新たな可能性
「ほう、あれは……マーマンかな?」
トッドが甲板までやってくると、戦いは既に始まっていた。
船を襲った魔物は、マーマンという水棲の人型魔物だ。
といっても、その見た目は人間からは程遠い。
手足の指の間には水かきがあり、その体表は紫がかった青色。
目はぎょろりとしていて、首下にはエラのような器官が見える。
鋭く尖った爪と牙で相手を掻き切る魔物らしい。
「往生せいやぁ!!」
「おら野郎共、男を見せろッ!」
今回船を漕いでくれているのは、アキツシマの船乗り達だ。
恐るべきことに、彼らは銛を使い、マーマンを相手に見事な接近戦を挑んでいた。
漁師のような見た目をした、ねじりはちまきの男達の中には、魔法を使っている者もおり、これ以上マーマン達が船上に上がってくることがないよう牽制と攻撃を続けている。
不思議なことに、放つ魔法はどれもこれも銛の形をしていた。
よく見るとかえしがついていたが、果たしてあれに何か意味はあるのだろうか……?
「アキツシマの船乗りは強いのですね」
「水棲魔物と戦えなくちゃ、漁はまともにできませぬ。アキツシマでは、船乗りというだけで一定のステータスになるほどです」
ハクシの説明に、ふむふむと頷く。
たしかに海に魔物がいるこの世界では、漁に行くのも命がけだ。
自分は普段何気なく魚を食べていたが、この世界では魚はかなりの貴重品だ。
もう少し、食料生産者に感謝をした方がいいかもしれない。
そんな風に考えているうちに、戦闘は終わっていた。
船乗り達が船の上に上がっている死体から素材を回収し始める。
そこに現れる、細長くどこか見覚えのある影。
はぁ、とトッドがため息を吐くと同時に、その人物――飯島ハルトがキラキラと目を輝かせながら、
「ぜひ! ぜひこの素材を僕に!」
と土下座をし始める。
明らかに困った様子のハクシと船乗り達に申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら、トッドはハルトがレンゲに頭を叩かれるのを、苦笑しながら眺めるのだった……。
アキツシマに至るまでの道中、更に魔物の襲撃は二回あった。
そして襲ってきた魔物の素材は、トッド達が好きにしていいことになった。
そうなれば、トッドとしてもやりたいことも出てくる。
二人はレンゲの冷たい視線から目を背けながら、素材の確認やアイデアの出し合いを始めるのだった。
「見て下さい殿下、この魔物素材の防水性! リィンスガヤで採れるものより、防刃性も伸縮性も高いですよ! これで機体を覆えば、水中で浸水することなく活動できるかもしれません!」
水中の魔物素材のグレードの高さは、アキツシマ由来の素材の方が明らかに高そうだった。 たしかにハルトが言う通り、こちらの素材の方が各種性能が高い機体ができあがりそうだ。 ゲーム世界では海の魔物はアキツシマの方が強力だったが、どうやらこの世界でも状況は似たようなものらしい。
素材については改めて検証する必要があるだろうが……また一歩、原作再現への道が進んだと言える。
「そろそろあれが作れるかもしれないね」
「あれって……他のどれでもない、あれのことですよね?」
「ああ、もちろんだよ。これで進むかもしれない――念願の、水中戦用機動鎧の開発が」
ふふふふふ……と、トッドとハルトは顔を突き合わせながら不気味に笑い合っている。
それを見たレンゲは、はぁとため息を吐き、そのまま部屋を後にするのだった。
二人で話に花を咲かせているうちに、船はアキツシマへと到着した。
トッドはどこか故郷を思わせるアキツシマの地へと、再び降り立ったのだった――。
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