祖父と孫
ヤマタノオロチ討伐それ自体をデモンストレーションとして行うのは、流石にマズい。
有力者達を庇いながらの戦闘などしていては、勝てるものも勝てなくなってしまう。
だが機動鎧が実地でどれだけの活動ができるのかを知ってもらいたいという気持ちは強い。
なので今回トッドは、ヤマタノオロチの封印されている洞穴付近で戦闘の様子を見せることにした。
ハクシの情報によると、そのあたりの魔物であればそこまで危険度は高くないとのこと。
その場で有力者達に実際の戦闘能力を見せつけながら、ついでにヤマタノオロチの封印がどうなっているかを確認しておこうという二段構えの作戦だった。
だがそれでも、魔物の出る地域で戦闘を行う訳なので、危険はある。
なのでやって来るのは有力者達の子息や親戚筋あたりだと思っていたのだが、
(まさか現王が直々にやってくるとはね……他の人もそうだけど、アキツシマの人達って皆現場主義なのかな?)
トッドは驚きながらも、眼前の情報を整理する。
彼の目の前にいるのは有力者達本人だった。
アキツシマで当主をしている者達は皆、代理人を派遣するのではなく本人達が直々にやってきていたのだ。
これから行う探索にもついてくるつもりのようだ。
ちなみに現在トッド達がいるのは、ヤマタノオロチが封印されているというエズの洞窟にほど近い水星という街だった。
アキツシマの大名達には、自身で戦場を駆ける者も多いと聞くが、まさか当主本人が来るとは流石に想像していなかった。
そして更に驚くべきことに、今回同行するメンバーの中にはアキツシマの現王である皇ミカゲの姿もあったのだ。
「おお、タケル……大きくなったな……」
「お久しぶりです……おじいさま」
ミカゲがタケルのことを抱きしめると、タケルもおっかなびっくり背中に腕を回した。
ミカゲは周囲にいる大名達よりも地味な濁った青色の服を身につけている。
年齢はそろそろ老年に差し掛かるというくらいだろうか。
頭髪も黒より白の方が目立つようになっていて、その顔には深い皺が刻まれていた。
その姿格好は、王とは思えないほどに質素なものだった。
冠を着けているわけでもなく、煌びやかな宝飾品を身に付けているわけでもない。
そのせいか威厳のようなものもあまり感じず、どちらかと言えば親戚の優しいおじいちゃんのような感覚を覚える。
「お久しぶりです、お祖父様」
「そんなに他人行儀にしなくてもいいぞ。前のように気軽におじいちゃんと呼んでくれ」
そう言ってミカゲは笑う。
タケルの方は少し困ったような顔をしていた。
タケルが最後にアキツシマに来たのは、トッドがハルトをスカウトして引き抜いたあの時だ。
当時はまだ舌っ足らずだったタケルも、今では立派な男児になっている。
その様子を見たミカゲの瞳は、少しだけ潤んで見えた。
孫の成長を何より喜ぶのは、どの世界でもあまり変わらないらしい。
爺と孫の感動の再会を終えてから、ミカゲは曲げていた腰をしゃっきりと伸ばす。
「今日はよろしく頼む」
「はい、こちらこそよろしくお願い致します」
皇家までやってきて大事になってはきているが、それでもトッドがやることは変わらない。 彼は既に組み立てを終えていた機動鎧とそれに乗り込む機動師達を先導する形で進み出す。
道中あった魔物達も、護衛をしながらでも難なく倒すことができる。
後ろから驚きの声を聞いて少し得意げになりながらも、トッドの頭はめまぐるしく動いていた。
(ヤマタノオロチ……帰るまでの時間を考えると、あんまりグズグズもしてられないんだよね……)
決戦の時は近付いている。
気を引き締め直したトッドはミカゲを含む観戦者達を引き連れ、無事エズの洞窟へと辿り着くことに成功する――。




