vsヤマタノオロチ 6
(右右左左上下ッ!)
上下左右から襲いかかる攻撃を、トッドは立ち止まることなく避け続ける。
一撃でも食らえばマズいというのに、なぜかかなり心は落ち着いていた。
腹が決まった、というやつなのかもしれない。
なんとしても倒す。
そう覚悟を決めたトッドは、迫り来る攻撃を避け、時に迎撃しながら進んでいく。
「殿下……まさか、これほどとは……」
後方に居るライエンバッハの声が聞こえてくるが、そこに意識を割く余裕はない。
トッドはヤマタノオロチ第八頭の攻撃だけは大きく避け、それ以外の攻撃は最低限の動きで避ける形を取ることにした。
上下左右の別なく襲いかかる攻撃を避け、防ぎ続ける。
攻撃には規則性があった。
ヤマタノオロチも当然ながら生物ではあり、そこには嗜好や偏りがある。
トッドは攻撃を避けながら進む中で、相手が打つ手を覚えていく。
いくつかのパターンがあることに気付いてからは、攻撃を食らう頻度は格段に減っていった。
「ぜあああっっ!」
大剣の強烈な一撃がヤマタノオロチに突き刺さる。
魔法が放たれるが、トッドはそれを最小の動きで避けていく。
火炎弾は手の甲で軽く弾き、水の槍は剣を軽くあててから胸甲で防ぐ。
機体に大きな傷がつくことなく戦い続けることができているのは、トッドがヤマタノオロチの力を完全に読み切っているが故だった。
トッドは前世の頃から対人戦よりもCPU戦の方が好きだったし、得意でもあった。
分析とそれによる傾向と対策……繰り返しによる情報の集積が、トッドとヤマタノオロチの差を更に広げていく。
「隙だらけだよッ!」
トッドは小刻みに機体を動かしながら、ヤマタノオロチの足を狙って攻撃を繰り返していく。
首が未だ七つ残っているためにその視野は広いが、三百六十度全方位を網羅できているわけではない。
意識の間隙や構造上どうしても見えなくなる部分がある部分を見つけてからは、展開はより一方的になっていく。
「近付いちゃえば、あのぶっぱなしも使えないしねっ!」
気を付けるべきはやはり第八頭の強力な魔法攻撃だ。
けれどあの攻撃にも対処法があった。
それは……とにかく距離を詰め続けることだ。
ヤマタノオロチと触れ合うほど近距離で攻撃をし続けてしまえば、自爆を恐れヤマタノオロチの魔法攻撃のレパートリーは大きく制限される。
距離を保つせいで打撃や体当たりを食らう頻度は上がったが、それでも魔法を食らうよりダメージを抑えることができている。
そして常に第八頭を狙い続けているため、攻撃のチャンスも明らかに増えていた。
トッドはゲーム的な思考で戦闘を進めていく。
相手が噛みつき攻撃をしてくれば、少し飛び跳ねて顔に攻撃を入れる。
火魔法に対しては少しだけ距離を取り、攻撃を避けてから大振りの一撃を。
パターン化していけば、その分だけ身体が勝手に動くようになり、他に思考のリソースを割けるようになる。
強化兵装、強化重装、そして機動鎧……トッドは何年もの期間を、何かに搭乗する形で過ごしてきた。
彼にとって機動鎧とは人生そのものであり、今や自分の身体とまったく遜色なく動かすことのできる最良の兵器だ。
「すううっっ」
トッドは深呼吸をしながら、最大のチャンスが訪れるのを待った。
水魔法を使う第四頭が魔法攻撃を放ったその瞬間、
「――今だっ!」
トッドはヤマタノオロチの身体を駆け上がる。
彼が胴体を上っていく中、硬化したまま動かずにいた第八頭が再び動き出す。
第八頭は自身の身体に上るトッドを流石に脅威だと判断したのか、自分諸共ダメージを食らう砂礫を放ってきた。
それら全てを回避することはできない。
機体には傷が増えていき、鋭利な小石はコックピットにまで到達し始める。
トッドの身体にも傷がついていく。
けれどそれでも、彼は止まらなかった。
彼は怒濤の勢いで上り続け、そして――。
「ギャアアアアオオッッ!!」
「おおおおおおおおおおっっ!!」
ヤマタノオロチの第八頭と向かい合い――両者が交差する。
トッドが搭乗するムラクモの機体が、至近距離から土の散弾を食らい中破してしまう。
けれどトッドの一撃は見事に入り――第八頭はその活動を止めるのだった。




