vsライエンバッハ 2
必殺の一撃を食らったトッドは――目の前に現れた鉄塊に、思わず見入ってしまっていた。
機動鎧の人外の膂力によって放たれた鉄剣は無骨でありながら、どこか陶芸品のような泥臭い美しさがある。
目の前に迫る剣を前にしても呆ける余裕があるのは、幸いなことに、トッドの回避がギリギリ間に合ったからだ。
回避を不可能だと判断したトッドは、敢えて前進し、ライエンバッハの一撃を完全に威力が乗る前に受けてみせた。
結果として攻撃は見当違いの箇所に当たり、コックピットの右端――操作系の魔力回路がさほど通っていないところを貫通したのである。
トッドの目には、ライエンバッハの持つ剣が見えている。
その剣がコックピットを食い破ろうと震え出すのを見て、彼は我に返った。
「――余計なこと、考えてる場合じゃないよねっ!」
トッドは急ぎ機体を引いた。
その速度は、そのまま剣を振り上げて操縦席を覆う合金部分を剥がそうとするライエンバッハの一撃を上回った。
結果としてムラクモの機体には穴が空いたが、操作性はそこまで落ちてはいない。
スゥスゥと流れてくる隙間風を感じながら、トッドはぺろりと唇を舐める。
どうやら口を切っていたらしく、血の味がした。
「やりますな、今の一撃で仕留めるつもりだったのですが」
「いや、危なかったよ……本当に」
トッドは先ほどまでと違い、少しだけ距離を置く。
確認をするが、明らかに自分の意志の伝達が遅くなっている。
先ほどまであった速度の優位がどれほど変わったかを確認するため、再度の吶喊。
速度がわずかに落ちた程度だが、操作性が悪くなったのが致命的だった。
先ほどまでは継ぎ目なくできていた攻撃に、わずかに隙が生まれてしまっている。
そしてライエンバッハは、その隙を逃さない。
剣を置くようにすることでトッドの攻撃の手順を変え、より大きな隙が生まれるようなタイミングを見計らって攻撃をしてくるようになる。
先ほどまでかすらなかった一撃も、運動性能と操作性が落ちたことで完全に避けるのが難しくなる。
攻撃を回避ために大きく制動しようとすると、その大きな回避動作を見越して放たれた一撃を避けることができない。
故に途中からは攻撃の全てをかわすことを諦めた。
相手の攻撃の中でも芯となるものだけを避け、攻撃を食らいながらも食らいついていく方針に切り替える。
「はあっ、はあっ……」
剣の大振りに相手が距離を取ったのを機に、トッドも跳ねるように後ろへ向かう。
戦いの合間にできた小休止。
お互いの機体を確認するが、トッドが新たにつけられた傷の方が明らかに多い。
今のままがむしゃらに攻めるだけでは勝てないのは明らかだった。
このまま動いてもジリ貧。
これ以上機体の運動性能を削がれてしまえば、こちらの勝ちの目がなくなる。
故に狙うは――。
(今放てる最強の一撃で、勝負をつける)
トッドは構えた。
呼吸を整え、脱力。
いつでも全力の斬撃に移れるよう、準備を整える。
ライエンバッハはそのトッドの態度を見て――同じく剣を構えた。
タイミングを窺いながら、ジリジリと近付いていく両者。
観客達は黙り、皆が固唾を飲んで見守る。
遠くで聞こえた、鳥たちの羽ばたきの音が合図になった。
「――おおおおおおおおおおっっ!!」
「――ぜええええええええいっっ!!」
そして両者の放つ全力の一撃が交差し――。




