【これ、当たってない?】
佐山さんを研究機関に引き渡し、僕たちは解散した。藤原さんに何か声をかけたかったが、言葉が見付からず、挙動不審になっていると……。
「情けないところを見てしまって、申し訳ない」
逆に藤原さんの方から声をかけられてしまった。
「勇者でありながら、悪に手を染め、こんな最期を迎えたのは……正直言葉にならない。でも、ちゃんと向き合って、僕なりに気持ちの整理を付けたいと思う」
そう言い残して、藤原さんは帰って行った。どれだけ人格者なのだろうか。イケメンはどこまで行ってもイケメンなんだな。こんな風に思うな不謹慎かもしれないが、僕は劣等感でさらに落ち込んでしまうのだった。
「……あの、神崎くん」
すると、今度はセレーナ様に声をかけられた。
「今日は本当にありがとうございました。おかげで最悪の結果は免れたと思います」
「いえ、ほとんど何もしていませんが……」
「そんなことありませんよ。本当に助かりましたから。それから……」
セレーナ様は言葉を区切ると、なんだかモジモジし出した。何か言いたいみたいだけど、顔を赤くして口ごもるなんて……。もしかして、僕のサインでも欲しいのか?
いやいや、相手は大聖女と讃えられ、インフルエンサーとして若者のカリスマでもある人だ。僕みたいな冴えない野郎に興味を持つわけがないって!
「誠!」
セレーナ様が躊躇い続けていると、フィオナが顔を出した。
「二人ともお疲れ様。無事にアヤメの心臓を回収できて、とりあえずは安心ね」
「ご協力いただき、ありがとうございました。教会を代表して、お礼を言います」
「貴方に頼まれたら、私も断りにくいわよ」
二人が笑顔を交わす。何だか厚い信頼関係を感じるなぁ。セレーナ様が尋ねる。
「佐山修斗の容態は?」
「死んではない、みたい。ただ、アヤメの心臓が影響して、異常状態にあることは確かだから、それを調査するだけね。今はそれしか言えない」
「そうですよね」
セレーナ様は頷くと、黙り込んでしまう。これ以上、話すこともないのだろう。だが、セレーナ様は何か言いたげに僕の方を見る。その視線に気付いたフィオナも僕の方を見るが……。
「それで? まだ何か聞きたいことあるの?」
「いえ。何もないので……帰ります」
少し声のトーンを落としたセレーナ様は一度深いお辞儀を見せた。
「それでは、神崎くん。本当に今日はありがとうございました」
「僕の方こそ、ありがとうございました」
セレーナ様はどこかしょんぼりした背中を僕らに見せ、今度こそ帰って行く。それを見送ると、フィオナが急に僕の腕にしがみついてきた。
「ねっ、一緒に夕飯食べない? まだでしょ?」
「う、うん。そうだけど」
ちょ、おっ〇いが当たってない?
この柔らかさ、そうじゃない??
そんな気がするけど、勘違いかな!?
それから、二人で夕食を取った。王族のご飯だから、凄い豪華なものが出てくるのだろうか、と思ったが、割と平凡なものが並んでいる。フィオナ曰く、国民に質素な生活を強いているのだから、自分だけが贅沢するわけにはいかない、ということだ。
「ねぇ、セレーナとの仕事、どうだった?」
「どうって……うーん、とにかく凄かったかなぁ」
「凄いって、何が?」
「セレーナ様の強さだよ。あんな美人なのにめちゃくちゃ強くて、本当にびっくりした」
「美人……?」
し、しまった。余計なことを言ったかもしれない。
「な、何かネット配信とかSNSが人気らしいね」
話を逸らすと、フィオナは不満げな表情のままだったが、ちゃんと答えてくれた。
「……そう。昔から、そういうの好きだったからね、あいつ。私には理解できないけど」
「付き合い長いの?」
「同級生ってやつよ。同じ神学科だったの」
そういえば、セレーナ様も同じこと言ってたけど、まさか同じクラスだったとは。って言うか、王女様と大聖女様が一緒にいるってどんなクラスだよ。かなりの名門校だったんだろうな。
「いつも表面的に取り繕って、本当に笑うことはあまり見なかったけど……あんた、そういうタイプ好きそうよね?」
なんだよ。王女様。何が気に食わないんだ……。
恐怖を隠しながら、何とか食事を楽しく終わらせたのだが、帰る直前に僕は思い出した。
「そうだ、お願いがあるんだけど……」
僕はフィオナにちょっとしたお願いをした。ちょっと嫌そうな顔をするフィオナだったが……。
「明日も一緒にご飯食べてくれるならいいけど」
と、快く(?)受けてくれるのだった。
「面白かった!」「続きが気になる、読みたい!」と思ったら
下にある☆☆☆☆☆から、作品の応援お願いいたします。
「ブックマーク」「いいね」のボタンを押していただけることも嬉しいです。よろしくお願いします!




