vsライエンバッハ 1
試合開始と同時に、トッドは一気に前に出た。
前傾姿勢になっており、防御よりも攻撃を重視した構えだ。
対するライエンバッハも、決勝までに見えた落ち着いたものとは違い、前に出てきていた。
二人の速度はほぼ同じ。
結果として二人は全速力でぶつかり合う形になった。
「シッ!」
「ぬんっ!」
双方共に、剣を振り下ろす。
振り下ろしと振り下ろしがぶつかり合い、胸の辺りで押し合う形になった。
(攻撃力は――僕の方が若干上かッ!)
トッドは一旦下がり、相手の出方を窺うことなく再度前進。
ライエンバッハも攻撃的に前に出る。
再度の激突。
地面を踏みしめ攻撃を放つ度にステージの土はめくれ上がり、攻撃がぶつかり合う度に衝撃が会場を揺らした。
ライエンバッハに再び攻撃を受け止められる。
けどトッドはめげることなく更に二撃、三撃と続けていった。
互いの剣速、微細な機動鎧の動きや肉体との連動性、性能差などを頭に入れていく。
トッドの鋭い一撃が、ライエンバッハへ放たれる。
けれどライエンバッハは落ち着いた様子で、柄を浅く持ち替え、冷静に対処する。
受け止められようとしたその時――トッドの斬撃がブレた。
ムラクモの姿が消えたのだ。
ライエンバッハは一瞬逡巡した上で、振り上げていた剣を、そのまま後ろに回す。
ガインッ!
後ろに回っていたトッドの一撃は、受け止められてしまう。
けれどトッドはそれでもめげなかった。彼はライエンバッハの背後を取る。
ライエンバッハは再び後ろ手でそれを受け止めようとするが、少し目測がズレたことで攻撃が入った。
「おおっと、最初に攻撃を当てたのはトッド兄上です!」
ライエンバッハが防戦一方になり、トッドが果敢に攻め立て続ける。
軸足を切り替え、剣の持ち手を変え、時には足技も絡めながら主導権を握り続けた。
(速度もやっぱり――僕の方が上ッ!)
戦いとは、いかに自分のしたいことを貫き、相手のしたいことを妨害できるかどうかだ。
ヴィッツラート流の練度では、ライエンバッハに勝てるはずもない。
であれば正攻法で戦っていては勝ち目はない。
トッドが勝機を見出したのは――純粋な機動鎧の操作能力での勝負だった。
剣技で勝てないのなら、勝っているスペック面の優位でゴリ押しをするしかない。
その作戦はしっかりとハマっていた。
既に全盛期を超えてからずいぶんと時間が経っているライエンバッハでは、まだまだ伸び盛りであるトッドに速度で大きく水をあけられている。
トッドはライエンバッハがカウンターを差し挟む余地もないほどに、苛烈な攻撃を続けていった。
ライエンバッハが、トッドの連撃の間に強引に横に攻撃を振ってきた。
強引に一撃を挟んできたため、ライエンバッハの乗るオニワカに大きな傷ができる。
流石に一撃を受けるわけにはいかなかったトッドは、後ろに大きく跳ねざるを得なかった。 けれどただで下がるわけにはいかないと、跳び上がる瞬間に一撃を入れるのも忘れない。
ダメージを蓄積させていくしか、自分の勝ち筋はないのだから。
「ふむ……見事です、殿下」
ライエンバッハの乗るオニワカの機体の表面には、いくつもの傷がついていた。
速度の優位を活かした戦い方をしているため、ついている傷はさほど深くはない。
だがこれを続けていればそう遠くないうちに、オニワカの運動性能は下がっていくだろう。
「寄る年波には勝てませんな……老体の私には、殿下の攻撃を目で追うのがやっとです」
「よく言うよ、本命の攻撃は全部潰してるくせに……さっ!」
トッドは果敢に攻め立て続ける。
けれど彼が言った通り、急所を狙った一撃は狙い澄まして放った本命の一閃は、全てライエンバッハに防がれ続けている。
(このまま行けば――押し切れるッ!)
トッドはムラクモを操縦しながらそう確信した。
だが……。
ドッ!
トッドの攻撃を食らいながら、ライエンバッハが一撃を放つ。
その必殺の突きが――操縦席を貫通した。




