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私が占い師になった理由。  作者: 月灯
第七章 過去と未来をつなぐ旅
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154話 緊急対応 - 千里の先へ

✪読んでくださり、ありがとうございます。

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──朝一番。

アリアは支部の一角に設置された小さな書斎で、届いた報せを黙読していた。


「……疫病?」


眉をひそめた声に、イリスがぽよんと肩先で揺れる。


「マリアさんの兄……マルコさんからの連絡です。ウィスタ村で原因不明の熱と咳、そして全身の発疹を訴える患者が急増していると」


マルコはルミナ商会・東支部の長であり、支部設置型の千里鏡の試作機を運んでいた。

その途中、偶然ウィスタ村に立ち寄り、村の異変に気づいたのだ。


アリアはすぐに手持ちの携帯型千里鏡を取り出すと、鏡の縁に指をそっと添えた。


「レオン。緊急です。繋がりますか?」


数秒後、鏡面に温かみのある青年の顔が浮かぶ。


『アリア? 何かあったのか?』


「マルコさんからの報告です。ウィスタ村で疫病が広がっている可能性があります。緊急対応を検討したい」


アリアは手早く要点をまとめて話す。

千里鏡を通しての通信は魔力を消耗する。

だが、イリスがそっと寄り添い、鏡の端に身体を密着させた瞬間、通信が驚くほど安定した。


「イリス……ありがとう」


淡く光る虹色の粒が、鏡の周囲を包む。


『まずは物資。すぐにルミナ商会本部で手配して、馬車を向かわせる。設置型鏡も試験用で一台積んである。今マルコが持っているなら、それを現地で起動してもらえるようにする』


「ありがとう、レオン。こちらからも動きます。現地までの移送担当はユリウスにお願いしたい」


アリアの側で聞いていたユリウスが、まっすぐ立ち上がる。


「俺に行かせてください。馬があれば、一日半で着けます。緊急物資を背に、最短ルートで駆け抜けます」


「……ユリウス」


「必ず千里鏡を持って。現地で通信が必要になるわ」


ユリウスは静かに頷き、背に装備を括りつけながら準備を進めていった。





一方、アリアたち本隊も出発の準備を急ぐ。


「飛沫感染の可能性があります。現地入りする前に、全員、口元に清潔な布を巻いてください。外さないように。アルコール度数の高い酒類を消毒用に、薬草、ポーション、煮沸用の鍋、そして水と食料も必要です」


『了解。商会にも追加指示を出しておく』


レオンの声が鏡越しに響き、現場との緊張感が高まる。


マコトは腰に袋を括りつけながら問いかける。


「アリア。俺たちの行動計画は?」


「まずは現地での初動。マルコさんと連携しつつ、症状確認と初期処置。私と師匠とで医療班を構成します」


アリアの視線が、少し離れたところで黙って話を聞いていたシュウへと向く。


「……シュウ。あなたはどうしますか?」


少しの沈黙。だが、彼はまっすぐに答えた。


「修行中の身でどれだけ役に立てるかわかりません。でも、行きます。自分にできることを、探しながらでもやりたい」


その目には、迷いよりも覚悟が宿っていた。


マコトがシュウの肩を軽く叩いた。


「それでいい。見て、学んで、動いてこそ意味がある。俺がカバーする」


アリアはわずかに微笑みながら、頷いた。


「じゃあ決まりね」





その日の午後、ユリウスは先行隊として馬にまたがり、村へと出発。


残ったアリアたちは、救援物資を積んだ馬車と共にウィスタ村へと向かう。


風に揺れる馬車の揺れの中、アリアはふと空を仰いだ。


(……モルンなら)


アリアはそっと視線を足元に落とし、モルンを見た。


「モルン。あなたなら、私とイリスを乗せて、村まで一足先に行ける?」


モルンは静かにうなずき、体を柔らかく変化させて、アリアの背を受け入れるように広げた。


「……行ってくる。ユリウスより少しでも早く入って、現地の状況を確認しておきたい」


「無茶はするなよ」

とマコト。


「うん。でも、時間が惜しい。もしかしたら……ケイさんがもう現地に向かってるかもしれないから」


アリアはふと思い出したように振り返る。


「……あ、シュウ。お父さんに、連絡は?」


「千里鏡、使ってみたけど……」


シュウは小さく息を吐いた。


「……“向かってる”って、一言だけ。村に着いたら、もう一度連絡するって」


「やっぱりケイさん、動いてたんだね」


アリアが納得したように頷くと、マコトが腕を組んで静かに言った。


「家系の性なのか?行動の早さは。ユリウスといい、アリアといい、ケイさんまで…」


「まったくです……」


とシュウは少し苦笑してから、真っ直ぐ前を見た。


「でも……父さんが行くって決めたなら、何かを感じ取ってるはず。僕も向かわなきゃ、って思った」





アリアは布を口元に巻き、イリスを胸に抱いた。


「行こう、モルン」


モルンの背に乗り、虹のような光を残して、アリアは風を切って駆け出した。




──きっと、誰かが待っている。


命の灯が揺らいでいる。


この旅は、未来のためだけじゃない。いま、生きている誰かのために。


その想いを胸に、アリアたちは夜の道を急ぐ。





──155話へつづく


※このお話の舞台はヨーロッパ風異世界であり、現実世界の歴史とは一切関わりありません。

作中に出てくる 国・文化・習慣・宗教・風俗・医療・政治等は全てフィクションであり、架空のものです。

あくまで創作上の設定としてお楽しみいただけますと幸いです。

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