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私が占い師になった理由。  作者: 月灯
第七章 過去と未来をつなぐ旅
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157話 導くものとして - 選ばれるのではなく、選ぶ

✪読んでくださり、ありがとうございます。

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朝靄が晴れ、ウィスタ村に柔らかな光が差し込んだ。


村を包んでいた不安の色は、少しずつ溶けていき、代わりに静かな安堵が広がっていた。


広場の片隅。アリアは焚き火の残り香の中に立っていた。





ふと、村の長老が静かに近づいてきた。しわの刻まれた顔に、穏やかな光が宿っている。


「アリア殿。よくぞ、この村を救ってくださった」


「……私は、大したことはしていません。ただ、手を伸ばしただけです」


「それが、なにより尊いのです」


長老はそう言って、アリアの隣に腰を下ろした。


風が、ほんの少し、花の香りを連れて通り過ぎていった。





「ひとつ、聞いても?」


「……はい」


長老は目を細め、まっすぐに問いかけた。


「あなたは、これから何を望みますか?」


アリアは、言葉を失った。





風が止み、時間がふと止まったかのように思えた。


何を望むのか。どうなりたいのか。


それは、誰かに委ねるものではない。 選ばれることではなく、自分で選ぶこと。


目を伏せたまま、アリアは胸の奥に沈めていた想いにそっと触れた。


──かつて私は、誰かのために祈ることで、自分を保っていた。


──でも今は、少し違う。


ゆっくりと顔を上げると、アリアの声が風に乗った。


「……私は、もう“ただの占い師”ではいたくないと思っています」


長老は静かにうなずいた。


「私は、祈りたい。私自身のために。私が私としてここにいることを、誇れるように」


少しだけ、唇が震えた。


けれど、目はまっすぐだった。


「そして……願わくば、この世界の誰かが進む道を、ほんの少しでも照らせたら。そんな祈りを、自分の手で形にしたいんです」


言いながら、自分で自分の心に気づいていくようだった。


それは、「選ばれる」ことから、「選ぶ」ことへの小さな一歩。


長老は目を細め、そっと言葉を返す。


「あなたの祈りは、もう十分に届いておるよ。あの疫病の夜、皆が見上げた光は……あんたが照らした道だった」


アリアは、思わず胸に手を当てた。


小さく、「ありがとう」と、心の中でつぶやく。





イリスが「ぽよん」と跳ねて、アリアの膝にちょこんと乗った。


まるで、「それでいいよ」と言うように。


モルンも近くに寄ってきて、大きな体でそっとアリアの背に影を落とした。


言葉がなくても、伝わる。


大丈夫。進んでいい。そう背中を押されるような気がした。





その時、誰かがアリアを呼ぶ声がした。


「アリアさん!」


振り向けば、少し遠くで、シュウが手を振っていた。


馬車の準備ができたらしい。


マコトとエリオット、そしてユリウスも揃っていた。


アリアは立ち上がる。


「行こう、イリス。モルンも」


光を抱えたまま、彼女は一歩を踏み出す。





この歩みが、誰かの道しるべになるように。


──導く者として。選ぶ者として。





──158話へつづく



※このお話の舞台はヨーロッパ風異世界であり、現実世界の歴史とは一切関わりありません。

作中に出てくる 国・文化・習慣・宗教・風俗・医療・政治等は全てフィクションであり、架空のものです。

あくまで創作上の設定としてお楽しみいただけますと幸いです。

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