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【大聖女の依頼】

フィオナの執務室で一人待機していると、ガチャリとドアが開いた。


「どうぞ、こちらに」


そう言いながら、フィオナが誰かを招き入れる。それは、一人の女性だったのだが……。


「失礼します」


小さく頭を下げた黒の法衣をまとう彼女を、一言で表すのなら……女神で間違いない。眩しい金髪に、宝石のような碧眼。そして、白い肌に凛とした態度は、おおよそ美しいと表現されるものを、すべて集約したような存在である。


「貴方がこの地区の代表勇者ですね?」


そして、その女神が――今まで出会ってきた、どんでもエセ女神と違った、本物の女神が――僕を見た。ワクソーム城に突入するときに見かけたけれど、こうして気持ちが落ち着いた状態で目にすると、改めてその美人っぷりに気付かされるではないか。


「は、はい。神崎誠、です」


緊張しながら答えると、彼女は眩しい微笑みを見せてくれた。


「女神教会からきました、セレーナ・アルマです。今回は私たちの不始末のためにご助力いただき、本当にありがとうございます」


両手を組み、祈るようなポーズを見せる本物の女神は、こんなことを言った。


「これも、女神セレッソ様のお導きです。感謝を……」


……いや。

いやいやいやいや!!

違いますよ、セレーナ様。


貴方の言う女神は女神ではありません!

貴方こそが本物の女神なんですから!!


「なに鼻の下伸ばしてんのよ」


舞い上がる僕の後ろで、フィオナが呟き、思わず背筋が伸びる。


「セレーナ、彼にはまだ依頼内容について説明していません。貴方の方から話す?」


なんだろう。気のせいか、フィオナはセレーナ様に対してフランクだ。僕とセレッソ以外には王女様らしい態度を取るのに。


「そうですね。では、私の方から話します。神崎くん、座ってください」


「は、はい」


ソファに座り、セレーナ様と向き合う。最近、ハナちゃんやフィオナといった美女と会話する機会も増えたので、少しは免疫が付いたとばかり思っていたが、なんだかセレーナ様は緊張してしまうぞ。


「今回、神崎くんにお願いしたいのは」


神崎くん、という呼び方も何だかくすぐったいじゃないか。年上のお姉さんに呼ばれている、という感じが悪くない。


「アミレーン教会から盗み出された、あるものを取り戻してほしい、ということです」


「あるもの、ですか」


セレーナ様は頷く。


「今から六時間前、アヤメの心臓と言われる代物が教会から盗み出されました。監視カメラの映像から犯人は佐山修斗という勇者だと判明しています」


アヤメの心臓?

なぜ勇者が泥棒を?


この時点で疑問ばかりだが、あまりに緊張していたせいで、それを口に出すことはできず、ただセレーナ様の説明に耳を傾けた。


「佐山は現在もアミレーン地区を逃亡中と考えられています。そこで、重要参考人と共に佐山を捜索することになりました。貴方には重要参考人を守る役割と共に、アヤメの心臓を取り戻すため、私に協力して欲しいのです」


「わ、分かりました!」


思ったより、大きな声が出てしまい、嫌な予感がしてフィオナの方を見ると、やはり鋭い視線が……。


「ありがとうございます。聞くところによると、神崎くんは先の戦争で大きな戦果を上げた勇者の一人だとか。とても心強いです」


この感じだと一度顔を合わせたことは覚えていないようだけれど、そんなことは関係ない。彼女のために一肌脱ごうではないか。


「いえいえ、そんな大したものではありませんが、セレーナ様のためなら全力を尽くします」


勢い余って立ち上がってしまったが、フィオナの視線を思い出し、ゆっくりと座り直すと、セレーナ様が楽しそうに笑ってくれた。


うーん、まさに女神の微笑み。


「セレーナ、それだけでは説明が足りないわ。この男、簡単な仕事だと思っているから、どれだけ危険性の高いものなのか、ちゃんと話してやって」


「そうですね……」


フィオナの指摘に、セレーナ様の表情がやや曇る。


「シンプルな人探し、ではないのですか?」


「はい、危険だからこそ私のような人間が派遣されました」


私のような、ってどういうことだろう?

セレーナ様は続ける。


「この話は、一切口外しないよう注意いただきたいのですが、盗まれたアヤメの心臓は禁断術に指定された代物です。手にしたものをノームド化させる恐れがあり、危険な戦闘に陥るかもしれません」


ノームド。アトラ隕石による呪いで人間が化け物になってしまった姿だ。アッシアで戦った強化兵と同じくらい危険な存在だと言えるだろう。


「ノームドと何度か戦った経験もあるので、何とかなると思います!」


セレーナ様は頷いてくれるが、どうやら任務の危険性はそれだけでないらしい。


「問題は、アヤメの心臓の存在を封印機関が既に察知していることです」


「封印機関が? つまり……どういうことですか?」


それに答えたのは、フィオナの方だった。


「お兄様が率いる封印機関の連中と戦闘になる恐れがある、という意味よ。やつらがどれだけ強いのか、貴方に分かりやすく言うとしたら、トップレベルの勇者やアルバロノドフ並みの強化兵を相手にするようなものだから、絶対に油断しないこと」

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