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わしジジイ、齢六十を超えてから自らの天賦の才に気付く  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)


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ちょいと


「お菊ぅ、今日もえろぉべっぴんやのぉ」

「そりゃどうも、客じゃない人間を店に入れる道理はないよ」

「そんなつれないこと言わんでくれよぉ、俺とお前の仲やないか。おぉ、そんな怖い顔せんでも頼むわい。あん団子を三人前くれや」


 どうやらこの『あたご』の看板娘の名前は、お菊というらしい。


 ディルはとりあえず目立たぬように、そっと視線をズラして三人の姿をのぞき見ることにした。


 まず真ん中に立っているのは、ディルよりも身長の小さな男だ。

 顔立ちがジガ王国の人間と違うためわかりづらいが、白髪の少なさやシワの数から想像するに、年齢は三十前後だろうか。


 大きな袖の中に手を入れていて、お菊のものと比べると厚みのある、しっかりとした和服を身につけている。


 その後ろに控えている護衛二人は、男よりも二回りほども大きな大柄の男だ。

 二人とも眼帯をつけていて、いかにも屈強そうな身なりをしている。


 護衛の二人は腰に長剣を差しており、小柄な男も護衛のためか、小ぶりの剣を腰に提げている。


 ヤポンの国のサムライが使う武器は、刀という片刃の剣だ。

 突き刺したり撫で斬ったりするのがメインの剣であり、ジガ王国で主流の両刃の剣のように、相手に叩きつけるような使い方はめったにしないらしい。


(あの小さな刀はたしか……脇差といったかの)


 ヤポンはジガ王国と比べれば物騒らしく、旅人や商人も自前の武器を持つことが多い。

 彼らが持つような武器は、脇差と呼ばれている。


 なおこの脇差は、サムライがメインで使う刀が使い物にならなくなった時に使うサブの武器としても扱われることが多いらしい。


 ディルが自分の持つ黄泉還し(トータルリコール)と刀を見比べていると、ドカリと三人が地面に座って胡座をかいた。

 三人ともニヤニヤと笑っていて、明らかに商売の邪魔をしようとしているのが丸わかりである。


 お菊は律儀に、彼らに団子を持ってくる。

 ディルは何かあった時に対応ができるように、少しだけ腰を浮かせておくことにした。


「おおこれやこれ、これが食べたかったんや」


 男は団子を頬張りながら、「美味いのぉ!」と周囲の家に届くほどの声で叫んでいる。

 それに合わせて、後ろに控えている男達もがなる。


 そんなに大きな声を出していては、もし軒先まで来て店に入ろうという人がいても、すごすごと帰ってしまうことになるだろう。


 恐らくはそれこそが、彼らの目的なのだ。

 理由はわからないが、この『あたご』の営業妨害をしようとしているのだろう。


「のぉお菊、いい加減この店ぇ明け渡した方がええんとちゃうんか?」

「あたしにその気はないって何度も言ってるだろ。親父とはもう縁を切ったんだ、ここの土地を売らにゃあいけない理由はない」

「そうは言ってもなぁ。お前さん、この商人ドタマを敵に回した奴らのこと、知らんわけがないやろぉ?」


 何やら因縁があるらしいが、ディルは何も言わず、黙って緑茶を啜る。


 まだ手を出すのは早い。

 それに下手に手を出して揉め事になれば、六国へ着くのが遅れてしまうかもしれない。


 どちらが悪いのかすらわかっていない現状で、義憤に駆られて動けば、逆にお菊に迷惑をかけてしまうかもしれない。

 今はただ、黙ってことのなりゆきを見守るのが正解だろう。


「なぁに、別に土地で払わんでもええんや。お菊は器量がええ。ほんのちょーっと夜の街で働くだけで、あいつがこさえた借金程度なら返せるやろう」

「そもそもあたしに借金を返してやる義務なんかないのさ。そんなに取り立てたいんなら、あの人を漁船にでも乗り込ませればいいだけだろ」

「聞き分けのない娘御やのぉ……のぉそこのご隠居! あんたもそう思わへんかぁ!?」


 とうとうディルの方に話が振られてきた。

 ディルはどうするべきか悩み、とりあえず曖昧な笑みを浮かべておく。


「ちょっと、うちのお客に何を吹き込む気だい!」

「俺だって客やでぇ。同じ客同士世間話の一つでもしようっちゅう話や、なあんも問題あらへんやろ」


 そのままドタマと呼ばれていた男が、ことのあらましを告げる。

 どうやら彼は、お菊に父が抱えている借金を肩代わりさせようとしているらしい。


 ヤポンの法律的に、それが正しいことなのかはわからない。

 ただこうして恫喝のような非合法な手段に訴えているあたり、恐らくは彼らの方が無体を働こうとしているのは間違いない。


 ディルが曖昧な笑みを浮かべて話を切ると、ドタマはつまらなそうな顔をして立ち上がる。 そしてそのまま――お菊の腕を掴んだ。


「――痛っ!?」

「お菊ぅ、今日という今日は――」


 ドタマの声が止まる。

 そしてぐりんと腕が曲げられた。


 お菊の腕――ではない。

 それを綺麗に放される形になった、ドタマの腕だ。


 ドタマの腕を掴むのは、これ以上の無法は見逃せないと腹を据えたディルだった。


「そこまでにしておくのがいいじゃろう。これ以上はわしも、見逃せなくなる」

「――おいジジイ、この俺に手ぇ出すとは……どうなるか、わかっとるんやろうなぁ!!」


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