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私が占い師になった理由。  作者: 月灯
第七章 過去と未来をつなぐ旅
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147話 モルンの秘密 - 彼が語らぬ記憶

✪読んでくださり、ありがとうございます。

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夜の帳が村を包みこみ、焚き火の小さな炎がぱちぱちと静かな音を立てていた。


アリアたちは、村の広場から少し離れた丘の上に腰を下ろしていた。


昼間の疲れを癒すように、それぞれが思い思いに静かな時間を過ごしていたが、モルンだけは、ひとり風の吹く方向をじっと見つめている。


「モルン?」


アリアが声をかけると、彼はゆっくりとこちらを振り返った。


その金色の瞳には、どこか遠い過去を映すような、深い陰りが宿っていた。




「……少し、散歩してくるね」


アリアは立ち上がり、モルンのそばへと向かう。

イリスが「ぽよん」と静かに跳ねて、二人のあとを追った。




月明かりの下、森の縁まで来たところで、モルンはふと立ち止まり、アリアを振り返る。


「なにか……あるの?」


アリアがそう尋ねると、モルンは静かに目を閉じた。 そして、その身体に淡い光が灯りはじめる。


鱗の間から浮かび上がったのは、複雑な文様――古代語で織られた、紋様のような刻印だった。


「……これ……!」


アリアの声が震える。


それは、前前世の記憶の中――王宮の石床の上で、常に自分の傍らにいたモルンの身体に浮かんでいた、あの守護の紋章。


「守護の……刻印」


アリアがぽつりとつぶやくと、イリスがふわりと宙に浮き、光をまとってその紋様に近づいた。


ひときわ強く光が揺れ、イリスが「ぽよっ」と音を立てながら、アリアの肩へと戻ってくる。


「……おぼえてる?」


そっと問いかけると、イリスは小さく、確かに跳ねて同意を示した。


アリアの胸が、ぎゅっと熱くなる。


「やっぱり……あなただったんだね、モルン。あのときも、私のそばにいてくれた」


モルンは目を細め、小さく「くぅん」と鳴いた。


その声音には、懐かしさと、誓いを思い出すような響きがあった。




「……不思議だな」


不意に、背後から声がした。 ユリウスが、木陰から歩み出てくる。


「君の姿、どこか剣に似ている……と思っていた。鋭さと、静けさと、芯の通った強さ」


モルンはユリウスにちらりと目を向け、すぐに視線をそらすようにまた空を見上げた。


「剣……」


アリアはユリウスの言葉を反芻しながら、モルンを見つめる。


彼の鱗の縁は、まるで刃のような美しさを帯びていた。 だがその一方で、光を抱くような優しさも秘めている。


「そういえば、昔のモルン……誰かに“刃と盾のあいだの存在”って言われてた気がする」


「刃と、盾……」 ユリウスが小さくつぶやく。


「攻めるための力じゃなくて、守るために立ちふさがる。そういう存在だったのかもしれない」


アリアが言うと、モルンはゆっくりと一歩近づき、アリアの手元にそっと鼻先を寄せた。


アリアはその頭を優しく撫でながら、問いかける。


「あなたは……いくつの時代を越えて、私のことを見守ってきてくれたの?」


モルンは答えず、ただそのぬくもりだけで想いを伝えるように寄り添っていた。




イリスがまたふわりと浮かび、夜空に向かって光を描いた。 それは星々の間を縫うように、細く、柔らかく、まるで記憶の糸のように伸びていく。


その光景を、アリアも、ユリウスも、静かに見つめていた。




「……きっと、意味があるんだろうね。私たちが、また出会ったことにも」


アリアの言葉に、イリスがもう一度跳ねる。


その音が、夜の静けさに優しく溶け込んでいった。





──148話へつづく



※このお話の舞台はヨーロッパ風異世界であり、現実世界の歴史とは一切関わりありません。

作中に出てくる 国・文化・習慣・宗教・風俗・医療・政治等は全てフィクションであり、架空のものです。

あくまで創作上の設定としてお楽しみいただけますと幸いです。

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