サザンカ
パンパンッ!
空に火魔法で作った花火が打ち上がる。
高火力にしているために、まだ真っ昼間であるというのに、青空に負けじとキラキラと輝いている。
「良い天気ですね、殿下」
「絶好の機動鎧日和だねぇ」
「そんな日和はありませんっ!」
「ほらほら、夫婦漫才はそのへんにしておいて」
「――め、夫婦っ!?」
目の前でいちゃこらとしているのは、レンゲとハルトだ。
レンゲは自分がしていたことを思い返し、頬を赤く染めて俯いてしまう。
トッドの視線の先には、目の前に出来上がっている武闘場があった。
ソエルを始めとした土魔導師達を総動員して作り上げたのだ。
ステージの周囲には、それを見下ろす形で観戦ができる観客席も多数用意されている。
もちろん土製なので、どれだけ壊れてもすぐに魔法で修繕が可能だ。
というか見た目にもわかりやすいように、強度よりも修繕のしやすさ重視で作っていたりする。
「でもこれで本当にどうにかなりますかねぇ」
「どうにかなるかじゃない、どうにかするんだよ」
今回この大会を用意したのは、未だ騎士団達の中にも多い、機動鎧に否定的な態度を取る者達を黙らせる意味合いも大きい。
故にリィンスガヤで立場のある人達が漏れなく観戦できるよう、スペースが広めに取られているのだ。
「あはっ、それはたしかにそうかもしれませんね」
「もちろんデータもバッチリ取るつもりさ。今の機動鎧にはまだまだ改良の余地があると思ってるからね」
そう言ってトッドとハルトは笑い合う。
げへげへと下卑た笑みを浮かべる二人を見て、レンゲが大きなため息を吐くのだった。
「さあそれではこれより機動士トーナメントを始めさせていただきます。実況はこの私、エドワード・アル・リィンスガヤと」
「解説兼説明役として参加している飯島ハルトの二人体勢でお送り致しますっ!」
王を始めとする重鎮達が観戦をする貴賓席は、会場の入り口を抜けた真逆の位置にある。
そしてその真向かい……つまり入場口の上の部分には、特別に誂えられた実況席が設けられていた。
その場所に座り拡声器を持っているのはトッドの弟であるエドワードと、自分が目立ったり人前に立つのは苦手にもかかわらずノリノリな様子のハルトである。
「いやぁ、拡声器の魔道具を使って人前で話すのは初めてですので、緊張しますね」
エドワードはそう言って、にこやかに笑う。
今回武闘場にいるのは、何も騎士団の人間だけではない。
社交も兼ね、貴族家の令嬢も参加していた。
エドワードの笑みを見た令嬢は、皆漏れなくほうと熱い息を吐いている。
どうやら社交界で鍛えた力は伊達ではないらしく、まったく緊張しているようには見えなかった。
「まあ機動鎧が大会を盛り上げてくれるので問題はないでしょう。今回は初披露となる機動鎧も数多くあります。既に現行で活躍をしている機体と戦い、どのような結果になるのか。一瞬たりとも目が離せませんねぇ」
人前で話すのが大の苦手なはずのハルトは、何故かハキハキと話している。
ハルトは兵器の話になってボロを出さない限りは、見てくれだけならかなりのイケメンである。
ハルトの優男っぷりを見た令嬢のうちの何人かは、何やらこしょこしょと内緒話をしている様子であった。
「さて、それでは今より第一試合が始まります。今回のトーナメントの配列は事前に選手達に引いてもらったクジによって決まっています」
「一切の不正はございませんので、ご安心下さい。まあ、そんなことしなくても絶対に盛り上がるからね」
自分が開発に携わった機動鎧の激しい戦いが見れるとあってか、ハルトは鼻息が荒かった。 そんな機動鎧バカの様子を見ても、エドワードは顔色一つ変えずに対戦カードを読み上げる。
「第一試合のカードは――ランドン対トッド兄上ですね」
「ランドン選手が使うのは量産型機動鎧のサザンカ二式。対してトッド選手が使うのは、最初期から使われ続け、チューンナップが何度も行われているムラクモになります。新型と旧型と簡単にくくれないところがニクいですねぇ」
エドワードとハルトが話をしている間に、両者が舞台の上に上がる。
「それでは第一試合――開始ッ!」
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