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わしジジイ、齢六十を超えてから自らの天賦の才に気付く  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)


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目論見


 鬼岩のスラム街には、いくつかの有力な組が存在している。

 彼らは日々自らの縄張りを広げるべく、争いを続けていた。

 大抵の場合行われるのは小競り合いだが、スキルや魔法があるこの世界では、小競り合い一つで人が容易く命を失うこともある。


 スラム街は二つの小さな島を真ん中に梯子をかけて繋いだような形をしている。

 抗争が行われているのは、右側の小島の奥であった。


「てめぇら、舐めてんじゃねえぞ!」

「やっちまえ、返り討ちだ!」


 ディルがやって来た時には、既に戦いは始まっていた。

 既に倒れている人もおり、腹から血を流しながらも目をぎらつかせている男達の姿がある。

 向かい合う二つの勢力。

 そのうちの一方の領域では、自分が知っている日村組の紋章旗がたなびいている。


 ディルは即座に加勢することにした。


 少し悩んでから……黄泉還しに鞘をつけたまま、相手の有田組の構成員の脳天に打ち付ける


「きゅう……」


 倒れる男に意識が向くよりも速く、相手達の視線を切りながら同様に気絶させていく。

 数分もしないうちに、全ての男達が意識を失い地面に倒れ込む。

 リーダーらしき男にも、大した戦闘能力はないのはラッキーだった。


「大丈夫じゃったか? わしはドリューに雇われたディルというものじゃ」

「おお、土竜の兄貴がっ!」

「じいさん、あんたやるなぁ。よし、それならさっさとこいつらを……」

「ちょ、ちょっと待つんじゃ!」


 気絶させた男達を今すぐやってしまおうとする男達を見て、焦るのはディルの方だった。


(こりゃあわしがなんとかしないと、どんどん被害が出るじゃろうな……)


 下手に相手を皆殺しにしてしまったりなんかすれば、絶対に問題が起こる。

 ギャングが面子を大切にするのは、ヤポンでもジガと変わりないはずだ。


 だがどうやら現場に居る日村組の人間達には、それがわからないようだった。

 ディルがこの場を去れば、すぐに敵を血祭りにあげかねないほど、彼らは勢いづいている。 それならいっそのこと、これを利用した方がいいかもしれない。


「よし、決めた」

「決めたって……何をだよ?」

「このまま有田組にカチコミじゃ!」

「「――えええっ!?」」



 どうせディルの力があると、日村組の組長から末端の構成員に至るまで、知ってもらう必要があるし、日村組復活のことを余所に伝える必要もある。


 パッとした思いつきだったが、これはなかなかに名案な気がしてきた。

 それに……。


(わしの目が届くところなら、ある程度セーブすることもできるじゃろうし)


 こうしてディルは勢いそのままに、有田組へ構成員全員でカチコミをかけた。

 そして無事、被害を一人も出すことなく、有田組の人間達をボコボコにすることに成功した。

 これは日村組の復活を感じさせる出来事となり、ディルは当初の目論見通り、日村組の組長と面識を持つことに成功するのだった――。

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