遊撃
「け、系統外魔法……?」
キュッテが不思議そうな顔をしている。
どうやら彼女は、ロンドの魔法を見ても特におかしく思っていなかったようだ。
元々ちょっと常識に疎いような部分もあったから、まあキュッテならと納得はできてしまう。
「……」
ロンドは何と言うべきか考え、口を噤む。
熊を倒す、という部分に関しては問題なかった。
既にある程度の討伐はしてやれそうなこともわかっていたし、キュッテの知り合いがやられているということなら、力を貸そうと思っていたからだ。
中にいる強い個体だって、自分とキュッテとマリーが力を合わせれば決して倒せないことはないとも思っていた。二人からの同意も得られている。
「キュッテは不思議には思わなかったのかい?」
「私はてっきり、風魔法だとばかり……」
「ああ、オキサイドサークルかい? あれはしっかり効果を発揮させるまで拘束が必要な魔法だから、基本的に狩人がチームで挑む時なんかに使う魔法だよ。少なくともロンド君のように、単体で相手を倒せるような便利な魔法じゃない」
身構えそうになるロンドを制したのは、またしてもオウルだ。
「安心してほしい。君達の世界ではどうなっているかは知らないが、エルフにおいて系統外魔法の使い手であるというのは非常に大きな意味を持つ。そう、例えば愛娘を籠絡しようとする人間を見つけても、即殺しないくらいにはね」
そして系統外魔法の使い手は精霊に愛されているからねぇ、と続ける。
そう言えば似たようなことをキュッテも言っていた。
なんのことかはよくわからなかったが、向こうに敵意がないのならそれでいい。
気を取り直して、ロンドはオウルからの話を聞くのだった――。
現在、ナルの里にいる戦闘員達は不測の事態に備え、3~4人のグループを作って森の外で戦っているのだという。
どうやら熊型魔物の中でも強力な個体だと、人や魔物を避けるあの結界が効かないらしいのだ。
超えてきたりすることも最近では増えており、ひどいときは破ったりしてしまうのだという。
結界の中にいる非戦闘員の子供達や既に戦闘能力が落ちている老人を危険から守るため、持ち回り制のような形で結界の外に出ては熊達を討伐しているのだという。
話し合いの結果としてロンド達は、ロンド・マリー・キュッテの三人で熊討伐グループの中の一つに組み込まれることになった。
ただエルフ達の中に混じっていっても急に慣れ親しめるはずもないので、持ち回りなどは持たずに自由に行動が出来る、遊撃班的なポジションという形に落ち着いた。
そして時折他のエルフ達だけではなんとかできないような強力な熊を倒すため、そこにオウルが混ざって戦いに来るという。
本当はキュッテに魔の手が伸びないようにするための監視じゃないのかと尋ねたいのはやまやまだったが、触らぬ神には祟り無しということでロンドは黙ることにした。
「よ、よろしくお願いします……」
「……ちっ、なんで人間なんかと」
ロンド達と同じ時間帯に出掛けることになったエルフ達は、不満を隠そうともしていなかった。
エルフ達の中でもかなり若い、その見た目は下手をしたらロンドよりも若く見えるほど。
キュッテよりも年下の、かなり若手のエルフだろう。
内訳は男二の女一である。
「安心しろ、長の言葉には従うからよ。俺達はあっちに行く、キュッテさん達は?」
「同じ方向に行って、見てみてもいいでしょうか? 魔物を倒す時の参考にしたいのです」
「構わないけど……」
かなり強い警戒心を持っているが、さすがに里長の娘がいると強気に出れないのか、渋々同行を認めてくれる。
ロンド達は参考までに、エルフ達が普段どんな風に狩りをしているのかを見させてもらうことにしたのだった。
ちなみにその内容は、まったく真似できるようなものではなかった。
幾重もの風の刃が熊の硬皮を貫通し、水の槍が目玉を貫き、火の蛇が身体に巻き付いて全身を火傷させていく。
エルフというのは伊達ではなく、彼らは一瞬で全身を水に包んだ熊、ウォーターベアを倒してしまった。
しかしそうやって圧倒的な魔法を見せ、そしてその度に自分達にドヤ顔をしてくるエルフ達の様子を見るロンドの顔は険しかった。
(こんな強いエルフの人達がやられるその化け熊って……いったいどれだけなんだよ)
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