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わしジジイ、齢六十を超えてから自らの天賦の才に気付く  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)


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グリフォン退治

 グリフォンとは、ジガ王国においてはAランク、ヤポンにおいてはい級に指定されている強力なモンスターだ。


 その相貌は異様で醜悪そのもの。

 複数の動物を強引に接合したかのような歪さを持っている。

 鷲の頭の下に繋がっているのは獅子の身体。

 臀部から伸びた黒く長い尾は、蛇のような顔を持ちうねうねと動いている。

 鋼鉄を容易く引き裂く凶悪な爪を持ち、その口からは高温の炎を吐き出す。

 その皮膚は魔法の武器でなければ傷をつけることができず、歳を重ねたグリフォンの中には魔法を使うことのできる個体もいるという。


 グリフォンの一匹を討伐するためには一線級である複数のろ級冒険者パーティー、もしくはい級の冒険者が必要とされている。


 そんなグリフォンが、相良の街から東にいったところにある相実の街の近辺に出没するようになった。

 人が数人消えた時も、最初は失踪事件として処理されていた。

 けれどその後に冒険者の調査で、その原因がグリフォンにあることが発覚したのだ。


 本来なら相良の街よりも全体的に寂れており、危険がないとされている相実の街に突如として出現した強力なモンスター。

 グリフォンはヤポンにおいて現れることの少ない魔物であるため、討伐した場合のグリフォンの素材の稀少価値はかなりのものと推定された。

 そのためグリフォンを討伐するために、複数の冒険者パーティーが動いていた――。


 相実の街は、控えめに言って片田舎である。

 主な交易品は米であり、比較的栄えている相良へ主食である米を運ぶことで経済が成り立っている。

 ただ近くにはもっと大きな穀倉地帯である相馬の街があるため、領主である加賀美家もそちらと相良を繋ぐ街道の整備に労力を注いでいる。

 結果として相実の街は比較的放置され気味であり、相良の街との間に広がっている街道もあまり細かな整備・点検がされているとは言いがたかった。


 ガタッと時折外れる車輪を都度戻しては進み出すオンボロ馬車がある。

 先人達が作った轍に沿うような形で進む馬車から、ひょっこりと一人の男が顔を出す。


「ふぅん、どうにも寂れた街ですねぇ」


 男――ソラルは馬車に揺られながら、クイッと眼鏡を上げる。

 神経質そうな面長の顔は白く、青い血管が見え隠れしていた。


 その視線の先には、お目当てである相実の街の姿がある。

 彼が言っている通り、遠くから見るだけでもどこかこじんまりとした印象を感じさせる街だった。


「まあ、私達の目的は観光でもなんでもないわけだし。当然っちゃ当然でしょ」


 馬車の中に戻ってきたソラルに声を返すのは、女魔法使いのリンダ。

 身につけているローブは麻色で、腰には嗜みとして小太刀を提げている。

 その向かいに立つソラルの方は、床に無造作に刀を置いていた。


 二人はそれぞれろ級として活動しているソロ冒険者であり、今回限りのタッグを組んでいる。

 その目的はもちろん……相実の街に現れたグリフォン。


 ヤポンではめったに出ないグリフォンを狩るため、相実の街には実力者が続々と集まりつつあった。

 彼らのようにソロでグリフォンを倒すのが難しいと考えた者達は、それぞれ即席のパーティーを作っている者達がほとんど。


 だがごく稀に、命知らずにもソロのままグリフォンに挑もうとする愚か者がいる。

 そして今回、馬車の乗客は三人いた。


「……はぁ」


 そのうちの一人……すなわち二人ではない最後の一人を見て、ソラルがため息を吐く。


「おじいちゃん、悪いことは言わないからやめといた方がいいわ」

「ほっほっほ」


 そこにいたのは、一人の老人だった。

 好々爺にしか見えない彼は、全身に一応の鎧を身に纏い、その横には剣が立てかけてある。

「リンダ、冒険者は自己責任ですよ。何があっても死に損なんですから、構うだけ無駄です」

「でも……」

「その通りじゃよ、わしはグリフォンを狩るんじゃ。できれば加賀美様にお目通りできるくらいド派手にの」


 おじいちゃんであるディルの言葉に、リンダは諦めたようにうなだれた。

 どこか人好きのする様子のディルにほだされた様子の彼女を見て、ソラルは再度外を見る。

 街の外には、既に野営しているいくつものパーティーが見えていた。

 皆、グリフォンを狩るのは自分達だと我先に外へ出て偵察に出ているらしい。


(金と名誉に駆られてやってきましたが……この分では私達の出番はこないかもしれませんね)


 ソラルは近い将来自分がグリフォンと直接戦うことになるなどとは露ほども思わず、やれやれと首を降りながら馬車を降りるのだった――。


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