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【女二人、意地の張り合い】

「覚悟なさい、大聖女セレーナ・アルマ! 封印執行!」


リザのブレイブアーマーは……いや、エグゼアーマーは僕と同じ白のカラーリングだ。ただ、僕よりも潔癖すぎるほどの純白、という印象があった。そして、その手には二本の短剣が。しかも、握りの先が長い鎖でつながっている。あれを何に使うか分からないが、注意すべき点だろう。


「女神セレッソの意を理解しない愚か者は、返り討ちです!」


それに対し、セレーナ様は銀のブレイブアーマーに身の丈と同じほどのロッドを構える。


「おりゃあああぁぁぁーーー!!」


真っ直ぐ向かってくるリザを、宣言通り打ち返さんと、セレーナ様はロッドを振り回す。リザはハードルを飛び越えるように跳躍してやり過ごすと、セレーナ様の頭上へ短剣を落とした。が、セレーナ様は首を傾け、それを躱しながら、横に振ったばかりのロッドを、今度は振り上げ、リザを捉える。


「この馬鹿力!!」


ロッドの一撃で宙に投げ出されたリザだが、不安定な体勢から短剣を投げつける。手応えを感じていただけに、それは不意を突かれるような一撃だったのか、刃はセレーナ様の肩口を切り裂き、ブレイブアーマーが火花を散らせた。


「そんなせこせこした攻撃、効きません!!」


落下してくるリザを追撃するべく、セレーナ様はロッドを突き出す。が、リザは空中で巧みに姿勢を変えて、それを躱すとセレーナ様の傍らに着地した。


「覚悟!」


セレーナ様の横腹を切り裂こうとする短剣が光るが、ロッドがそれを防ぐ。


「軽い!」


セレーナ様の回し蹴りは、爆発を起こしたかのように、リザを吹き飛ばすが、同時に短剣が獲物に噛みつこうとする蛇の牙のように襲い掛かってきた。いつの間にか、手元に戻っていた短剣を再び投げつけてきたらしい。セレーナ様はそれもロッドで叩き潰して見せるが、短剣から伸びる鎖が、これもまた蛇のように巻き付いた。


「無駄に長いその武器、こちらで預からせていただきます」


リザは鎖に巻き付いたロッドを引っ張り、セレーナ様から奪い取るつもりらしい。しかし、セレーナ様はブレイブアーマーの下で笑みを浮かべたようだった。


「私と力比べをするつもりですか?」


すると、錯覚だろうか。セレーナ様の両腕が膨らんだように見えた。大木を持ち上げるような手応えだったのだろうか。リザも動揺しているように見えた。


「えいっ!!」


セレーナ様が可愛らしい掛け声と共に、ぐっとロッドを引き寄せると、リザは前のめりになり、たたらを踏む。今まで、リザはこの戦法で敵から武器を取り上げてきたのだろう。だが、セレーナ様の怪力はこれまでの相手とは各段に違うものだったらしい。


「腕力だけが戦いではありません……!」


呟くと、リザが親指で短剣の握りの一部を強く押し込んだ。すると、短剣をつないでいた鎖が切断される。力の均衡が瞬時に失われた影響で、セレーナ様がバランスを崩す。


それを見込んでいたリザは一気に間合いを詰めて、短剣を突き出した。二人の体が重なり、リザが上になる形で倒れ込んだ。


「私から良いポジションを取れると思わないでください!」


短剣の一撃をやり過ごしたらしいセレーナ様は、覆いかぶさろうとするリザを引き剥がし、逆に上のポジションを取ろうとした。が、リザの方も必死に有利な位置を探り、体を捻った。


ポジション取りの攻防が続いたが、最終的にはセレーナ様がリザを抱え込み、強引に持ち上げると、頭から地面に叩きつける。いわゆるバスターだ!


「この程度で!」


頭から落ちたように見えたリザだったが、素早くセレーナ様から離れると、短剣を振り回す。対し、一度ロッドを手離していたセレーナ様は、それを受けるしかなかった。


「次は貫きます!!」


武器の有無で圧倒的に有利な状況となったリザが、短剣を一気に突き出す! それは真っ直ぐとセレーナ様の胸に吸い込まれた、ように見えたが……。


「本当に……何が聖女ですか! この怪力女が!」


「し、失礼ですね! か弱い聖女で売っているんですから!」


セレーナ様はリザの腕を掴んで、刃が届かないよう耐えていたのだ。それでも、短剣を押し込もうとするリザだが、セレーナ様の怪力の前では思うようにいかないらしい。ただ、リザの短剣は二本。残った短剣で首を狙うが、セレーナ様はそれすら掴み取り、逆にリザの腕をひねり上げようとする。


「ぐぬぬぬっ……!」

「ふむむむっ……!」


女二人の意地の張り合い。とは言え、力だけの勝負ならセレーナ様が有利だ。リザは腕を捻り上げられ。二本の短剣を落とす。セレーナ様が手を離すと同時に、二人が動いた。交錯する二つの拳。それはお互いの顎にヒットし、お互いが数歩下がると、ついに膝を付くのだった。


「わ、私はまだやれますよ?」


「私だって十分に余力を残しています」


あれだけやり合って、まだ続くのか。呆然とする僕だったが……。


「おい、いつまで見ているんだ。俺たちも始めるぞ」


目の前にいた千冬が、僕を睨み付けていた。物凄い殺気だ。できれば戦いたくないなぁ。


「なぁ、僕たちの戦いって決着ついているよな? 三度も戦う必要あるか?」


恐る恐る提案してみたが、千冬の怒気が増すだけだった。


「いつ俺が負けたって言うんだ!? 今度こそ顔面をべこべこにしてやる! エグゼチェンジ!!」


し、しまった。怒らせてしまったぞ。くそぉ……一度勝った相手に、負けたくないぞ絶対に!!

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― 新着の感想 ―
待ってました!しかし規格外の二人の戦い、中々決着がつかなさそうですね。 誠はまだ弱気が残っているし…頑張れ!
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