表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

319/352

【これ、当たってない?】

佐山さんを研究機関に引き渡し、僕たちは解散した。藤原さんに何か声をかけたかったが、言葉が見付からず、挙動不審になっていると……。


「情けないところを見てしまって、申し訳ない」


逆に藤原さんの方から声をかけられてしまった。


「勇者でありながら、悪に手を染め、こんな最期を迎えたのは……正直言葉にならない。でも、ちゃんと向き合って、僕なりに気持ちの整理を付けたいと思う」


そう言い残して、藤原さんは帰って行った。どれだけ人格者なのだろうか。イケメンはどこまで行ってもイケメンなんだな。こんな風に思うな不謹慎かもしれないが、僕は劣等感でさらに落ち込んでしまうのだった。


「……あの、神崎くん」


すると、今度はセレーナ様に声をかけられた。


「今日は本当にありがとうございました。おかげで最悪の結果は免れたと思います」


「いえ、ほとんど何もしていませんが……」


「そんなことありませんよ。本当に助かりましたから。それから……」


セレーナ様は言葉を区切ると、なんだかモジモジし出した。何か言いたいみたいだけど、顔を赤くして口ごもるなんて……。もしかして、僕のサインでも欲しいのか?


いやいや、相手は大聖女と讃えられ、インフルエンサーとして若者のカリスマでもある人だ。僕みたいな冴えない野郎に興味を持つわけがないって!


「誠!」


セレーナ様が躊躇い続けていると、フィオナが顔を出した。


「二人ともお疲れ様。無事にアヤメの心臓を回収できて、とりあえずは安心ね」


「ご協力いただき、ありがとうございました。教会を代表して、お礼を言います」


「貴方に頼まれたら、私も断りにくいわよ」


二人が笑顔を交わす。何だか厚い信頼関係を感じるなぁ。セレーナ様が尋ねる。


「佐山修斗の容態は?」


「死んではない、みたい。ただ、アヤメの心臓が影響して、異常状態にあることは確かだから、それを調査するだけね。今はそれしか言えない」


「そうですよね」


セレーナ様は頷くと、黙り込んでしまう。これ以上、話すこともないのだろう。だが、セレーナ様は何か言いたげに僕の方を見る。その視線に気付いたフィオナも僕の方を見るが……。


「それで? まだ何か聞きたいことあるの?」


「いえ。何もないので……帰ります」


少し声のトーンを落としたセレーナ様は一度深いお辞儀を見せた。


「それでは、神崎くん。本当に今日はありがとうございました」


「僕の方こそ、ありがとうございました」


セレーナ様はどこかしょんぼりした背中を僕らに見せ、今度こそ帰って行く。それを見送ると、フィオナが急に僕の腕にしがみついてきた。


「ねっ、一緒に夕飯食べない? まだでしょ?」


「う、うん。そうだけど」


ちょ、おっ〇いが当たってない?

この柔らかさ、そうじゃない??

そんな気がするけど、勘違いかな!?


それから、二人で夕食を取った。王族のご飯だから、凄い豪華なものが出てくるのだろうか、と思ったが、割と平凡なものが並んでいる。フィオナ曰く、国民に質素な生活を強いているのだから、自分だけが贅沢するわけにはいかない、ということだ。


「ねぇ、セレーナとの仕事、どうだった?」


「どうって……うーん、とにかく凄かったかなぁ」


「凄いって、何が?」


「セレーナ様の強さだよ。あんな美人なのにめちゃくちゃ強くて、本当にびっくりした」


「美人……?」


し、しまった。余計なことを言ったかもしれない。


「な、何かネット配信とかSNSが人気らしいね」


話を逸らすと、フィオナは不満げな表情のままだったが、ちゃんと答えてくれた。


「……そう。昔から、そういうの好きだったからね、あいつ。私には理解できないけど」


「付き合い長いの?」


「同級生ってやつよ。同じ神学科だったの」


そういえば、セレーナ様も同じこと言ってたけど、まさか同じクラスだったとは。って言うか、王女様と大聖女様が一緒にいるってどんなクラスだよ。かなりの名門校だったんだろうな。


「いつも表面的に取り繕って、本当に笑うことはあまり見なかったけど……あんた、そういうタイプ好きそうよね?」


なんだよ。王女様。何が気に食わないんだ……。

恐怖を隠しながら、何とか食事を楽しく終わらせたのだが、帰る直前に僕は思い出した。


「そうだ、お願いがあるんだけど……」


僕はフィオナにちょっとしたお願いをした。ちょっと嫌そうな顔をするフィオナだったが……。


「明日も一緒にご飯食べてくれるならいいけど」


と、快く(?)受けてくれるのだった。

「面白かった!」「続きが気になる、読みたい!」と思ったら

下にある☆☆☆☆☆から、作品の応援お願いいたします。


「ブックマーク」「いいね」のボタンを押していただけることも嬉しいです。よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ