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私が占い師になった理由。  作者: 月灯
第七章 過去と未来をつなぐ旅
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158話 未来への架け橋 - 心が届く距離

✪読んでくださり、ありがとうございます。

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夕暮れの風が緩やかに吹く中、アリアたちを乗せた馬車が、次の拠点へ向けて緩やかな坂を進んでいた。


荷台の上で、アリアはそっと千里鏡に手を添える。

モルンの背に乗って一足先に村へ入ったあの日から、数日が経っていた。


ウィスタ村では、新たな感染者は出ず、罹患者も順調に快復しているという。

ケイが最後まで村に残り、治療を続けてくれていることが、何より心強かった。




そして、村に設置されていた千里鏡の試作品も、マルコと共にルミナ商会の東支部へ運ばれることが決まった。

今後の拠点間通信の中核となる機材だからこそ、厳重な管理が求められる。


アリアは手元の鏡にそっと魔力を注いだ。ほどなくして、鏡面が淡く輝き、レオンの姿が映る。


「アリア。お疲れさまです。皆さん、無事でよかった」


レオンの声はいつも通り穏やかだったが、その奥に微かな安堵が滲んでいた。


「ウィスタ村の件、本当にありがとう。あの設置型鏡がなければ、もっと多くの命が失われていたかもしれない」


「レオン……私、お願いがあります」


アリアはまっすぐに鏡を見つめた。


「今回たまたまマルコさんが設置型を持っていたから繋がれただけで、もし誰もいなかったらと思うと……怖いんです。だから、今後はウィスタ村周辺をルミナ商会の流通路の一つとして、定期的に訪れてもらえませんか? 過疎地だからこそ、なおさら、です」


レオンは少し黙したのち、深く頷いた。


「……わかりました。もとより、ああいった村を放っておくのは本意ではありませんでした。すぐに東支部と話を通します。マルコなら、きっと力になってくれるはずです」


その言葉に、アリアはほっと微笑んだ。


「ありがとう。レオン。あの日々が、無駄じゃなかったと思える」


会話が終わったあとも、アリアは鏡を見つめ続けた。




次に接続したのは、海沿いの港町だった。

小さな港町の教会。

現地で孤児院を運営する神父が、控えめに会釈した。


「……物資、届きました。あなた方のおかげで、助かっています」


その声には、ほんの少しの疲れと、確かな安堵があった。


アリアはゆっくりと頷いた。


「よかった……引き続き、症状の変化があれば知らせてください」


「もちろんです」


鏡の奥で、ふと聞こえた子どもの笑い声に、イリスがぽよん、と跳ねた。




次に繋がったのは、山あいの診療所。

医師の老婦人が画面越しに微笑んでいた。


「……あなたのおかげで、村の若者たちが“希望”という言葉を思い出しましたよ」


アリアは言葉を返そうとしたが、胸が詰まり、うまく声が出なかった。


「私は……」


ぽろり、と涙が頬を伝った。


「……私が、こうして生きてきた意味があったんだね……」


手のひらを千里鏡に添えたまま、アリアはそっと目を閉じた。

イリスが小さく光を揺らしながら、静かに彼女の頬を撫でる。





ふいに、モルンがゆっくりと空を仰ぐように首を上げた。


アリアがその動きに気づくと、ふと、彼の心が響いたように感じた。


(……カメリアよ)


(お前が歩んだ祈りの道を、いま確かに、あの子が継いでいる)


(ここまで来たぞ)


風がそっと吹き抜けた。





鏡を通して届いた声たち。

それは「情報」ではなく、「心」だった。





そして、アリアたちは再び歩み出す。


未来へと続く、この小さな橋を、一歩ずつ渡るようにして。





──159話へつづく



※このお話の舞台はヨーロッパ風異世界であり、現実世界の歴史とは一切関わりありません。

作中に出てくる 国・文化・習慣・宗教・風俗・医療・政治等は全てフィクションであり、架空のものです。

あくまで創作上の設定としてお楽しみいただけますと幸いです。

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