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【炎上配信】

「はい、皆さんこんばんは。セレーナちゃんねるの毎日生配信の時間です!」


セレーナ様はスマホに向かって笑顔を浮かべる。


「今日はですね、素敵なゲストにお越しいただきました。何とですね、皆さん……アミレーン出身の勇者、神崎誠くんです! さぁ、神崎くん。視聴者の皆さんに自己紹介をお願いします」


「ど、どうも。神崎誠です」


緊張に震えながら、スマホに向かって挨拶するが、見えない人たちに向かって話しかけるって、何か変な気持ちだなぁ。


セレーナ様のお願い。それは、フィオナやハナちゃんとは違って、彼女の生配信にゲストとして出演することだったのだ。このスマホの向こうでたくさんの人が見ていると思うと、恥ずかしくて仕方がないのだが、堅くなる僕の横で、セレーナ様が慣れた調子で進行する。


「神崎くんはですね、第二次オクト・アッシア戦争で大活躍した勇者の一人で、あのセルゲイ・アルバロノドフも倒しているんです。そうですよね?」


「た、倒したというか、まぁ、タイミングが重なったというか、何というか……」


スマホの向こうで配信を見守るチャンネルスタッフの女性たちの視線も気になってしまう。何だか歓迎されていない雰囲気があるのだ。その理由はすぐに分かった。


「わっ、何だかコメントが凄い勢いで流れてますね。どれどれ」


どうやら視聴者からの反応があったらしく、セレーナ様がコメント確認用と思われる、目の前のタブレットを覗き込んだ。僕にもその画面が見えるので、どんな声が寄せられているのか、つい目にしてしまったのだが……。



『はぁ? どこのどいつだよ』

『何かセレーナ様と距離近くない? 気持ち悪いんだけど』

『まさかセレーナ様、こんな冴えないやつがタイプ??』

『セレーナ様に近付くな。消えろ消えろ消えろ消えろ』

『チーズ牛丼好きそう』



……これ、めちゃくちゃ叩かれてない??

すると、見守っていたスタッフの女性の一人が「やっぱり、炎上したよ」と呟いた。


そ、そうか。スタッフの皆さんは、僕みたいな得体の知れない男が配信に出たら、こうなるって分かっていたから、あんな態度だったのか!


「どうしたのでしょうか。視聴者の皆さん、怒っているみたいですけど……」


しかし、当のセレーナ様は何が起こっているのか理解していないらしい。


「いやいや、セレーナ様。みんな悪い虫がついたんじゃないかって、怒っているんですよ」


ただ、セレーナ様のフォローをしたつもりだったのに、コメントの勢いがさらに増す。



『分かっているなら最初から出演するな』

『馴れ馴れしい感じが余計にムカつく』

『こういうタイプ、生理的に無理だわ』



その流れるスピードは視聴者の怒りを現しているようだ。どうしよう……謝った方が良いのか??


「あ、そういうことですね。なるほどなるほど」


セレーナ様は納得したように、手の平を拳で打つ。この炎上に対し、少しも臆していない様子だが……どう収めるつもりなんだ? それとも、ここで、今度こそ僕に……??


「皆さん、何度か説明させていただいてますが、私の将来のお相手は、女神セレッソの祝福を受けた男性と決めています。他の男性にそういった意味の好意を向けることはありませんよ」


そ、そうか。えーっと、つまりこれはお断りの模様を全世界に向かって配信された、ということだろうか。どれだけ大人数に見守られながらフラれたんだよ、僕は。


いやいや、そもそも……別に僕はセレーナ様に告白したわけでもないし! そもそも、僕が気になっている女の子が他にいるわけで……。


そんな言い訳を頭の中に浮かべ、自分を落ち着かせようとするが……。



『そりゃそうだよな』

『知ってた』

『セレーナ様がこんなモブ好きになるわけないから』

『どう見ても器じゃない。信者たち余裕なくて草』

『セレーナ様に手を出す勇気もなさそうだもんな』



などなどのコメントが流れ、炎上は一気に収まって行く。


……そうだよな。誰がどう見ても、僕みたいなやつがセレーナ様と釣り合うわけないし、本人も少しも意識してないようだし。激しく落ち込んだのは否定できないけど、炎上が収まったのなら何よりですよ……。


そこからは穏やかな配信が続いた。セレーナ様の進行に任せ、質問に答えていると、視聴者も僕と言う存在を受け入れてくれたのか、好意的なコメントも流れ始める。



『何気に凄い勇者じゃん!』

『ワクソーム城まで乗り込んだとか凄くね?』

『ジェノサイダーの弟子ってマジ??』

『皇との勇者決定戦を見てないにわか多すぎて草』

『SNSやってないの? フォローさせろや』



一時間もすると、セレーナ様は満足したのか配信を終了させた。


「神崎くん、お疲れ様でした。本当に楽しかったです」


配信前半に受けたショックが抜けておらず、僕は終始テンションが上がり切らなかったのだが、セレーナ様が満足なら何よりである。そして、彼女はこんなことを言った。


「どうか、これからも仲良くしてください。私、一緒にいてこんなに楽しい男性は初めてです!」


この発言、僕の鼻の下が伸びてしまったことは言うまでもないが、不運なことに配信の音声が切れていなかった、というスタッフ側のミスがあり、セレーナ様は再び大炎上してしまうのだった。

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