は広がる一方だった。
少し悩んだが、トッドはもうしばらくアキツシマに逗留させてもらうことにした。
土魔法による状態保存は自分でもできるし、何よりハルトが一刻一秒も早くヤマタノオロチの素材を検分したいと言って聞かなかったからだ。
アキツシマの大名達はこれ幸いにとばかりに是非うちでと言ってきていたが、明らかに機動鎧への興味を隠せていなかった。
そのためトッドは皇家の家に世話になり、空いている納屋を貸してもらい研究をしてもらう形をとることにした。
研究の方はハルトに任せ、トッドはもう一つの懸念事項について考えることにした。
(果たして次の一手を、どうするべきか……)
アキツシマに起こる大きな悲劇。これを避けることができたものの、世界にはまだ悲劇が溢れている。
有能なサブキャラの中にも、このままでは病で死んでしまう者や殺される者は多い。
それらの救出は急務である。
既に軍事力は手に入れた。そして戦争をせずに時間をかければかけるだけ、他の国とリィンスガヤとの間の国力は開いていく。
つまりあとは待っているだけで、リィンスガヤの力はどんどんと増大していくのだ。
(圧倒的な力を手に入れて……その上で僕は、どうするべきなのか)
トッドはとにかく力を手に入れるために奔走してきたが、あまりその先のことについて真剣に考えてきたわけではない。
急な軍備の増強にも問題はある。
今の父に、拡大志向はない。
けれど下手に強大すぎる軍を持てば、それを仲の悪いリィンフェルトに向ける可能性も十分に考えられる。
また、一度開発した以上今後機動鎧を使った軍を維持するためにはかなりの軍事費が必要になるだろう。
リィンフェルトを併呑してしまい、そのままの勢いでアキツシマにも強い影響力を持っておく。
そのまま山の民を突っ切って連合国まで支配してしまえば、大陸はリィンスガヤの者になる。
来るべき神との戦いのことを考えれば、リィンスガヤだけでは圧倒的に兵数が足りていない。
その補充のためにも、またこの世界の軍事力の底上げのためにも、他国への侵略は既定路線だろう。
(奇襲でリィンフェルトを攻め落とし、そのままリィン王国を再興。タケルをアキツシマで王位につかせてから機動鎧を使いアキツシマを統一してもらう。まずはそのあたりのための筋書きを描かなくちゃいけないか……)
トッドは頭を巡らせながら、今後起こるべき戦いに思いを馳せる。
その顔は戦を待ちきれぬ猪武者のように猛々しいものだったが……不意にその顔がゆがむ。
「はぁ、でも今はそんなことより何より……早くエドワード達に会いたいよ……」
戦いも戦略を練るのも嫌いではないが、家族とのふれあいはそれにも勝るほどに大切だ。
アキツシマで恐れられても家族大好きなのは変わらないトッドであった――。




