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私が占い師になった理由。  作者: 月灯
第八章 虹の羅針盤が指す方へ
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162話 虹の導き - 光のまなざし

✪読んでくださり、ありがとうございます。

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──朝。


陽が木々のあいだから差し込み、森の空気がゆっくりと目を覚まし始める頃。


アリアは目を覚まし、そっと隣に転がっていたイリスを抱き上げた。


「おはよう、イリス……」


イリスは「ぽよん」と軽く跳ね、小さく揺れて体を虹色にきらめかせた。





──そのときだった。


「つるんっ」


イリスの体から、なめらかにひとつの物体がこぼれ落ちた。


「えっ……?」


手のひらほどの、小さな羅針盤のようなアイテムだった。淡く輝く盤面には、微細な魔紋が静かに浮かんでいる。中央には針があり、まだ静止したままだった。


「これ……イリスが“生み出した”の?」


マコトがそれを拾い上げ、眉をひそめる。


「……これは、気配を探るための道具かもしれないな」


イリスは誇らしげに虹色に発光し、ぽよんと跳ねながらアリアの腕の中で揺れた。


「ふふ……よくがんばったね」


アリアはやさしく微笑み、イリスの頭を撫でた。





アリアは羅針盤をそっと掌に抱え、そのまま胸の前に留めた。


「なんだか……この子、まだ眠ってるみたい。でも、いずれ“動き出す”気がする」


モルンがその言葉に反応するように、小さく「ふす……」と鼻を鳴らし、アリアの肩に頭をすり寄せてきた。


そのぬくもりは、どこか“先を知っている”ようでもあった。


 



その後、一行は山道を越えて、小さな村へと立ち寄ることになった。


澄んだ川が流れ、野菜や穀物を育てる畑の広がる、静かな谷の村だった。


水と食料を補給しながら、アリアたちはしばしの間、村の人々と交流を持つことにした。


 



──そして、広場。


村の子どもたちが、アリアの背後に立つモルンを見つけて、目を丸くする。


「わぁ……でっかい……ドラゴン?」


「でも、こわくない……! きれい……」


モルンは、静かに首を傾けた。金色の瞳が光を受けて、やさしく瞬く。


その背と体躯は堂々としており、すでにアリアやマコトと並ぶほどの大きさがある。


子どもたちが恐る恐る手を伸ばすと、モルンはひとつ「ふぅ……」と鼻先から光の息を吐き、近づく子の髪を優しく揺らす。


「わぁ……息がキラキラしてる!」


「火の竜って、もっとこわいと思ってたけど……あったかい……」


モルンは尾をひと振りして応えながら、子どもたちの動きに合わせて穏やかに歩を進めていた。


たてがみのような羽毛を首元に残したその姿は、どこか神聖な存在にも似ていて──けれど、子どもたちにとっては、ぬくもりのある「大きな友だち」だった。


アリアが微笑みながら言う。


「モルン、すっかり頼れる存在になったね」


「ふす……」


モルンは鼻先を赤く染めて、少しだけ照れくさそうに息を吐いた。


 



広場の一角では、シュウが腰を低くして村の人々の声に耳を傾けていた。


「じゃあ、口を開けて……うん、喉はちょっと赤いけど、大丈夫。これを夜にお湯で溶いて飲んでください。咳が軽くなるはずです」


そう言って、小瓶を手渡すと、村の青年が恐縮したように頭を下げた。


「見習いなのに……こんなに丁寧に診てもらえるなんて」


「……まだ勉強中だけど、だからこそ一人ひとりの声をちゃんと聞きたいんです」


少し照れながらも、シュウはまっすぐに答えた。


その隣では、モルンが子どもの手をそっと受けとめるように身を低くし、胸元からほんのりと癒しの炎を灯していた。小さな痛みやこわばりを、静かに溶かすように──。


 



広場の片隅では、アリアが村の老婦人の手をそっと取り、占いをしていた。


「……安心できる場所は、きっともうすぐ、あなたのもとへ戻ってきます」


アリアのその言葉に、老婦人は目を潤ませてうなずいた。


「ありがとう……本当に、ありがとうねぇ」


そのそばで、モルンの胸元がほのかに赤く脈動し、老婦人が「膝の痛みが少し和らいだようだ」と驚いて呟いた。


アリアはそっと笑って言った。


「モルンはね……あったかい炎を持ってるから。誰かの心が、ちょっとでも軽くなるといいなって、そう願ってる」


モルンが尾を揺らして応えた。


 



旅立ちのとき。


村の出口まで見送りに来た老婦人が、ふとアリアに声をかけた。


「……あの方角にはね、“風の巫女”が住んでた森があるのよ」


アリアは足を止め、そっと振り返る。


「風の巫女……?」


「ええ。昔々ね。いまではもう誰も近づかないけれど、心の傷や迷いを癒す風が吹いていたって言い伝えがあるの。……その場所に、また“風”が戻ってくるんじゃないかって、そんな気がしてるのよ」


アリアはその言葉を胸に刻むように静かに頷いた。


──その瞬間。


アリアの胸元で眠っていた羅針盤が、「カタリ」と小さく鳴って震えた。


マコトが思わず振り向き、目を細める。


「……動いた」


盤面の針が、森の奥、北東の方角をゆっくりと指し示していた。


イリスが「ぽよん」と跳ね、モルンが低く「クゥ……」と鼻を鳴らす。


アリアはそっと胸の羅針盤を抱くようにして、その光を見つめた。


「きっと、そこに“願い”があるんだわ……」


 


──誰かの祈りが、確かに届いている。


新たな導きを受け取った一行は、ゆっくりと歩き出した。


それは、まだ誰も知らない“継承の森”へと向かう、静かな第一歩となるのだった。


 



──163話へつづく




※このお話の舞台はヨーロッパ風異世界であり、現実世界の歴史とは一切関わりありません。

作中に出てくる 国・文化・習慣・宗教・風俗・医療・政治等は全てフィクションであり、架空のものです。

あくまで創作上の設定としてお楽しみいただけますと幸いです。

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