スラント
「それでは続きまして第二試合、タケル・フン・リィンスガヤ選手対ガールー選手、ステージの上にお上がり下さい!」
「ほうほう、これはまた面白い組み合わせになりましたねぇ」
アナウンスに従い、タケルとガールーが壇上に上がる。
二人は既に機動鎧に乗り込んでおり、戦闘準備は万端だ。
「よろしくお願いします」
「こうして手合わせするのは初めてだな。トッド様の弟御と聞いている、本日はお手柔らかに頼む」
ぺこりと丁寧にお辞儀をするタケルと、それに合わせる形で頭を下げるガールー。
ガールーの方が頭を深く下げているおかげで、周囲から咎める声はあがらなかった。
彼もこちらの世界の流儀に慣れ始めている。若い者は吸収が早く、柔軟に物事を考えられる。
「タケルが乗り込んでいる機体には、見覚えがありますね」
「ええ、機体の基本的な設計図の部分は以前作った機動鎧の前身であるシラヌイのものを流用していますからね。おかげでかなり楽ができました、一からオリジナルを組み上げるのは手間ですからね」
「前身となったという強化重装シラヌイ……知らぬ方もいると思いますので解説をいただけるとありがたいです」
「シラヌイは簡単に言っちゃえば、山の民征服時に大活躍した機体です。それをよりパワーアップさせて作ったのがあの機動鎧『不知火』。本当は別の名前にしたかったんですが、タケル殿下が頑固だったので仕方なく……うわあっ、そんなに睨まないでくださいよぉっ!」
タケルに否定的な意見を言おうとしていたハルトは、周囲から向けられた視線を受けてすぐに黙った。
そして気を取り直して解説を再開する。
タケルが乗る機動鎧の名は不知火。
強化重装と区別をするために、トッドが機動鎧の方は敢えて漢字で表現するよう決めたのだ。
不知火は以前と同様赤く染色がなされており、タケルの年齢が低いこともあって機体はかなり小さめに作られている。
対するガールーが乗り込む機動鎧の方はかなり大柄で、おまけにその見た目がかなり特殊であった。
「あれはなんというか……魔物みたいな見た目ですね」
「言い得て妙ですね、作成時に参考したのはたしかにケイブモンキーという魔物です」
「ケイブモンキー……罠や挟み撃ちといった戦法を好む小ずるい魔物だ、と聞いたことがあります」
二人の乗り込む機動鎧の説明をしているうちに、第一試合でめくれた地面の補修も終わり、完全に準備が整った。
「それでは第二試合――始めっ!」
試合開始の声と共に、両者は駆けだした。
だがその様子は、先ほどとは異なっている。
「おおっとこれはぁっ!! ――ガール―選手、大きく下がりましたっ!」
トッドとランドンの時とは違い、今回は機動鎧同士の距離が縮まらなかった。
ガールーがステージの端まで下がったからだ。
彼は背中に携えていた弓を手に取り、姿勢を下げ重心を落とした。
そして……。
「すうっ……」
ガールーは軽く息を吸ってから、精神を集中させ始める。
機動鎧を通して、弓へと魔力が通っていくのがわかった。
握りから伝導した魔力が弦へと渡っていくのを確認してから、ガールーはその機動鎧――『スラント』を動かした。
スラントが虚空を掴む。
するとその手に、光が凝集されていく。
グッと右手を後ろに引けば、弦が伸びる。
そして気付けばそこには、つがえられた光の矢があった。
「貫け――サジタリウスッ!」
タケルの不知火へと向けられた鏃。
機動鎧の人外の膂力を込めた矢が、放たれる。
高速で飛来する矢が、タケルへと迫り――。
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