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私が占い師になった理由。  作者: 月灯
第七章 過去と未来をつなぐ旅
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131話 繋がりの夢 - 祈りが届く先へ

✪読んでくださり、ありがとうございます。

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焚き火の炎が、湖のほとりにやさしく揺れていた。


アリアはイリスとそして道中の護衛として着いていくと言ったユリウスと共に、山の村から戻ってきていた。 あの村で出会った“山の医者”──ケイの姿が、今もまぶたに焼きついて離れなかった。


湖畔の町ではまだ、旅芸人の一座が滞在していた。 舞台の準備を終えたあと、アイと、その娘が火のそばで話していた。


「アリアちゃん」


アイが気づき、柔らかく微笑む。 その隣にいた少女が、アリアに少し緊張した面持ちで頭を下げた。


「……はじめまして。桔梗(キキョウっていいます」


「こんにちは。お名前、きれいですね」


「みんなからは“キキ”って呼ばれてます」


ほほえむその顔に、どこか懐かしい面影を感じた。


アリアは焚き火の近くに腰を下ろし、しばらく黙って炎を見つめていたが、やがて静かに口を開いた。


「……ケイさんに、会ってきました」


アイの手がぴくりと止まる。


「……ほんとに……? 生きてたの?」


アリアは、山の上の静かな村のこと。診療所で見たケイの穏やかな姿、そして彼の手がどれほど優しかったかを語った。


「“山の医者”と呼ばれていて、子どもたちからもすごく慕われていました」


アイは、焚き火の火に手をかざしながら、目を細めた。


「……あの子が、そうして生きていてくれただけで、もう十分だわ」


キキはそっと母の横に寄り添いながら、アリアに問いかけた。


「……ケイって、ママが昔話してた“家族みたいな人”?」


アイはうなずいた。


「そうよ。あの子とは、小さい頃、一緒に教会で育ったの。血はつながっていないけれど、心は……ずっと、兄妹だった」


アリアは、イリスの頭をそっと撫でながら言った。


「彼の父親は、聖女サクラの弟でアイさんのお母様のランさんとは兄妹だったみたいです。なので、アイさんとケイさんはいとこになります。血縁者だったんです。」


「えっ…!?」


アイが驚きながらも、とても嬉しそうな表情で思わずアリアを抱きしめる。


「彼の話を聞いていて思ったんです。きっと、離れていても……繋がれる方法があるって」


そして、懐から取り出した小さな鏡を手のひらにのせて見せた。


「千里鏡です。これで、離れた場所にいても会話ができます。私たちは、すでに持っているんです」


アイとキキの視線が釘づけになる。


「だから、もしよければ──アイさん、キキさん、ケイさん、そして……彼の息子さん、シュウくんにも、それぞれ持っていただけたらって」


「息子……ケイに、子どもが?」


アイが少し驚いたように眉を上げる。


「はい。いま遠くで、医師の修行をしてるそうです」


アリアは続けた。


「今、私の仲間のエレノアさんとカイルさんに千里鏡の製作をお願いしています。出来上がったら、仲間のレオンさんの商会に頼んで、御三方のもとに届けてもらうつもりです」


アイは、ゆっくりと目を閉じて、小さく息をついた。


「……ありがとう。ほんとうに、ありがとう。そうやって、私たちの想いを繋ごうとしてくれることが……何よりも、嬉しい」


キキも、手のひらを握りしめてうなずいた。


「わたし……シュウって人に会ったことないけど。でも、どこかで繋がってるって思えたら、すごく、あったかい気持ちになります」


イリスがアリアの肩にそっと跳ね乗って、虹色の光をふわりと放った。


しばし、三人と一匹のあいだに、静かで優しい時間が流れる。




焚き火が少しだけ小さくなったころ。 アリアはぽつりと呟く。


「……ケイさんとシュウくんも、夢を見たってケイさんが言ってました。白衣の女性が、人を癒していく夢」


アイの表情が変わる。


「……私も、昔から見てた。名も知らない、白い光の中にいる女の人。あたたかい手で、誰かを抱きしめるような……」


キキもそっと頷いた。


「夢の中で、私は泣いていた気がする。でも、その人の手が、すごくあったかくて……」


「……祖母、サクラです」


アリアの声は、焚き火の音に紛れるほど静かだった。


「血縁を超えて、祈りは届いていたんだと思います。夢というかたちで」


イリスが虹色にまたたき、小さく跳ねた。 まるで、それを肯定するように。


「……きっと、ケイさんの息子さんにも。シュウくんにも、その夢は届いています」


アリアの胸に、ケイの言葉がよみがえる。


──「もしどこかでシュウに会ったら、俺たちの“繋がり”を伝えてやってほしい」


その想いを、アリアはしかと受けとめていた。




夜空に星がひとつ、流れていった。 焚き火が最後の火の粉をぱちぱちと鳴らす。


「祈りは、血じゃない。想いを残すこと、届けること……きっとそれが、私たちの“癒し”なんだと思う」


アイがそう呟いたとき、イリスが静かにその肩にふわりと触れた。


“伝えていこう”、とでも言うように。


アリアは小さく微笑んだ。


「繋がっています。たとえ離れていても……心が、ちゃんと」


焚き火が風に揺れて、その言葉をやさしく包んでいった。





──132話へ続く



※このお話の舞台はヨーロッパ風異世界であり、現実世界の歴史とは一切関わりありません。

作中に出てくる 国・文化・習慣・宗教・風俗・医療・政治等は全てフィクションであり、架空のものです。

あくまで創作上の設定としてお楽しみいただけますと幸いです。

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