vsヤマタノオロチ 3
今回最も活躍しているのは遠距離からヤマタノオロチの動きをセーブしているガールーだろう。
けれど他の機動師達も、決してその活躍に劣るものではない。
「ズラアアアアアッッ!!」
蒼穹を思わせるアリアケに騎乗したローズは、悠々と空を駆ける天馬のように縦横無尽に動き回っている。
彼女用に特化が施されたアリアケは、以前と比べると装甲が更に薄くなり、その分機動力に特化した機体へと変貌している。
女性的な曲線を描くメタルブルーの機体が、ヤマタノオロチの身体を切り刻んでいく。
「ぎゃあおぉっ!」
ヤマタノオロチはたまらず魔法を発動させ、残る首もローズ目掛けて攻撃を開始した。
けれどローズは噛みつきをしてくる頭部をいなしながら、襲いかかる水球を軽々と避けてみせる。
「ほらほら、こっちだよ!」
再度の噛みつき攻撃、なかなか攻撃が当たらず焦れた様子のヤマタノオロチの首を狙い、ローズが一撃を放つ。
「ぎゃああおっ!?」
ヤマタノオロチの左から三つ目の首の目が貫かれる。
ローズの持つレイピアは目を突き抜けて奥深くまで刺さり、その先にある脳にまで到達。
か細い鳴き声を上げながら、首のうちの一つが沈黙した。
「僕も負けて――いられないっ!」
シラヌイに搭乗するタケルの機動鎧捌きは、ローズの更に上をいっている。
彼はヤマタノオロチの体表を疾駆しながら、器用にバランスを取って攻撃を加えている。
上に向けて跳び上がり、その勢いを使って斬り付ける。
そして再びヤマタノオロチの胴体に着地し、垂直に上っていく。
ヤマタノオロチは当然ながら激しく、上へ上がればそこは首が交差するほどの危険地帯だ。 けれどタケルは時に頭を踏みつけ土台としながら、器用にその場所に居座り続けている。
ヤマタノオロチがどのような攻撃を仕掛けてくるのかを、本能で察しているのだろう。 その証拠にヤマタノオロチが自らに当てても構わないと魔法をタケル目掛けてきた時は、彼は動物じみた嗅覚で地面に飛び込んで攻撃を躱してみせている。
そしてレンゲ・ランドン・トティラは三人で二つの首を押さえていた。
こちらは堅実な戦い方だ。
どれか一つの首を攻撃する際は必ず二人以上で挑み、数的有利を確保しながら戦う。
魔法を使われそうになった際はとにかく散開し狙いを絞らせない。
やり方としては単純だ。元々連携訓練をしているわけでもない三人なので、作戦自体を単純にすることでミスが起こらないようにしているのだろう。
「すううううっっ……」
ライエンバッハが乗り込むオニワカは今回、最も動きの少ない。
けれどヤマタノオロチに与えているダメージは最も大きいのは彼だ。
彼は今回、とにかく威力のある一撃を加えることに徹し続けている。
溜めて溜めて、一撃を放つ。
ヤマタノオロチを翻弄する他の者達によってできた隙を逃すことなく、攻撃を叩き込み続けていた。
そしてトッドは、全体を統括するためにわずかに後方に位置取っている。
もし何かあった際に即座に対応できるよう予備戦力としての意味合いもある。
トッドは冷静に状況を俯瞰して、思案をしてからうんと頷いた。
(このまま行けば、問題なく押し切れそうだね)
回復を使い癒えるダメージより、トッド達が与えているダメージの方が圧倒的に多い。
範囲攻撃を使われたり、また全ての首の攻撃を避けきることが難しかったりするため、当然ながら機動鎧も無傷ではない。
けれど双方のダメージ比率では、圧倒的にトッド達の方に分がある。
既に回復魔法と自身の治癒力でも塞がらない傷も現れ始めており、ダメージが蓄積されている様子が傍から見ていてもわかるようになっている。
だが、気がかりもある。
それが未だ魔法を使う気配もなく、目を閉じたまま動かない八つ目の首だ。
この首は魔法を使って硬化しているのか、まったくダメージが通らない。
不気味に動かない八つ目の首に違和感を感じながらも、戦闘は順調に進んでいく。
ヤマタノオロチの胴体にライエンバッハの強烈な一撃が入り、ぱっくりと大きな裂傷ができたその瞬間……八つ目の首の瞳が開く。
そして……
「ふしゅるううううっっ!」
首が魔法を使ったその瞬間、トッド達は思わず膝をつけてしまうほど強烈な振動が、封龍の間を大きく揺らした――。




