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団らん


「それじゃあどんな話があったか聞かせて下さい、兄上」


 男子三日会わざれば刮目して見よ。

 トッドは前世にあったそんな言葉を思い出しながら、改めてしげしげと弟のことを眺めていた。


 エドワードはまだ十になったばかりなのに、その美貌は花のように美しい。


 元から線が細いのと、髪を肩の辺りまで伸ばしているのが相まって、一見すると女の子にすら見えてしまう。


 今のエドワードが女装をすれば、きっといけない趣味に目覚める男達が多数生まれてしまうことだろう。


「そうそう、戦いのことについて聞かせてよ、トッド兄様!」


 タケルの方は、どちらかと言えば年相応だ。

 年の割には成熟して見えるが、エドワードと比較するとどうしても子供っぽさが残っている。


 既に山の民平定の話は王宮中に広がっているらしく、タケルはトッドに会った時に「聞かせて聞かせて!」とせがんできたのだ。


 ご飯の時にね、と言い含めたため、今のタケルはいったいどれほど大スペクタクルなバトルが繰り広げられたのか知りたくてうずうずしていた。

 まるで猫耳と尻尾が生えているかのような好奇心旺盛さだ。


「戦いのことより、どんなカッコいい人が居たかを教えてよ、トッドお兄様!」


 エネシアは最近少しおしゃまになってきていて、よく侍女に化粧品を持ってきてもらっては自分でメイクをしたりしている。

 もっともその腕については……ノーコメントを貫く所存である。


 今日は侍女に手伝ってもらったせいか、大分ナチュラルな感じに仕上がっている。

 それでも年の割には濃いと思うのだが、大人びたい彼女の気持ちもわかるので、トッドは優しく笑うに留めていた。




『ねえねえ、どうかなお兄様、似合う?』


 そう口にした白塗りの化け物がエネシアだということに気付かなかったのなら、トッドは思わずシラヌイに飛び乗りそうになっていた。

 それだけ言えば、エネシアが自分でした化粧がどれほどのものだったのか……察することができるだろう。



「わ、私は……けほっ、けほっ」

「アナスタシア、大丈夫かい?」


 次女のアナスタシアは、元気いっぱいなエネシアとは対照的だ。

 エネシアを太陽とするのなら、アナスタシアは月。


 さらさらとした長い髪をしているアナスタシアは、風に吹かれれば飛んでいってしまいそうな、深窓の令嬢といった感じだ。


 彼女は生まれつき身体が弱く、よく咳をする。

 トッドは、恐らくアナスタシアは気管支がかなり弱く、気管支ぜんそくを患っていると考えていた。

 前世で彼の祖母が罹っていた気管支ぜんそくと、アナスタシアの症状がよく似ていたからだ。


 今回山の民の征伐を終えて、トッドが次に向かうのはエルフ達の住まう森の里だ。


 そこに行く一番の目的は、もちろん機動鎧製作のために必要な熟練の土魔導師のスカウト。

 けれどトッドはそれに加え、アナスタシアの病状を改善できるようなエルフの秘薬を、なんとかして手に入れるつもりであった。


 エルフの秘薬は、エルフ達に関連するイベントでのみ現れる限定アイテムだ。

 HPと状態異常を全て全回復させるぶっ壊れ性能を持っており、明らかにゲームバランスを考えられて作られていない効果をしている。


 本来ならエルフの里の外でアイテムを使うことはできず、イベントの中でしか使用することはできない。

 けれどここは『アウグストゥス ~至尊の玉座~』によく似てはいても、細部には異なる点も多い異世界。


 もしエルフの秘薬さえ持ち出すことができれば……水魔法の回復でも治すことのできなかったアナスタシアの持病を、根治させてやることができるかもしれない。


 数年後、十数年後の未来のために行動する。

 言葉にすれば崇高に聞こえてくるが、人間とは即物的な生き物だ。


 どうなるかもわからない未来のために、そうモチベーションを維持できるものではない。


 だがかわいいかわいい妹であるアナスタシアを治すという目的のためになら……トッドはいくらでも頑張れる。


 誰かが死なないように、誰かを助けるために。

 いつだってトッドの行動原理は、そういった単純なものばかりだ。


 トッドは自分がこれから何をするつもりか、などということはまったくおくびにも出さず、期待に目を輝かせる弟妹達の視線を受けて、その手を大きく拡げた。


「よし、それじゃあお兄ちゃんが出掛けたところから話していこうかな。アナスタシアはさっき何を言いかけてたんだい?」

「わ、私はリィンスガヤにとって意味のある何かがあったなら、知りたいな、と……」

「オッケーわかった、問題ない。それじゃあエドワードもタケルも、エネシアにアナスタシアまで、四人全員が満足できるようにお兄ちゃん張り切っちゃうぞ」


 そしてトッドは四人に、今回の遠征についての話を、臨場感たっぷりに話したのだった――。



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