vsライエンバッハ 3
「はああああああああああっっ!」
トッドが放つのは、振り下ろしだった。
中段から放たれる一撃には、トッドの持つ全てが乗せられている。
魔物の筋繊維を使った機動鎧は、人体の構造上不可能な動きを可能とする。
稼働時間を気にせずに動けば、普通に動けば身体を破壊してしまうような無理な運動を行うこともできる。
トッドは足のバネを使い威力を上げ、身体の捻りを加えることで回転を加えていく。
強引な動きと限界を超えた運動に、機動鎧の方が悲鳴を上げる。
ぶちりと嫌な音を鳴らし、脚部の筋繊維のうちのいくらかが断裂した。
機動鎧の力と自身の力、それに力学的な力を乗算させたトッドの一撃は、大気を裂きながら突き進んでいく。
「おおおおおおおおっっ!!」
対するライエンバッハもまた、トッドの一撃に懸ける気持ちに呼応するかのように吼える。 彼が操るオニワカも、ムラクモと同じく限界を超えた運動に無理を来たし、既に一部の運動性能が下がり始めている。
だがお互い、自らの操縦する機体の悲鳴などまったく気にしてはいなかった。
なぜなら二人には――今目の前にいる相手しか見えていないからだ。
互いの機体が交差する。
剣速が早すぎるあまり、動体視力には自信があるはずの騎士団員達ですら、激突の瞬間の攻防を見届けることができなかった。
色違いなだけで見た目は瓜二つの機体。
強化重装シラヌイの持つ双剣から名付けられた色違いの機体は、光のような速さでぶつかり合い、そして剣を突き出したまま固まった。
誰も言葉を発することができない。
手に汗を握りながら、攻防の結果が出ることをただただ見守っていた。
ごくり、と誰かが唾を飲み込む音すら聞こえるほどの静けさの中で聞こえたのは――。
バキンッ!
機体の表面が壊れる破砕音だった。
その機体とは……。
「――なんと! お互いが放った必殺の一撃は、双方共に相手の首筋へ届いていました! 痛み分け、結果は痛み分けです!」
ムラクモとオニワカの両方だった。
そこには表面を大きく絶ち裂かれているオニワカと、右肩から左脇腹にかけて大きな穴を空けられているムラクモの姿があった。
お互いボロボロだ。
けれどまだ試合は終わっていない。
二つの機体は無理な制動が祟っているのか、どこかぎこちない動きをしながら向き直る。
どちらとも、コックピットからその顔が見えている。
「は……ハハハハハッ!」
「……ふふふふふっ」
トッドとライエンバッハはお互い頭から血を流しながらも……笑っていた。
そして再度の吶喊。
二つの機体は再び接近し、先ほどまでより更に強引に戦いを続ける。
操作系統の機能が十全に機能していないため、二人の攻撃は粗っぽく、先ほどまであった繊細さは欠片ほども残っていない。
お互いに大剣を叩きつけ合い、時には足技すら交えながらも交戦は続いていく。
二人は笑い、機体をひしゃげさせながらも、戦うことを止めず、楽しそうに剣を振り続けるのだった――。




