差
トッドが適当に濁しながら説明を行いながら進んでいると、すぐにエルフのエリート部隊達と合流することになった。
「私の名前はシリル=ダールトン=ナーメ――」
その中でもリーダーの人物は、その名をエロイフというらしい。
フルネームは相変わらず長かったが、例の如くトッドは聞き流していた。
エロイフの髪の色は、まるで飴細工のような光沢のある緑色だった。
どうやらエルフの方も、人間同様に髪色は色々あるようだ。
エロイフを含めて、エルフの戦士は合わせて三十人ほどだった。
エルフは長命であることと引き換えになっているかのように、出生率が低く、人口の変動は非常にゆるやかだ。
大森林の中にある隠れ里に住んでいるという時点で、エルフ達の里の都市化や人口集中も進んでいない。
ポツポツと里が点在するような形であり、それぞれの里の防衛のためにある程度戦士達の数が割かれているはずだ。
その中でも三十人もの戦士を融通してくれたことは、恐らく彼らなりの誠意というやつなのだろう。
「アビスの湧いてくるポイントの特定は済んでいる。そう遠くない、すぐに向かおう」
アビスは、トッドが知っている通りの見た目をしていた。
「な、なんと面妖な……」
「なるほど、形状としてはミミックスライムに少し似ているな」
ライエンバッハは面食らった顔で、トティラは興味深げにアビス達の様子を見つめている。
ゴブリンのような見た目をしたものから、獣型魔物であるハウンドドッグに非常によく似たものまで。
実に雑多でまとまりのない魔物の形をした黒い何かがうごめいている。
その肉体はスライムのような液体のようでドロドロとしており、よく見れば向こう側の景色が少しだけ透けているのがわかる。
アビス達の数は数十ほど。
その様子を見て、エロイフ達が顔をしかめているのがわかる。
アビス達の被害に悩まされてきた彼らからすると、思うところがあるのだろう。
だがそんな事情はトッドには関係ない。
アビス討伐程度に時間をかけてはいられない。
一刻も早く国へ戻り、機動鎧の開発を急がなくてはならないのだから。
「僕がシラヌイに乗って出る! 今のアビス達はそれほど強くない、ちゃっちゃと片付けるよ!」
トッドが集団から抜け出し、一歩前に出た。
彼に追いつくようにライエンバッハが併走し、その少し後ろからトティラがついてくる。
トッド達が前に出たのを見てランドル達は慌てたように飛び出す。
そしてそれと同時に、エロイフ達エルフ部隊も走り出した。
「――な、なんという速さだっ!」
エルフ達は火魔法第二階梯を修めているため、身体能力を強化することが可能になっている。
けれど今の彼らをして、トッド達に追いつくことはできなかった。
ほとんど同じタイミングで走り出したはずの強化兵装を着込んだ者達にもどんどんと距離を離されてしまっている。
「く、クソッ、なぜこれほどの差がっ! 外の世界で、いったい何が起こっているというのだっ!」
エルフ達の中でも精鋭である彼らは、自分達の持つ魔法技術に自信を持っていた。
人間の三倍もある寿命を持つ彼らは皆が、百年以上の長き時間を魔法の修練に捧げてきた生粋の魔法の専門家達だ。
魔法を使うこともできないような人間を相手に追いつけもしない。
それは彼らの持っていたプライドを強く傷つけた。
だが彼らは、長き時を生きるエリート。
己の感情で、その眼を曇らせることはない。
人間達との交流を長いこと絶ってきた彼らは、トッド達の力を見て理解せざるを得なかった。
今、外の世界では何か物凄い変化が起こっているのだと。
そしてエルフはこのままでは、その流れから置いていかれてしまうことになるのだと。
エルフ達がその背中を見ていることしかできない状況から、戦端は開かれる。
彼らに自分達の持つ力を見せつけるためにも、トッドは最初からフルスロットルで戦いに挑む――。
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