表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

321/352

【若者のカリスマ】

お昼に教室へ行くと、またクラスの皆に囲まれてしまった。


「昨日、フィオナ様が迎えにきてなかった??」


「どんな関係なの!?」


「何か秘密の任務があったの??」


そんな質問を何とか振り払い、自分の席に座ると、雨宮くんが声をかけてくれた。


「眠たそうだけど、本当に何かあったの?」


「うん。ここだけの話しなんだけど」


僕は声を潜める。


「セレーナ様と一緒に仕事だったんだ」


雨宮くんなら「へぇ、大変だったんだね」で終わるかと思ったのだが……。


「……神崎くん。セレーナ様って、大聖女セレーナ・アルマ様のこと??」


気のせいか、声が震えているような。


「う、うん。そうだけど」


「な、な、な……」


「ん??」


「なんで黙っていたのさーーー!!」


「うわぁ、びっくりしたーーー!!」


「セレーナ様と言ったら、このアミレーンスクール出身の勇者じゃないか! 君は彼女がどれだけ凄い勇者なのか分かっているの!?」


「ちょ、落ち着いて!!」


僕は雨宮くんの口を手の平で塞ぐ。もごもごと何かを訴えようとする雨宮くんだったが、次第に冷静さを取り戻したようだった。


「ごめん、伝説の勇者の名前が出てきたから、つい興奮しちゃった」


忘れていたが、雨宮くんは勇者マニアだったのだ。しかし……。


「あのセレーナ様が、そんなに凄い勇者だったの?」


再び雨宮くんの目つきが変わりそうになったが……。


「ひっ、ひっ、ふぅ……」


と、彼は独特な呼吸で興奮を抑え込んだ。そして、メガネをキラッと光らせてから、人差し指を立てる。


「セレーナ様と言えば、その豪快なバトルスタイルと圧倒的な強さで、物凄い人気の勇者だったんだから。唯一の対抗馬だった綿谷先輩も、いざ直接対決してみると、セレーナ様が圧勝したんだよ?」


「は、ハナちゃんを相手に……??」


し、信じられねぇ。

いや、でも、そういうことか。


ワクソーム城の決戦で、ハナちゃんが拗ねていたのは、セレーナ様に助けてもらったからだった。あの負けず嫌いのハナちゃんのことだ。負けた相手に助けられたのは、かなり悔しかったのだろう。


「ほら、これが対戦動画だよ。オクトのスクール勇者決定戦の中でも、屈指の名勝負だって有名なんだから」


雨宮くんが動画を見せてくれる。


セレーナ様とハナちゃんがケージの中で、向き合っているところから始まるが、対戦内容はとんでもないものだった。セレーナ様の豪快な打撃を嫌がったハナちゃんは得意の寝技に持ち込む。


しかし、ハナちゃんの関節技を強引に抜いて、セレーナ様は暴力的な打撃を繰り出す。何度もハナちゃんは寝技にトライするが、どれもパワーでねじ伏せられてしまうのだった。


結果は判定でセレーナ様。泣きながら退場するハナちゃんの姿は見ていられなかった。


「凄いでしょ? 打撃が得意な生徒も、寝技が得意な生徒も、セレーナ様の前ではこんな感じで叩き潰されちゃうんだ。しかも、彼女の本職は聖職者。だから、未だに最強の女勇者はセレーナ様っていう説があるんだよ」


「さすがに、今やったらハナちゃんが勝つよね? これ、一年前の動画みたいだし」


「うーん……」


雨宮くんは答えを出さず、別の話題に移る。


「それに、セレーナ様が人気なところは、インフルエンサーとしても成功しているところだよ。Okutubeでは100万再生超えの動画を連発するし、Y(旧:okutter)もフォロワー50万人越えで、若者のカリスマとも言える存在だね」


「……雨宮くん。もしなんだけど、そんな聖女様がアミレーンスクールにやってきたら、どうなるの?」


「え? そうだねぇ、あり得ないことだと思うけど、大混乱になるんじゃない? 全生徒がセレーナ様の姿を一目見るために、暴徒みたいになるんじゃないかな」


「だよね。……もぉ、あの人は何しにきたんだ!?」


「ちょ、神崎くん!?」


僕は席を立ち、事態を把握していない雨宮くんに何も説明せず、教室を飛び出して、校門の方へ向かった。さっき、教室の窓から何気なく校門の方へ視線を向けたとき、僕は見てしまったのだ。


なぜかご機嫌そうにニコニコしながらアミレーンスクールに入ってくるセレーナ様の姿を。


「有名人がこんなところに来ちゃダメだろ!!」


しかし、僕が駆け付けたところで、混乱を収められるだろうか。いや、混乱になる前に、何とか彼女を追い払わなくては……!!

「面白かった!」「続きが気になる、読みたい!」と思ったら

下にある☆☆☆☆☆から、作品の応援お願いいたします。


「ブックマーク」「いいね」のボタンを押していただけることも嬉しいです。よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ