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菓子

 ローズには、ハルトに言って作らせたシラヌイと同型の強化重装に乗ってもらっている。

 

 その名は『アリアケ』。

 機動鎧よりかは性能が若干落ちるが、旧機体の分、作るのもそこまで難しくなかった。


 幸いローズも僕と同じく小柄な子だったから、シラヌイの設計図がそのまま流用できたのも大きい。

 だがやはり一番大きいのは、レッドオーガの素材がちょうどもうワンセット分余っていたことだろう。


 シラヌイは真っ赤な機体なのに対し、アリアケは青い機体だ。


 戦場に咲く薔薇という異名的にはローズがシラヌイを使った方がいいのだろうが、タケルの操作感がズレてしまわぬようシラヌイは彼に預けたままだ。


 新たに機動鎧を使う際には、なんとかして二人にお似合いの機体を渡せたらと思っていた。

「殿下、お久しぶりです」

「ああ、ミヤヒさん。そうだね、最近はちょっと忙しくて、様子を見に来れなかったから」

「トッド殿下が誰より忙しいのはわかっておりますよ」


 うふふと口に手を当てて笑っているのは、タケルの母であるミヤヒだ。

 ゲーム世界であればトッドやエネシアの母であるアイリスに虐められ続けたせいで心を病み、臥せってしまうパターンが多いのだが、トッドが心配りをしたおかげで壮健そうで一安心だ。


 それどころかトッドが知っている彼女より、かなり若く見える。

 本当に三十代後半なのか、ちょっと怪しく思えてくるほどだ。


「どうぞ」


 スッとお茶を入れてくれる。

 飲んでみると、前世の記憶の蘇る緑茶だった。


 使用人はいるのだが、来客をもてなす時には自分が手ずから用意をするのがアキツシマ流ということらしい。


「美味しいよ、結構なお点前でって言うんだっけ?」

「ただ煎茶を入れただけですので、必要ありませんよ。よろしければ、こちらも」


 ミヤヒが差し出してきたのは、餡で作った和菓子。

 キレイなピンク色のお花で、見ているだけでかわいらしい。


 口に含むと、餡がほろほろと溶けていく。

 前世ではお祝い事の時にしか食べられなかった、一個五百円近くする高級な和菓子を思い出させる味わいだった。


「お口に合えばよろしいのですが……」

「うん、美味しい。僕、あんこ好きなんだよね。餡団子とかも好きでさ」

「みんなで作ったんですよ。ちなみに今のは私作です」

「へぇ、ミヤヒさんはお菓子作りもできるんですね」

「よろしければこちらも食べてみてください」


 そう言ってミヤヒが差し出してきたのは、なんだかぐちゃっとしたお花なのかヘドロなのかわからないラインの見た目をした菓子だった。


 見た目には目をつぶって食べれば、当たり前だが使っている素材は一緒なので味は同じだ。 だが不思議と食べた後の満足感が違う。

 食事は舌で味わうだけではなく目も楽しむという前世で聞いた言葉を思い出しながら、トッドは和菓子を平らげた。


「ローズは迷惑をかけてはいませんか?」

「ええ、子供の活発さ程度は迷惑のうちには入りませんもの」


 新しく娘ができたみたいで嬉しいです。

 マイヤさんのおかげで、毎日ハプニングが起きて楽しいですわ、とミヤヒは笑う。


 彼女の言葉に少しだけ冷や汗をかきながらも、楽しいならそれでいいかと思い直す。


 ――現在ローズ一家は、ミヤヒ専属の侍女と使用人、そしてメイド見習いということで宮廷で雇うことになっている。


 他国の貴族家の人間を雇っているのは結構マズかったりするのだが、バレなければ何も問題はない。


 余所から連れてきた得体の知れない人間を側室の使用人にするのに強い反発があるかと思っていたが、そちらの方は問題なかった。


 未だ古くさい貴族家の多いリィンスガヤ貴族は、余所者であるアキツシマ人であるミヤヒ達に対しては非常に冷たい。

 リィン王国の末裔以外を煙たがる彼らからすると、アキツシマ人は一等低い人種と見ているのだ。


(そっちの意識改革はまだ手がつけられてない……機動鎧がしっかりと実績を残したら、ハルトの功績大としてリィンスガヤ貴族として叙爵をするつもりだから、そこから徐々に進められたらって感じかな)


 トッドはまた新たなやるべきことが出てきたことに苦笑しながら、目の前で繰り広げられている戦闘に意識を向ける。


 作中最強機動士となるタケルとローズ。

 両者の戦いは、既に未成人の少年少女のものとは思えぬほどに、高次元の領域へと達しつつあった――。

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