――― エピローグ ―――
ナターシャはアヤメの心臓を手にし、白い扉を高くと中から女の声が
「どうぞ」
と返ってくる。ゆっくりと扉を開けると、その向こうも白い空間が広がっていた。ここはオクトにある大学。その研究室だった。
「お探しのもの……手に入れましたよ」
ナターシャの声に研究室の奥でデスクに向かっていた女が振り返る。
「待っていました」
女は立ち上がると、ナターシャの方へ歩み寄り、それを手に取った。
「嗚呼……ついに揃ったのね」
最愛のものに触れたように、女が恍惚の表情を浮かべると、ナターシャも笑みを浮かべる。
「では、約束通り……目的を達成された後は、それを私たちにいただけますか?」
「ええ、もちろんです。あの女の命を奪い、魔研大を破壊したら……私は何もいりませんから」
「他にも必要なものがあれば、いつでも仰ってくださいね」
「ありがとう」
女はアヤメの心臓を大事そうに胸に抱き、デスクに戻った。アヤメの心臓をデスクの上に置くがその横にはちょうど人の頭の程度の茶色い不気味な塊が。植物のようにも見えるが、質感は鉱物のようでもある。
「アヤメ頭にアヤメの心臓。ついに揃ったのね。これで……女神アイリスの力を復元できる」
女は喜びに満ちていた。復讐という喜びに。すると、再び扉が叩かれて振り返る。だが、そこにはナターシャはいない。どうらや去ってしまったらしい。
「どうぞ」
次の来客に声をかけると、彼女の生徒が顔を出した。
「イノハラ先生。娘さんを名乗る女の子が訪ねてきましたけど、心当たりありますか?」
「ああ、もうそんな時間だったの。ごめんなさい、娘で間違いないから通してあげて」
「分かりました。可愛い娘さんですね」
「そう、自慢の娘なの。私とあの人の……可愛い娘」
「あら、夫婦仲もいいのですね」
生徒が去ってから、改めて揃った禁断技術を愛でる。タイミングよく、最後のピースもやってこようとしている。やっと復讐を果たせるのだ。すべてを火の海に。楽しみでたまらない。
「お母さん」
きた。最後のピースが。女は振り返り、笑顔を見せた。
「待っていたわよ、芹奈」
再びオクトの地に火が上がろうとしていた。復讐の二字が、真っ赤に燃えて、すべてを埋め尽くそうとしている。だが、この国を守るものたちは誰一人としてそれに気付いていなかった。
ここまで本当にありがとうございました。
現在、ストックを出し切り、続きを書く予定もない状態です。
続きを望む声をたくさんいただけたら、再開したいと思いますので
烏滸がましいお願いではありますが
これまでずっと読んできたけど、コメントしたことはなかった
といった人がいらっしゃたら、何かしら感想をいただけたら嬉しいです。
もしくは、以下の別作品に目を通していただけたら
■魔女たちの終末
https://book1.adouzi.eu.org/n0232ky/
■格闘家、悪役令嬢に転生する
https://book1.adouzi.eu.org/n6812lh/
■トウコの魔石工房
https://book1.adouzi.eu.org/n8487kd/
それでは、またどこかでお会いできる日を!




