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vsヤマタノオロチ 5


 回復という手段を失ったことで、ヤマタノオロチの身体には目に見えて傷が増えていくことになった。

 けれど元々の治癒力もかなり高いため、なかなか決めきることができない。


 ヤマタノオロチの弱点がどこにあるのか。

 それを探りながらの戦闘が続く。


(頭を潰すことができれば、その分だけ戦闘能力を削ぐことができる……とりあえずは頭を潰すのが、一番手っ取り早いか)


 トッド達は攻撃をなるべく一つの頭に集中させることで、第二頭と同様頭を潰しに行く作戦を取ることにした。


 けれどそれにより二つ目、第四頭が活動を停止したことで、ヤマタノオロチの行動パターンに変化が生じた。


「ギャアアアオッッ!!」


 ヤマタノオロチが首による噛みつき攻撃を控え、距離を取りながらひたすら魔法を連発してくるようになったのだ。


「近付けませんな……」

「うん、あれはさすがに無理だね……」


 ライエンバッハとトッドが見つめる先では、砂礫が勢いをつけて雨になって降り注いでいた。一粒一粒が地面を凹ませるほどの威力があり、うかつに近付けば機体がボコボコになってしまいかねない。

 そんな攻撃が絶え間なく降り注いでいる。


 攻撃が止むと、最も高威力である土魔法を使える第八頭が沈黙し、残る五つの頭が動き出す。

 火・水・土・風。

 四属性の魔法の嵐が吹き荒れる。

 そのどれもが高威力だが、先ほどまでと比べればやはり攻撃の密度が低い。


「つまり……当たらなければ、どうということはないってやつだ!」


 トッドは炎の蛇のかみつきをひらりとかわしながら、ヤマタノオロチへと接近していく。

 接近し、斬り付け、ねじ込む。

 それに対応するためにヤマタノオロチは避け、距離を取り、魔法を放つ。


「ハハハハハッッッ!!」


 戦い続けてハイになっているトッドは、どこかゲームをやっているようで楽しくなってきていた。

 気分はターン制のロールプレイングでのボス戦だ。魔法の着弾音や剣が肉を断つ物騒な音をBGMに、戦いは続いていく。


 魔法の雨の中を掻い潜るのは神経を磨り減らすが、向こうが逃げ腰で積極的に攻撃してこないのはありがたい。


 トッド達は傷をつけるペースは遅くはなったものの、自分達がほとんどダメージを受けることなく、戦いを続けることに成功する。

 魔法の連打は何度か観察したことでパターン化に成功しており、避けることはそう難しくなかった。


「ギャアアオッ!」

「来るよ、皆っ!」


 しかしその中でも一つだけ、気を付けなければならないことがある。

 それが第八頭による強力な魔法攻撃だ。

 他の魔法とは違い、この頭が放つ魔法は範囲も威力も桁が違う。

 第八頭の攻撃の予兆が感じられた瞬間、即座に距離を取らなければいけないほどだ。

 それでもなお攻撃を食らい、ダメージが蓄積され動きが鈍くなる機体も出始めている。


 連発はできず、溜めが必要で、ある程度のインターバルがあるというのがせめてもの救いだ。


 第八頭を早いこと潰してしまわなければ、こちら側に動けなくなる機体が出る可能性がある。

 いちいち首の様子を確認しながら戦わなくてはならないことによるストレスも馬鹿にできない。


 けれど更に厄介なことに、第八頭は自らが魔法を使う瞬間以外、カチコチにその身体を硬化させてしまう。

 ダメージを与えようとするのなら、あの土魔法を掻い潜るように攻撃を加えなければならないのだ。


 完璧な機体操作ができる人間が、損害を度外視して進むことでようやく辿り着けるかどうか。

 己の命を覚悟して、第八頭を潰す。

 それができない限り、ジリ貧になることは目に見えていた。


(操作能力だけで言えばタケルかローズ……でも彼らはまだ子供だ。だから……僕が行くしかない)


 危ないことはしないとエドワードに約束したのに……結局また、約束を破っちゃうな。

 そう言って前傾姿勢になるトッドが吼える。


「あの頭は僕が潰す! その後の掃討は任せた!」

「「「任せて下さいっ!!」」」


 目をつぶり縮こまっている第八頭が――ゆっくりと首を起こす。

 トッドは天地がひっくり返る震えと猛威の中を、捨て身で進んでいく――。

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