また二人で
新たに就任した筆頭宮廷魔導師であるソエル・フォン・グランツの指導の下、宮廷魔導師の面子は大きく様変わりする形となった。
戦場の花形であった火魔導師の数が大きく減り、それに変えて土魔導師と風魔導師が大きく数を増やすことになったのである。
そしてトッドはここで一計を案じることにした。
宮廷魔導師の数がどのように変動したかという情報を、隠すことなく公開したのである。
当然その内容は、国内外の魔導師達や為政者達が知るところとなる。
向こうでは穀潰しなどと言われ碌な扱いを受けてこなかった土と風の魔導師は、リィンスガヤでは好待遇で迎えられるらしいと聞き、流入してくる形となった。
そして逆にリィンスガヤで冷や飯を食らうことになった火魔導師達は、こぞって国を出奔し、隣国リィンフェルトや海を渡った先にあるアキツシマへと向かっていくことになる。
結果としてリィンスガヤにおいて、各種兵装の作成にかかる速度が劇的に向上することとなった。
多くが国から抱えられることとなった土と風の魔導師達は、かつてないほど自分達が必要とされている現状に発奮し、魔物の素材が供給不足に陥るほどの頑張りを見せた。
金属の精錬が追いつかないことと各員に兵装を行き渡らせることを重視しているため、強化兵装が重点的に生産される形となった。
ドワーフ達によってもたらされた耐熱レンガによる製錬技術の進化により、鋼材を始めとする金属加工も盛んになり始めている。
以前は少量しか生産することのできなかったミスリルを安定して生産することができるようになった。
魔導師が増えたことによる魔物素材の加工量の増加との相乗効果により、機動鎧の生産量が増えるのもそう遠い話ではなくなるはずだ。
(恐らく、リィンスガヤにおいて魔法兵と呼ばれる兵科はなくなってしまうことになると思う。けれどこの結果が得られたのなら、十分にお釣りはくるはずだ)
情報を敢えてばらまくことによって大量の魔導師を獲得したトッドはほくそ笑んだ。
そして彼は今日も、機動鎧を使えるようになるべく訓練に勤しむのだった――。
技術発展により、機動鎧は日進月歩に進化を続けていた。
既に一番最初に開発した二体の機動鎧、ムラクモと『オニワカ』は型としては旧式に分類されるまでになっている(ちなみにこの二機の機体名がトッドが使っていたシラヌイの可変分離式大剣と同じなのは偶然ではない。シラヌイに強い愛着を持っていたトッドが、二機の名を二振りの剣になぞらえて名付けたのだ)。
現在の最新式の機動鎧は、型式としては三つ目となる参式機動鎧の『サザンカ』となっている。
今では使われる機会の減ってきたトッド達のかつての研究所となっていた土蔵。
防諜上の観点からこの場所が使われることは少なくなっていたが、トッド達は今でもこの場を定期的に使っていた。
無論行うのは研究や性能試験でもなく、実戦形式の模擬戦である。
王宮に近くある程度暴れても問題ないくらいの広さがあるこの場所は、機動鎧を使った戦闘をするのにちょうどよい広さなのだ。
「はあっ!」
「ぬんっ!」
ゴウンッ!
剣と剣のぶつかり合う音とは思えぬような低い音が断続的に聞こえてくる。
魔物の筋繊維を用い、そこに魔力を流すことで使うことが可能となる魔物の人外の膂力。
そこに付与魔法によって強化の魔法が施されることによって強化は二重となり、人体では到底不可能なほどの鋼板を身につけてもなお、高速で移動することが可能となる。
機動鎧の力は、他の追随を許さない。
何百キロにもなる鉄とミスリルの合金の全身鎧を身につけている鎧騎士同士が、その手に掲げる大剣をぶつけ合う。
その全長は約三メートルほど。
それほどの巨躯が動いているというのに、その速度は驚くほどに速い。
少しでも目をそらせば見失うほどの速度で、二機の機動鎧がぶつかり合う。
それは既に旧機体となりつつある、ムラクモとオニワカだった。
ムラクモを操るのがトッドであり、オニワカを操るのはライエンバッハだ。
今では機動鎧はリィンスガヤの未来の主要兵器となることが決まっており、臣籍降下の決まっているトッドが使うためには色々と制限がついてしまっている。
機動鎧に乗り込んで戦うために努力を続けてきたというのに、その結果として機動鎧に乗れなくなるというのはあまりに皮肉が効き過ぎていた。
そのためここで行われる特訓は日々苛烈さを増していた。
戦闘後に機体の整備をしなければならないハルトが思わず悲鳴をあげてしまうほどに。
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