【一仕事終えたと思ったら】
次の日、昼までたっぷり寝てから、スクールへ行った。朝から出たかったけど、疲労で起きれなかったのだ。
「おはよう、神崎くん。昨日は大丈夫だった?」
声をかけてくれたのは雨宮くんだ。
「雨宮くんが手伝ってくれなかったら、もっと大事になっていたよ。本当にありがとう」
「そうなの? 何にせよ、役に立ったならよかった」
久しぶりに学生らしい時間を過ごし、何事もなく放課後を迎える。この後は、ハナちゃんのお見舞いに行き、今度こそ誤解を解くつもりだったのだが……。
「あの、先輩!」
下駄箱で靴を履き替えていると、今度は後輩の芹奈ちゃんに声をかけられた。
「芹奈ちゃんも帰り?」
「はい。でも、その、えっと……先輩はこの後、予定ありますか?」
「病院に行くつもりだよ」
「病院?? どこか悪いんですか?」
「いやいや、僕は元気だよ。お見舞い。ハナちゃんがワクソームで怪我したから」
「ハナちゃんって……綿谷先輩、ですよね?」
「そうだよ」
芹奈ちゃんは、なぜか唇を嚙むように口を閉ざしてしまう。もしかして、何か悩み事だろうか。
「えっと、少しなら時間あるから……」
話があるなら聞こうか、と言おうとしたのだが……。
バタバタバタバタッ!!
変な音が聞こえて、僕も芹奈ちゃんもその正体を探し、辺りを見回した。
「なんだろう、このうるさい音。最近聞いた気がするけど……」
「おい、神崎!」
すると、クラスメイトの一人が通りかかり、僕に声をかけてきた。
「また校庭にヘリコプターが降りてきたぞ!? お前を迎えに来たんじゃないのか??」
それは、クラスメイトの言う通りだった。
『神崎誠! 神崎誠は校庭に出てきなさい!!』
拡声器を通したフィオナの声。ま、また来たのか??
「ごめん、芹奈ちゃん。呼ばれてるみたいだから行くね! 話があるなら、また聞くから!」
「は、はい……」
若干の後ろめたさを感じながら、僕は校庭に出ると、ヘリがけたたましい音を立てながら、校庭の上に浮遊していた。こんなに急ぎで迎えにくるってことは、また事件に違いない。
「また事件?? 何があったの!?」
ヘリに乗り込みながら、勇者としてのスイッチを入れる僕だったが、どこか白けたような表情でフィオナは言うのだった。
「そうじゃないけど、ちょっと話があったの」
「……」
何だよ、この状況はどう考えても緊急事態じゃないか! 急いで損した気分だよ!
「急ぎじゃないなら、ヘリなんて使うなよ! また事件が起こったのかと思っちゃったじゃないか!」
「だって仕方ないでしょ、早く会いたかったんだから!」
これは完全に逆ギレというやつだが、僕は何も言い返せなかった。なぜなら、普段きつい性格のフィオナがこうして甘えてくると、めちゃくちゃ可愛く思えてしまうからだ。実際、ちょっと不機嫌そうな顔をしながら、僕の制服の裾を掴んで離さないところを見ると、つい怒る気なんてなくなってしまうのである。
オクト城へ移動しつつ、フィオナは僕たちが病院を出た後に起こったことを話してくれた。
「あれから、佐山修斗の治療が行われたそうだけど、呪いの侵攻が酷くてどうにもできなかった。セレーナの浄化を受けても、あの状態だったのだから、私たちが動き出す前から手遅れだったのでしょうね」
「……ナターシャは何者なんだろう」
「世界各地で謎の勢力による、目的不明なテロ行為らしきものが発生しているの。たぶん、ナターシャもその一人だと思う。それについては調査中。もしかしたら、また現れるかもしれないわね」
他にも、ポツポツと零れ話を聞けたのだが、オクト城に到着するまでに、ネタは出し切ってしまったようだ。
「やっぱり、ヘリを出すほどじゃなかったように思えるけど……」
僕が呟くと、なぜかフィオナにギロリと音を立てるように睨まれてしまう。
「勇者、神崎誠。話はこれからですよ?」
なぜか、しっかりとした王女様の口調で、そんなことを言われてしまうのだった。
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