表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/92

世界


 そこはローズが暮らしてきた世界とは、根本とは違う何かだった。

 全てが色鮮やかで、ピカピカと輝いていて……そして喜びに包まれている。


「わあっ、何あれ!」


「すごい、甘くて美味しい!」


「こんなに切れ味の良い武器があるの!?」


 ローズが歩いて辿り着く先々で、彼女は色々な物に触れた。

 見たことのない景色、食べたことのない甘味、使ってみたいと思えるような鋭い刃物。

 色々な物を物色してはあれは何、これは何とカルラに尋ね、カルラは苦笑いしながらそれに答える。

 マイヤは後ろから二人の様子を見守っていた。

 彼女達の様子は傍から見れば、完全におしゃまな妹とそれに振り回される兄、そしてそれを優しく見つめる母親だった。


(まあ、そんな単純な関係じゃないけれど)


 ローズは後ろにいて、妙に慣れた様子のマイヤを見てから、ふんっとそっぽを向く。

 マイヤは以前はこちら側で暮らしていたからだろう、ローズほど感慨を受けている様子はない。


 ローズは思った。

 これが掃き溜めのようなスラムとは違う、この世界本来の姿なのだと。


 彼女は道行く人々の表情を見る。

 無論、悲劇が転がっていないわけではなさそうだ。

 ところどころに物乞いがおり、小規模ながらスラムのようなものも存在していた。

 けれど大勢の人が、明るい顔をしている。


 そして世界そのものが殺伐としていない。

 生き馬の目を抜くような、目が血走った人がいないのだ。


 ローズはスラムに暮らしている間、言われていた範囲から外に出ることはなかった。

 そんなことをすればどんな目に遭うことになるかを、兄から耳にたこができるほどに聞かされていたからだ。


 だから彼女にとって、世界とは窮屈なものだった。

 そして自分を縛る鎖がなくなったその瞬間、世界は彼女を祝福してくれた。


 一度世界の裏側で暮らしてきた経験のあるローズだからこそ、こう思った。


(私はこっちの世界で、光の差す、表の世界で生きていきたい)


 ローズは強く、そう思った。


 そのためならば、どんなことでもやろうと思えた。

 たとえ――自らの身体を売るようなことになったとしても。

 一度光を知ったからこそ、闇のわだかまるあの場所には、二度とは戻りたくなかったからだ。


 ローズは感情が表に出やすいタイプだった。

 道中スラムを見る度に彼女が浮かべていた表情を見て、カルラも色々と察したのだろう。


「もしこの仕事が上手くいくことになれば、俺もローズも母さんも、もう食いっぱぐれることはなくなる。さっきの甘い氷菓だって、たまに食べられるようになるはずさ」

「ホントッ!?」

「ああ、お兄ちゃんは嘘はつかない」


 その言葉を信じ、ローズはるんるん気分で旅を続ける。

 時に窓から半身を飛び出させながらハミングをしたり、幌の上で寝転んで眠ったりすることしばし。


 リィンフェルト最北の街ラーヒムへと辿り着いた時に、ローズはなんとなく兄の目的を察した。


 恐らく自分の兄はリィンフェルトを抜け出し、リィンスガヤへと向かうつもりなのだろう……と。

 そしてその予想を裏付けるように、ラーヒムでローズはとある人物と出会った。


 そこにいたのは……。


「どうも、初めまして。僕の名前はトッド。君達にとある仕事を頼みたくてねその成功の暁には――君達家族の面倒をリィンスガヤが見ることを誓うよ」


 未だ成人しているようには見えない、カルラよりも幼い一人の少年だった――。


【しんこからのお願い】


この小説を読んで


「面白い!」

「続きが気になる!」

「応援してるよ!」


と少しでも思ったら、↓の★★★★★を押して応援してくれると嬉しいです!


あなたの応援が、しんこの更新の原動力になります!

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ