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【許してほしいなら】

フィオナの執務室に移動し、二人きりになったのだが、彼女はデスクに着席してから、パチパチとパソコンを操作する。すると、彼女の奥にある巨大なモニターに画像が表示された。


「昨日は忙しくて、ついついニュースをチェックし忘れたのだけど、朝から情報収集していたら、こんな記事を見つけたの」


「そ、そ、それは……」


フィオナが巨大モニターに映し出したのは、大手のニュースサイトから配信されている記事だった。タイトルはどでかく『大聖女セレーナ・アルマが、アミレーンの街で学生と逃避行!?』と書いてある。


もちろん画像付きの記事で、笑顔のセレーナ様と間抜けな調子で口を開いたままの僕が大きく映っているのだった。


「随分楽しそうね。二人で何をしていたわけ?」


「いや、その、僕は何もしてないのだけれど、セレーナ様が……」


「セレーナが何したのよ。あいつ、積極的に男と絡むタイプじゃないけど、向こうから誘ってきたと言いたいわけ??」


そ、そうなんだよ。

わざわざ、聖女様の方から学校に押しかけてきたんですよ、フィオナ様!!


「昨日も帰り際、二人で意味がありそうな視線を飛ばし合ったりしてさ! 何があったのか話しなさい! 私が研究所でパニックになっている間、何をしていたのよ!!」


お怒りの王女様を宥めるには、なかなかの時間を必要とした。しかし、ちゃんと時系列で何があって、どんな会話をしたのか説明すると、フィオナは渋々といった感じで矛を収めてくれるのだった。


「でも、これってどう見てもデートよね?」


「僕としては、そのつもりはなかったけど……」


「いえ、デートよ。やっぱり、許さない! 私だって誠とデートしたことないのに!」


そんなこと言われても……!!

それに、王女様が街中を僕みたいな男と歩いてたら、もっと大事になるんじゃないか??


「ねぇ、行こう! デート行こう!! 一緒に行ったら許すから!」


「一緒に出掛けるくらい、僕はいいけど……そういうの、国の偉い人とかは許してくれるのか?」


「……」


どうやら、フィオナにとっても痛いところだったらしい。しばらく黙って考えるフィオナだったが、何かよからぬことを思い付いたように、満面の笑みを浮かべる。


「じゃあ、デートは我慢するから、これだけ言ったら許してあげる」


「な、なんでしょうかお姫様……」


恐る恐る言うと、フィオナはわざわざ席を立ってから、僕の腕に絡みつきながら、小悪魔のような笑顔を浮かべて言うのだった。


「私の目を見ながら、好きって言ってくれたら許してあげる」




オクト城を出て、すぐに病院へ向かう。面会時間は限られているので、ハナちゃんに会えるのか微妙なところだったが、何とか間に合った。


「お兄さん、勇者でしょ? 少しくらい時間オーバーしても平気だから、ゆっくり話しておいで」


受付の人が勇者に肯定的な人だったおかげで、時間に余裕に余裕が生まれ、無事に病室へ入れた。ハナちゃんは僕を無視し続けたが、同じ病室のおばちゃんたちに見守られながら、僕は時系列で何があって、どんな会話をしたのか説明する。


二回目だったこともあり、一回目より情報が整理され、より分かりやすく説明できた気がした。すると、ハナちゃんがやっと口を開いてくれたのだった。


「皆さんに迷惑だから、場所を変えるぞ」


ハナちゃんがベッドから降りる。おばちゃんたちは残念そうに「え、ここで話しなよ」「そうだよ、気になっちゃうじゃない」と引き止めるが、ハナちゃんは何度も頭を下げながら、僕の手を引いて屋上まで移動した。


屋上はやや風が強い。二人でベンチに座り、赤く染まり始めたオクトの街並みを眺めていたが、ハナちゃんの方から、喋り出してくれた。


「悪かったな。本来ならその仕事、私が一緒に受けるはずだったのに」


「いやいや、ハナちゃんは何も悪くないよ! とにかく、傷もよくなっているみたいで安心した」


「でも、やっぱりムカつく……」


「えっ」


「……許してほしいか?」


「うん」


「……じゃあ、私の言うこと、一つだけ聞け」


「な、なんでしょうか綿谷先輩」


すると、ハナちゃんはチラチラを僕を見た後、視線を下に向けながら呟くように言うのだった。


「ワクソーム城で、私がぶっ倒れる前に言った言葉を、もう一回言えよ」


ん?? それってイワンを追うか追わないかで、言い合ったときのこと?


僕、何て言ったっけ。


……あっ! どさくさに紛れて言っちゃった、あれか!!


って言うか、それってさっきのフィオナと同じじゃないか!!


あたふたする僕に、ハナちゃんが視線を落としたまま確認してくる。


「忘れたわけじゃない、よな?」


「う、うん」


「許してほしいなら、早く言えよ!!」


ハナちゃんは恥ずかしそうに顔を真っ赤にして、両目を閉じてしまった。か、か、可愛い……!!


「あの、その……」


僕が口を開きかけると、目をつむりながら、体を縮こめたハナちゃんが、さらにこんな注文を加えるのだった。


「言うなら、手を握りながら、が……いい」

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― 新着の感想 ―
久々の更新キターーーーーー!と思ったら、すっかり三角、いや四角関係に… 誠の努力が実ったのはいいですが、精神的には大変そうですね。 頑張れ…!
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