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わしジジイ、齢六十を超えてから自らの天賦の才に気付く  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)


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護衛

「お前ら、何をやってる! この不届き者を始末しやがれぃ!」


 護衛の二人が、慌てたように前に出る。

 二人とも、まさか老人がドタマに手を出すなどとは考えていなかったのだろう。

 その初動の遅さがそれを物語っていた。


 ディルは瞬時に『見切り』を発動させる。

 そして脅威度は二人の方が高いと判断し、ドタマの腕を放し、すっと提げている剣の柄に触れる。


 右の男の方が向かってくるスピード自体は速いが、その危険度は左の男の方が高い。

 そして二人の実力を信じているからか、ドタマの方は腕を組んで戦いに入ってくる様子はない。


 ディルは俯瞰的に状況を捉えるだけの余裕ができていた。


「お菊とやら、下がっておりなさい」

「は、はいっ」


 お菊は既にドタマの拘束から逃れ、後方に下がっていた。

 だがディルの気迫に当てられてか、更にすり足でディルの後ろに来るように動いていた。

 先ほどドタマに握られたのが痛かったのか、その左腕をさすっているのが横目に見える。


 ディルとして一番気にしていたのは、お菊を人質に取られてしまうことだった。


 これで後顧の憂いを絶てるわいと、ディルはスッと黄泉還し(トータルリコール)を抜いた。


 その様子は至って自然体であり、気負ったところはない。

 サガンの迷宮で慣らしたおじいちゃんからすれば、用心棒を相手にしても臆するようなことはない。


 まずやってきたのは左の男。

 スッと剣を抜き、そのまま剣を上段に構えて突撃してくる。

 振り下ろしの一撃に全てをかけるスタイルなのだろう。

 ヤポンのサムライには、このように後のことを全て捨てて一撃に特化した剣技が多く存在していると聞く。


 それがわかったディルは、敢えて前に出た。

 そして溜めて力を込めているかのように腰を軽く落として、剣を横に向ける。


 その隙を見て、護衛がすかさず腕に力を込める。

 そして必殺の一撃を放ってきた。


 しかしそれはディルが自ら作り出した、意図的な隙だ。


 ディルは下げた上体を、下半身のバネを使いひょいっと右に飛ぶ。

 そして相手の一撃をひらりと交わし、カウンターとして剣を振るった。


 相手を殺すつもりはないので、右腕に斬り付ける。

 これでもう、彼はこの戦闘には参加できないだろう。


 ディルが一人目を片付けたと安堵する間もなく、二人目の護衛がこちらにやってくる。


 目が細く、柔和そうな顔つきはしているが、まったく油断のならない男だ。

 その所作には淀みがなく、小走りしているにもかかわらず、足音がまったくない。


 そこまで滑らかに動けるからには、並の使い手ではないのだろう。


 男は剣を抜くことなく、笑みにも見える表情のままディルの方へと向かってくる。


 剣の柄に手をかけているが、先ほどの男とは違い剣を抜かず、鞘に入れたままだ。

 その構えを見て、ディルはイナリから言われていたサムライの使う剣技の一つだろうとあたりをつけることができた。


 居合いと呼ばれる、ヤポン流の一撃に特化した剣技だ。


 剣を鞘に入れたまま戦闘を開始し、剣を抜くその一撃に最大威力を叩き込む技だと記憶している。

 なんでも鞘の内側に油を塗り、鞘走りと呼ばれる技を使い本来よりも剣速を上げることができるようになるのだという。


 『見切り』が対処法を教えてくれる。

 ディルは一切の躊躇なく――更に前に出た。


 居合いの弱点は、全力疾走と同様、最大速度を出すためにある程度の助走が必要であること。


 故に攻撃の威力を完全に出す前に、後の先を取る。

 必要な助走をさせずに、勢いを殺した状態で自分の一撃をぶつけてしまうのが上策だった。

「――っ!?」


 常に平静に落ち着いていた護衛の男の顔が、初めて驚愕に変わる。


 ディルは自分の採った動きが間違っていないことに内心でほくそ笑みながら、相手の放つ居合いに合わせて、黄泉還しを振った。


 激突。

 二人の剣閃が交わり合い、白刃が交差する。



「う……ぐっ……」


 二人目の護衛が倒れる。

 無論浅く裂いて戦闘能力を奪うだけで、殺しはしない。


 そして最後に、最初は安心しきっていたドタマだけが残る。

 彼はディルが戦っていた様子を見て、目を見開いている。


「お……覚えてやがれえええええええっっ! ずらかるぞ、お前らっ!」


 ドタマはそのまま後ろを振り返ることなく、全力で店を出ていった。

 護衛の二人も、ぎこちない動きでその後を追っていった。


 そして後には、剣を鞘に収めたディルと、お菊だけが残る。


 ふぅと一息ついたディルは、くるりと後ろを振り返る。

 そこには口に手を当てて彼のことを見つめている、お菊の姿があった。


「よければ事情を、聞かせてくれんかの?」


 ディルは何もせずに十日後を待てない自分の性分に苦笑いしながらも、そうお菊へと問いかけるのだった――。


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[気になる点] 居合をまったく調べもしないで書くのはどうかと思う
[良い点] いい時代劇
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