vsヤマタノオロチ 2
ヤマタノオロチが、己を身体を何百年にも渡り封印してきた鎖を引きちぎる。
鎖を地面に固定させていたアンカーが弾け、縫い付けられるようになっていたヤマタノオロチが、のっそりとその身体を起こす。
「ぎゃああああああおおっっ!!」
八つの頭が同時に咆哮し、その身体から発されるプレッシャーが爆発的に高まる。
トッドは目の前の敵を見ても怯むことなく、前に出た。
「皆、気を付けて! ここからが本番だよ!」
「「「はいっ!!」」」
休憩を挟みながら戦ったことで疲労の色はほとんどない。
なのでここからが、正真正銘の全力の戦いだ。
「ぐっぎゃあああお!」
ヤマタノオロチの左から二番目の頭が吼える。
その頭が白く光ったかと思うと、今までトッド達がつけてきた傷がものすごい勢いで塞がり始めた。
自然治癒力をはるかに超えたその現象は、間違いなく魔法による回復だった。
「があああおっ!」
ヤマタノオロチの左から三番目の頭が鳴いた。
頭上にいくつもの炎弾が浮かび上がる。
再度の鳴き声に合わせて、それらが射出される。
トッド達は大きく散らばりながら、その攻撃をかわしていく。
ただその数が、あまりにも多かった。
全てを防ぎきることはできず、何人かが身体に被弾してしまう。
損傷を見れば、そこまでダメージは大きくない。
食らいすぎなければ問題はなさそうだった。
トッドは攻撃を加えながら、戦闘モードに入ったヤマタノオロチの攻撃パターンを分析していく。
基本的に八つの頭がそれぞれ意志を持ち、自立的に行動をしている。
それぞれが使える属性は基本的には一つで、おおよそ首ごとに役割が決まっている。
魔法を同時に使うことはできず、一つの頭が魔法を使うと他の頭は技後硬直のためかわずかに動きを止める。
胴体の動きもなかなかに速いが、捉えきれないほどではない。
速度より魔法を気にすべき相手だった。
中でも特に気にかけなくてはいけないのは、左から二番目――回復役を務める頭だ。
あそこを潰さない限り、どれだけダメージを与えても回復され続けてしまう。
けれど今は、そこに至るまでの攻撃手段がほとんどない。
「まずは足を潰すよっ!」
故にトッドは狙いを首ではそれと繋がっている胴体と脚部へと定めた。
そこであれば機動鎧の全長であっても、十分に攻撃が届く。
そして胴体の速度は首と比べれば遅いため、相手を翻弄することができる。
今の機動鎧には、飛翔機能は搭載されていない。
そのため攻撃手段は壁を伝って駆け上がってから飛びかかるか、直接跳び上がって狙いを定めるかしかないのだ。
「ぐあおおおおっっ!」
首の位置を下げるためとにかく足を攻めていこうとするが、当然ながらその動きを他の頭達は邪魔しようとする。
けれど胴体と比べれば速い首の動きも、機動鎧の圧倒的な機動力の前では児戯に等しい。
そして封印されていた時にしっかりとダメージを与えていたのが功を奏したのか、八岐大蛇の自然治癒力は明らかに落ちていた。
傷が塞がるまでにはかなりの時間がかかっており、回復魔法なしでは傷を治すことは難しいような状態だった。
これを好機とみたトッド達は果敢に攻め立てる。
そしてそれを防ぐために立ちはだかるのが、削る度に声を上げる二つ目の頭による回復魔法である。
今もまた、回復魔法が放たれようと――。
「貫け、サジタリウスッ!」
けれどその回復を、ガールーが操縦するサジタリウスの矢が防ぐ。
今の彼は、以前作った魔導弓の改良型を身に付けている。
魔力によって形成された光の矢は、物理的な貫通力を持ってヤマタノオロチ第二頭の右目に突き立った。
「ぎゃあああおっっ!?」
回復の魔法の発動途中で攻撃を食らったために、魔法がキャンセルされる。
今がチャンスだと全員で攻め立てようとするが……。
「ギャアアオッ!」
ヤマタノオロチの周囲を囲むような形で、土の棘が形成されていく。
突如として突き出てきた棘を避けるため、接近は諦め回避に専念するしかなくなってしっまう。
「流石、一筋縄じゃいかないね……」
まるでトッドの声に応えるかのように、ヤマタノオロチは咆哮し周囲へ暴風を撒き散らすのだった――。




