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リィンフェルトへ


「ふむ……」


 ライエンバッハが剣を薙ごうとし、ピタリと止める。

 よく観察すれば突けるだけの隙を見つけられるトッドの構え。

 それが攻撃を誘うために敢えて作ったものと看破した彼は、即座に前に出てそのまま前に出る。


 トッドはそうなることを見越していたのか、ライエンバッハ同様前に出た。

 剣の間合いを過ぎた二機は、互いに肩をいからせてその身体をぶつけ合う。

 機動鎧の戦いは、剣だけに留まらない。

 ゼロ距離でのぶつかり合いや取っ組み合いの技術もまた、機動鎧同士の戦いでは必須とされている。


 ライエンバッハのオニワカが剣を腰に提げた鞘へと収め、前に出る。

 そこから組み打ちの体勢に入った。

 助走をつけることなく、その運動性能の高さを利用してその場から勢いのついた膝蹴りを放つ。


「なんのっ!」


 トッドは即座に重心を下げることでそれに対応。

 腕を十字にクロスさせることで完全に受け止める。


 勢いが殺され、ライエンバッハが反動を利用して着地しようとするタイミング。

 その一瞬の隙を逃さずに、抜刀する。

 ムラクモが握る大剣は、その名を『ヤツシロ』という。


 機動鎧であれば、大剣を片手で難なく扱い、速度を出すこともできる。

 トッドは居合い抜きを放った。

 右手のスナップを利かせながら迫る刃に対してライエンバッハが出した答えは、くるりと身体を半回転させることだった。

 身体を捻りながら彼は右手を後ろに回し、鞘からすらりと抜いた剣でそれを受ける。

 空中での後ろ出としっかりと踏み込みの利いた居合いでは、さすがに後者に分がある。


 オニワカは後方に大きく吹っ飛んでいった。

 けれどトッドはそれに対し即座に追撃に移ろうとはしない。

 更にダメージを与えようとデタラメに放つ剣では、ライエンバッハに通じないとわかっているからだ。

 彼は荒れた呼吸を整え、剣を正眼に構えながらしっかりと前を見据える。


 もうもうと立ち上っていた煙が収まると、そこにはしっかりとカウンターが放てるようにわずかに腰を落とすライエンバッハの姿がある。

 トッドが手を出さないのは、結果的には正解だった形だ。

 生半な追撃は、ライエンバッハには通じない。


「――見事、よく判断しました」

「そりゃあ、何度もやられてるから……ねっ!」


 どちらかが言い出さずとも、二機が前に出る。

 まるで短剣を取り扱うかのように軽々と、大剣同士がぶつかり合う。

 鋼鉄の塊同士がぶつかり合い、鈍い音が鳴る。

 火花が散り、まるで鍛冶場のような重低音が辺りの空気を震わせた。


 剣光がきらめき、剣閃が白銀の線となって白い尾を引いてゆく。

 自らの身体の感覚を元にしている機動鎧は、元々限界まで身体を絞り磨き上げた二人の能力を限界を超えて引き出してくれる。

 身体の延長線上として、まるで元から己の一部であったかのような一体感を感じることのできる武装は、二人の極限まで高めた身体能力を昇華させ、更に高い次元へと引き上げる。


 消えたかと思えば背後に回り。

 剣をぶつけ合った音が響いたかと思えば、次の斬撃が互いの機体に傷をつけている。

 岩石を割る拳打が互いの身体を強かに打ち付け合いのけぞったかと思えば、まるで何事もなかったかのように拳がお互いの顔面を打ち抜いている。


 傍から見れば目で追うのがやっとの高速戦闘。

 最初は慣れずに身体がぶっ飛ぶことも多かったこの機体の操作にも、ようやく慣れてきた。

 以前はシラヌイと魔道甲冑だからこそ五分だった模擬戦も、今では同じ機動鎧を身につけても五分に近いところまで持って行けるようになっている。

 現在のトッド達の戦闘能力は、未だ機動鎧が開発されていないこの世界では隔絶されたものになっているはずだ。


(これだけ使えるようになれば――そろそろ行ってもいい、かな?)


 今日もまた引き分けに終わった戦いでかいた汗を拭いながら、トッドはまた国王に認可を取らずに独自の行動を取る決意を固める。

 機動鎧の生産は、最近ようやく機動に乗ってきた。

 それならば次に行うのは――機動士としての才能に溢れる者達のスカウトだ。


「よし、ライ、またお出かけしよう」

「また……ですか、それでは今度は、いったいどこに?」


 どこか辟易した様子のライエンバッハ。

 だがその苦笑が本心からの物ではないのは、長年の付き合いをしているトッドにはすぐにわかった。

 自分に付き従ってくれる彼に対して、トッドはものすごくいい笑顔をしながら、


「行くのは――リィンフェルト。一人、気になっている女の子がいてね」


 覚醒タケルと並ぶ、作中最強機動士。

 その総合評価はSランクとされる女性――ローズ・フォン・ヴィンセント。

 敵国の貴族家の人間である彼女をなんとかしてリィンスガヤに引き入れようと、トッドは悪い笑顔を浮かべながら、策を練り始めるのだった――。

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