親玉
「このメンバーで戦うのに慣れておいた方がいい」
「それはそうじゃね」
ディルたちマザールビーアント捜索組は二つのチームに分かれることになった。
ディルたち『無銘』が同行することになったのは、ガイウス率いる『赤皇帝』のチームだ。
もう片方の面子は残る四つのパーティーによって構成されている。
この中で最も強いがクセも負けないくらい強い『赤皇帝』と、もっとも探知能力に優れたイナリがいる『無銘』をくっつけた形である。
『赤皇帝』は中では戦闘能力が頭一つ抜けているらしいので、恐らくは二つの捜索組に均等に戦力を分けた形だろう。
ディル達は第二十五階層で、連携を確認することにした。
「三、二、一……撃て!」
第二十五階層に出てくる魔物は、オーガ・ゴブリン・オーク等の人型魔物たちだ。
連携を取って動いてくる彼らと戦うのは、こちらの調整をする上でもありがたい。
『赤皇帝』のメンバーは合わせて五人。
前衛が二人に中衛が一人、そして後衛が二人。
攻勢としては割とオーソドックスだ。
「シッ!」
ガイウスがオーガを斬る。
得物である棍棒が二つに割れ、遅れて身体が切断面からズレていく。
ガイウスの得物は長剣だ。
不自然なほどに赤いその剣は、どんな魔物たちも一太刀で切り伏せていく。
彼の剣は剛の剣。
鍛え上げられたその肉体で、魔物相手に力比べで負けぬほどの剛力であらゆるものをなぎ倒していく。
どちらかといえば、黒騎士とスタイルは似ているかもしれない。
ガイウスが剣を一振りするごとに魔物を切り飛ばしていく様子を見ながら、ディルは目の前のオークの攻撃をひらりと躱す。
振るわれる攻撃を見切り、紙一重で避け、カウンターを放つ。
ガイウスが剛の剣ならば、ディルは柔の剣。
ディルは相手の力さえ利用して、最低限の力で敵を倒していく。
ガイウス以外のメンバーの力も高い。
サブリーダーのアビゲイルは後衛職で、ガイウスの剣の射程外から襲おうとする魔物を的確に処理していた。
火・水・土・風の全属性の魔法をほぼノータイムで発射することが可能で、威力よりは手数で勝負するスタイルのようだ。
残る三人も、第二十五階層程度の魔物ならば難なく倒せている。
普段の戦い方をお互いに見せたら、次は連携ができるよう力を合わせた戦闘を重ねていく。 やはり基本的には戦い慣れたパーティーごとに戦うのが間違いない。
問題は個々のパーティーでは詰まるような戦い、つまりはマザールビーアントとの遭遇戦に関する部分である。
マザールビーアントに対しては、このパーティーにおける最高戦力で相手をすることになった。
つまりはディル・ガイウス・黒騎士・アビゲイルの四人がマザールビーアントに当たり、残る四人が周囲の蟻たちを処理するという形だ。
ディルはアビゲイルの魔法を避けることが可能で、黒騎士は素の防御力が高いために魔法をほとんど無視して突き進むことができる。
前衛同士が邪魔をしないような戦い方ができるように回数を重ねながら、適度に休みルビーアント達の襲撃に備える。
そしていつでも来いと覚悟を決めてからしばらくして、ルビーアントの群れがやって来る。 イナリはソルジャールビーアントの気配を察知し、出てくる場所を明確に割り出すことに成功する。
壁に穴が空き、ルビーアントたちが飛び出してくる。
その中に――明らかに大きく、そして周囲にソルジャールビーアント達を従えた魔物の姿がある。
ようやくディル達は、探し求めていた親玉と遭遇することに成功したのだ――。




