宣言
とりあえずまずは、お互いの持つ手札を確認していくことになった。
イナリとしても今の自分の能力を把握しておく必要があるし、一切のデータを知らないローズができることも知っておく必要がある。
お互いすりあわせておかなければいけないこともいくつもあった。
ただ今すぐに外に出て下手に目立つわけにもいかないので、ひとまず部屋の中でできることを確認していくことにした。
「僕のレベルは三十二なんやけど、ローズのレベルはいくつなん?」
「私は……前に調べた時は二十くらいだったと思います。もう少し上がっているので二十五に届かないくらいではないかと……」
「あ、ほんならこれ使い」
イナリが無造作に放り投げたものを受け取るローズ。
彼女は掴んでからそれがステータスクォーツであることに気付き、目を白黒させている。
「ス、ステータスクォーツをこんなに乱雑に……流石御曹司……」
ローズがちょっと震えながら魔力を流すと、彼女のレベルは二十六になっていた。
恐らくは先ほどの眷属との戦闘の分、レベルがいくらか上がったのだろう。
基本的にステータスを確認するのに手間がかかるこの世界では、こんな風に自分が思っているレベルと実際のレベルがズレていることがままある。
レベルアップによるスキルや魔法の獲得はあっても、それが何レベルでなされたものなのかは基本的にはわからない。
――ゲーム知識を持つイナリを除いては。
「えっと、ほんならまず今使えるスキルと魔法を全部教えてくれる? 可能であれば使えるようになったレベルも一緒に」
「え、ええ、それは構いませんが……」
イナリが知りたいのは、今後のローズのスキルツリーであった。
自分の場合は参考に出来そうなキャラがいないためゲーム知識は基本的にほとんど参考にならないが、ローズの場合は次代の聖女であるミナという比較対象がいる。
更に言えばプリーストのキャラを参考にすれば、今後覚えられるスキル群などについてもある程度は推測を立てることができるはずだ。
ローズは細かなことを根掘り葉掘り聞いてくるイナリに不思議そうにしながらも、彼の質問に一つ一つ答えていった。
「ふーん、なるほどなぁ……」
「これで何がわかったんですか?」
「これからの君が覚える、おおよその魔法とスキルかな」
「――ええっ!?」
ローズの魔法とスキルの構成は、極めて模範的なプリーストのそれだった。
パッシブスキルは魔力回復と光魔法使用時の消費魔力軽減、そしてアクティブスキルは光魔法の祈祷による詠唱省略にシールドや結界、簡易の聖殿作りなどの防御系のものがほとんど。
魔法も攻撃用のものはほとんど覚えておらず、にもかかわらずレベル二十六時点で既に回復魔法を上位魔法であるエクストラヒールまで使いこなしている。
恐らくだがこのままレベルを上げていけば、四十になる前には最上位回復魔法であるオールヒールが使えるようになるだろう。
(ミナと同じ純支援型……となると下位魔族と戦う前に、防御系の上位魔法のアイギスシールドが使えるようになるレベル三十五くらいまでは上げておきたいところやな。可能であれば上位魔族戦までにはレベルを六十手前まで上げて、スティグマータも使えるようになってもろときたいところやけど……それを考えんのはもっと後でええ)
「一体なぜ魔法とスキルが……知識の集積は教会の秘事に触れる可能性が……(ぶつぶつ)」
イナリは説明しろという視線を軽く受け流しながら、自分の魔剣創造のステータスを眺める。
炎の魔剣 レベル7
ファイアスラッシュ ファイアスラスト フレイムバースト ダークフレイム(闇の魔剣使用時のみ)火炎操作 攻撃力アップ(大)
水の魔剣 レベル6
水流操作 魔力伝達 防御力アップ(大)
光の魔剣 レベル5
ヒールソード ヒールスラッシュ バリアソード 回復量アップ(中)
闇の魔剣 レベル7
ダークネスフォグ サモンダークナイト ダークヒール(光の魔剣使用時のみ) 隠密(大)
雷の魔剣 レベル1
ライトニングソード アクセル 素早さアップ(中)
イナリとしては、やはり新たに解放された複合魔剣が気になった。
明日は新たな魔剣である雷の魔剣の使い心地を試しながら、二人で戦うための連携を確認していくことになるだろう。
今まではほとんど使い道がなかったサモンダークナイトに関しても、ローズと行動を共に使うのであれば間違いなく使うタイミングがあるはずだ。
今後のことを考えながら、イナリは脳裏で算盤を弾いていく。
彼は数分ほどの思考の後に、結論を出す。
「うん、明日やね」
「明日……何がですか?」
「明日、この街の下位魔族と眷属を皆殺しにする」
「え……えええええっっ!?」




